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蝦夷地開拓
穢多非人蝦夷開拓団の小作人
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「では、任せたぞ」
「御待ち下さいませ。待遇はどうすればいいのでしょうか」
松前福山城代から送られて来た使者に対して、穢多非人蝦夷開拓団の代表は聞き返した。
「食事は一日三度、一汁三菜を支給するように」
「そんな、それでは費用が掛かり過ぎます。それに我々自体、一汁三菜の食事などしておりません」
「うむ。確かに小作人の方が、地主よりよい食事をするのは可笑しいかもしれんが、幕府の開拓団では、黒鍬衆や同心衆が雑穀の飯を喰い、日雇いに米の飯を与え、開拓を進めている」
「しかしそれは、幕臣の方々が米の扶持を頂いているから出来る事でございます。我々には、米自体を手に入れる方法がありません」
「幕府が廻船する船から、米を買えばいいではないか」
「そのような金はありません」
「だが長吏殿との最初の約束では、全ての開拓費用を負担すると言う事ではなかったか」
「それはその通りでございますが」
「最初に入植した者達は、二町十二石の畑を認定されたのだったな」
「はい。御陰様を持ちまして、家族を呼び寄せ、開拓が進めることが出来ました」
「そろそろ、平民に認定されたいのではないか」
「本当でございますか。認めて頂けるのでございますか」
「だがその為には、平民達と上手く付き合ってもらわねばならん」
「それは」
「今迄平民だった者達と、諍いを引き起こすようでは困るのだ」
「はい・・・・・」
「米の飯を喰わせろとは言わん。同じ平民として、同じ釜の飯を喰ってみてはどうだ」
「はい」
「肩を並べて一緒に開拓に勤しみ、畑を耕して、同じ百姓として付き合って見よ」
「そうすれば、初年度開拓団を、平民に認定して頂けるのですか」
「何の問題もなく、小作人と付き合っていければだ」
穢多非人蝦夷開拓団は初年度に一万人が入植した。
二年度にも一万人が入植し、三年度にも一万人が入植していた。
四年度にも一万人が入植し、全開拓団か認定された畑は十九万石にも及んでいた。
幕臣の開拓団とは違い、幕府の支援は一切ないので、一人が一年間に開拓できる畑は一反(三百坪)が精一杯だった。
だが期限が設けられている訳ではなかったので、幕府の開拓団とは違い、取りあえず切株を残してでも牧草地とするような事はせず、しっかり雑穀が植えられるような畑にしていた。
その御陰で二年以降は雑穀を自給自足出来るようになり、廻船費用も開拓に回せるようになった。
家族を蝦夷地に呼び寄せる事が出来るようになり、経験者から助言が得られようにもなり、年々一人が開拓出来る畑の広さが増えていった。
だが東国が大凶作となり、多くの民が蝦夷地に流れてきた。
全ての民を、幕府の開拓団が小作人として受け入れたが、全員を受け入れることは不可能だった。
幕府が費用を負担して、農民の開拓団を作る事を提案する者もいたが、大金を徴収して千人同心開拓団を入植させることになったので、無料で開拓地を与えることは出来なかった。
そこで考えられたのが、開拓費用を全額自己負担で入植している、穢多非人蝦夷開拓団に押し付けることだった。
「御待ち下さいませ。待遇はどうすればいいのでしょうか」
松前福山城代から送られて来た使者に対して、穢多非人蝦夷開拓団の代表は聞き返した。
「食事は一日三度、一汁三菜を支給するように」
「そんな、それでは費用が掛かり過ぎます。それに我々自体、一汁三菜の食事などしておりません」
「うむ。確かに小作人の方が、地主よりよい食事をするのは可笑しいかもしれんが、幕府の開拓団では、黒鍬衆や同心衆が雑穀の飯を喰い、日雇いに米の飯を与え、開拓を進めている」
「しかしそれは、幕臣の方々が米の扶持を頂いているから出来る事でございます。我々には、米自体を手に入れる方法がありません」
「幕府が廻船する船から、米を買えばいいではないか」
「そのような金はありません」
「だが長吏殿との最初の約束では、全ての開拓費用を負担すると言う事ではなかったか」
「それはその通りでございますが」
「最初に入植した者達は、二町十二石の畑を認定されたのだったな」
「はい。御陰様を持ちまして、家族を呼び寄せ、開拓が進めることが出来ました」
「そろそろ、平民に認定されたいのではないか」
「本当でございますか。認めて頂けるのでございますか」
「だがその為には、平民達と上手く付き合ってもらわねばならん」
「それは」
「今迄平民だった者達と、諍いを引き起こすようでは困るのだ」
「はい・・・・・」
「米の飯を喰わせろとは言わん。同じ平民として、同じ釜の飯を喰ってみてはどうだ」
「はい」
「肩を並べて一緒に開拓に勤しみ、畑を耕して、同じ百姓として付き合って見よ」
「そうすれば、初年度開拓団を、平民に認定して頂けるのですか」
「何の問題もなく、小作人と付き合っていければだ」
穢多非人蝦夷開拓団は初年度に一万人が入植した。
二年度にも一万人が入植し、三年度にも一万人が入植していた。
四年度にも一万人が入植し、全開拓団か認定された畑は十九万石にも及んでいた。
幕臣の開拓団とは違い、幕府の支援は一切ないので、一人が一年間に開拓できる畑は一反(三百坪)が精一杯だった。
だが期限が設けられている訳ではなかったので、幕府の開拓団とは違い、取りあえず切株を残してでも牧草地とするような事はせず、しっかり雑穀が植えられるような畑にしていた。
その御陰で二年以降は雑穀を自給自足出来るようになり、廻船費用も開拓に回せるようになった。
家族を蝦夷地に呼び寄せる事が出来るようになり、経験者から助言が得られようにもなり、年々一人が開拓出来る畑の広さが増えていった。
だが東国が大凶作となり、多くの民が蝦夷地に流れてきた。
全ての民を、幕府の開拓団が小作人として受け入れたが、全員を受け入れることは不可能だった。
幕府が費用を負担して、農民の開拓団を作る事を提案する者もいたが、大金を徴収して千人同心開拓団を入植させることになったので、無料で開拓地を与えることは出来なかった。
そこで考えられたのが、開拓費用を全額自己負担で入植している、穢多非人蝦夷開拓団に押し付けることだった。
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