幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全

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蝦夷地開拓

処分

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「いかが処分いたしましょうか」
「事前に通告してあった通り、闕所の上で磔獄門といたせ」
「しかしそれでは、仙台藩も改易とせねばなりません」
「うむ。仙台藩を改易とすれば、浪人が江戸に溢れてしまうか」
「屯田兵とすることも可能ではございますが、今回の件だけで改易は厳し過ぎると思われます」
「では減封か」
「はい。今回の件で多くの商人と豪農を闕所に処すれば、仙台藩の借り入れも少なくなりますし、多数の家臣も改易処分となっておりますから、勝手向きが改善すると思われます」
「だから少々の減封をしても大丈夫だと申すのだな」
「はい。これを機会に家臣の召し放ちを行わせ、牢人となった仙台藩士を蝦夷地の陪臣として召し抱え、屯田兵力を強化致しましょう」
「そうであるな。開拓が順調に進む第一次の屯田兵達は、若党の確保に苦労しておるのであったな」
「はい」
「それで商人どもはどうする」
「闕所の上で、親戚預けに致しましょう」
「うむ。それで構わん」
「それで米沢藩に対する褒美でございます」
「与えた方がよいか」
「上杉鷹山殿に任せた方が、領民が幸せに暮らせますし、荒れ果てた田畑も回復致します」
「では仙台藩の領地を半減させ、三十一万石としよう」
「仙台藩の表高は六十二万石でございますが、実高は百万石と言われております。いえ、それも幕府を偽っており、本当は二百万石とも二百五十万石とも言われております」
「それを三十一万石とするのか」
「いえ、正確な検地をおこない、検地後の実高を半減させます」
「では二百万石であったら、仙台藩を百万石とするのか」
「はい。同時に八十五万石を天領とし、十五万石を米沢藩に与えます」
「八十五万石もの天領を、幕府の代官が治めるのか」
「それは米沢藩に任せましょう」
「それで大丈夫なのか」
「幕府の腑抜けた譜代衆に任せてしまうと、また同じような悲劇を繰り返すことになります。それよりは、東国の厳しい気候風土の中で育った、米沢藩の者達に預けた方が、確実に年貢を確保し、田畑を活用してくれます」
「うむ。源内の申す通りかもしれぬ」
「では、上様に奏上して頂けますか」
「任せておけ」
 幕府は厳しい詮議の後で厳正な処分を行ったが、江戸と大阪の豪商の裏に幕臣がいた。
 徳川家基は激怒し、どれほどの名門譜代や一門であろうと容赦せず、改易処分とした。
「処分後の領地や軍資金」
天領 :五百万石
旗本 :二百七十五万石
御家人:百五十三石
仙台藩:三十二万石(百十万石)
米沢藩:三十万石(三十八万石)
「幕府資金」
軍資金:三百万両
貿易金:五十万両
闕所金:六百万両
武芸金:八十五万両
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