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蝦夷地開拓
八王子千人同心の成功
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「御城代からの御達しだ」
「「「「「は」」」」」
「開拓の労苦を厭わず、荒れ地や森林を畑にした功績は大きい。更に兵糧に必要な年貢を納める功績もある。よって本日只今をもって、武家奉公人から同心とする。松前福山城代、田沼大和守意知」
「「「「「うぉぉぉ」」」」」
「これで俺達も武士だ」
「息子に刀を差してやれる」
「親父殿にも刀を買ってやらねばならぬ」
「馬鹿言え、褒美に新しい刀を強請るのだろう」
「そんな事はせん。息子の刀を買ってもらうだけだ」
「やっぱり買って貰うのではないか」
「そうか、そうだな」
「わはははは」
「待て、待て、御城代は武士として為すべき事も御達しされておる」
「「「「「は」」」」」
「では言うぞ。開拓も大切だが、異国の攻撃に備えることが何より大切だ。鉄砲は勿論、弓矢にも通じ、刀槍の訓練も疎かにしてはいけない。贅沢を戒め、常に三年分の兵糧を備蓄するように。との御達しだ」
「「「「「は」」」」」
八王子千人同心は、前年度に一町六石の開拓地が認定されていた。
今年度は二町十二石が認められることになった。
併せて三町十八石の開拓地が認定されたことで、自分達の手に入る雑穀が十石八斗(二十七俵)となった。
御公儀に七石二斗(十八俵)の年貢を納めなければいけないが、残った二十八俵の雑穀と十五俵の扶持米を併せれば、四十三俵となる。
これは町奉行所同心や御先手組同心の、三十俵二人扶持(四十俵)を越えたことになる。
期待と不安が相半ばする状態ではあったが、松前福山城まで赴き、御城代の田沼意知様に正式な武士と認めて頂きたいと願い出たのだ。
これが幕府の事情と合致した。
八王子千人同心株を、出来るだけ沢山高値で売りたい幕府は、引き続き十俵一人扶持の扶持米を送りつつ、御先手組同心格として正式な武士としたのだ。
第一次八王子千人同心開拓団は、千人同心の中でも比較的裕福な家が選ばれていた。
実際問題、幕府が廻船の手配をしてくれるとは言え、過酷な環境の蝦夷で開拓を成功させるには、実家からの支援が必要不可欠だったのだ。
前年度に六石の畑が開拓地に認定されてからは、親戚の部屋住みで行き場のない者が、一人二人と開拓団を頼って蝦夷に渡っていた。
屈強な男手が開拓に加わった事で、次年度の開拓地が二倍にも広がったのだ。
更なる成功で、今年はもっと多くの親戚や知人の部屋住みが蝦夷に渡って来た。
黒鍬衆や御先手組同心衆より幕府の支援は少ないが、それでも徐々に労働力が増えていたので、来年度は三町十八石の開拓に成功しそうだった。
この日はどの家でも御祝いの膳が整えられた。
御城代から贅沢を戒める言葉はあったが、御正月のように餅を突き、御屠蘇が用意された。
「「「「「は」」」」」
「開拓の労苦を厭わず、荒れ地や森林を畑にした功績は大きい。更に兵糧に必要な年貢を納める功績もある。よって本日只今をもって、武家奉公人から同心とする。松前福山城代、田沼大和守意知」
「「「「「うぉぉぉ」」」」」
「これで俺達も武士だ」
「息子に刀を差してやれる」
「親父殿にも刀を買ってやらねばならぬ」
「馬鹿言え、褒美に新しい刀を強請るのだろう」
「そんな事はせん。息子の刀を買ってもらうだけだ」
「やっぱり買って貰うのではないか」
「そうか、そうだな」
「わはははは」
「待て、待て、御城代は武士として為すべき事も御達しされておる」
「「「「「は」」」」」
「では言うぞ。開拓も大切だが、異国の攻撃に備えることが何より大切だ。鉄砲は勿論、弓矢にも通じ、刀槍の訓練も疎かにしてはいけない。贅沢を戒め、常に三年分の兵糧を備蓄するように。との御達しだ」
「「「「「は」」」」」
八王子千人同心は、前年度に一町六石の開拓地が認定されていた。
今年度は二町十二石が認められることになった。
併せて三町十八石の開拓地が認定されたことで、自分達の手に入る雑穀が十石八斗(二十七俵)となった。
御公儀に七石二斗(十八俵)の年貢を納めなければいけないが、残った二十八俵の雑穀と十五俵の扶持米を併せれば、四十三俵となる。
これは町奉行所同心や御先手組同心の、三十俵二人扶持(四十俵)を越えたことになる。
期待と不安が相半ばする状態ではあったが、松前福山城まで赴き、御城代の田沼意知様に正式な武士と認めて頂きたいと願い出たのだ。
これが幕府の事情と合致した。
八王子千人同心株を、出来るだけ沢山高値で売りたい幕府は、引き続き十俵一人扶持の扶持米を送りつつ、御先手組同心格として正式な武士としたのだ。
第一次八王子千人同心開拓団は、千人同心の中でも比較的裕福な家が選ばれていた。
実際問題、幕府が廻船の手配をしてくれるとは言え、過酷な環境の蝦夷で開拓を成功させるには、実家からの支援が必要不可欠だったのだ。
前年度に六石の畑が開拓地に認定されてからは、親戚の部屋住みで行き場のない者が、一人二人と開拓団を頼って蝦夷に渡っていた。
屈強な男手が開拓に加わった事で、次年度の開拓地が二倍にも広がったのだ。
更なる成功で、今年はもっと多くの親戚や知人の部屋住みが蝦夷に渡って来た。
黒鍬衆や御先手組同心衆より幕府の支援は少ないが、それでも徐々に労働力が増えていたので、来年度は三町十八石の開拓に成功しそうだった。
この日はどの家でも御祝いの膳が整えられた。
御城代から贅沢を戒める言葉はあったが、御正月のように餅を突き、御屠蘇が用意された。
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