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蝦夷地開拓
叛意
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「大納言様、仙台藩で飢饉が起こる恐れがございます」
「どう言う事だ」
「仙台藩は幕府の命に叛き、領民の備蓄米まで強制的に買い上げ、江戸に運び込んでおります」
「おのれ、左中将、幕府の命に従わぬか」
「先ずは本人を呼び出し、厳しく問い質さねばなりません」
「それは当然だが、今飢えている者達を救わねばならぬ」
「では、近隣諸藩に救済米の供出を命じましょう」
「だがそれでは、近隣諸藩に餓死者が出てしまうのではないか」
「急ぎ江戸から御助け米を送ります。特に救済米を供出してくれた諸藩には、倍にして返せばいいのです」
「うむ。だがそれでは、幕府が損をするのではないか」
「仙台藩を減封といたしましょう」
「ほう。仙台藩に厳しく接するのだな」
「事前に改易にすると厳命してあったのです。何もせねば、御公儀の威信に係ります」
「うむ」
徳川家基とその重臣達は、丁度江戸に在府していた伊達重村と江戸家老を西ノ丸に呼び出し、幕命に反した事を厳しく詮議した。
そこで分かったのは、伊達重村や重臣達は幕命に従おうとしたが、役人が商人と結託して不正を行っていた事だった。
その事を知って徳川家基は更に激怒し、暗君は隠居すべしと即座に隠居蟄居を命じ、重臣達は改易処分とし、火付け盗賊改め方二組・徒士組二組・小十人組二組・中間組二組を国目付に付けて仙台藩に送り込んだ。
各組は海路と陸路に別れ、莫大な御助け米を運びながら北上した。
数の減った各組は、小普請組から急遽人数が集められ、欠員を補うことになった。
白川藩には、幕府から救済米の貸し付けが行われていたが、それは藩主・松平定信が徳川吉宗の孫であり、家治将軍の従弟でもあったからだ。
だがその性格には狭量な所が有り、御助け米の転送を行っていなかった。
陸路を急いだ火付け盗賊改め方は、中間組が運ぶ御助け米を後方に残し、米沢藩に入った。
米沢藩では、騎馬で急行した幕府の使番の命に従い、幕府が貸し与えた御助け米以上の米を仙台藩に送っていた。
だが他の東国諸藩は、幕府から借り受けた御助け米を、仙台藩に転送するのが精一杯だった。
だが直ぐに江戸から御助け米が送られて来ただけではなく、長崎から蝦夷に送られるはずだった輸入米が、東国諸藩に届けられた。
幕府の御助け米と共に、完全武装の幕臣が次々と仙台領に入り、仙台藩では幕府による藩政指導が行われた。
特に幕命反して不正を働いた役人と商人の逮捕と拷問が、火付け盗賊改め方によって厳重に行われた。
その結果、江戸や大阪の大商人が裏で暗躍していることが分かった。
「どう言う事だ」
「仙台藩は幕府の命に叛き、領民の備蓄米まで強制的に買い上げ、江戸に運び込んでおります」
「おのれ、左中将、幕府の命に従わぬか」
「先ずは本人を呼び出し、厳しく問い質さねばなりません」
「それは当然だが、今飢えている者達を救わねばならぬ」
「では、近隣諸藩に救済米の供出を命じましょう」
「だがそれでは、近隣諸藩に餓死者が出てしまうのではないか」
「急ぎ江戸から御助け米を送ります。特に救済米を供出してくれた諸藩には、倍にして返せばいいのです」
「うむ。だがそれでは、幕府が損をするのではないか」
「仙台藩を減封といたしましょう」
「ほう。仙台藩に厳しく接するのだな」
「事前に改易にすると厳命してあったのです。何もせねば、御公儀の威信に係ります」
「うむ」
徳川家基とその重臣達は、丁度江戸に在府していた伊達重村と江戸家老を西ノ丸に呼び出し、幕命に反した事を厳しく詮議した。
そこで分かったのは、伊達重村や重臣達は幕命に従おうとしたが、役人が商人と結託して不正を行っていた事だった。
その事を知って徳川家基は更に激怒し、暗君は隠居すべしと即座に隠居蟄居を命じ、重臣達は改易処分とし、火付け盗賊改め方二組・徒士組二組・小十人組二組・中間組二組を国目付に付けて仙台藩に送り込んだ。
各組は海路と陸路に別れ、莫大な御助け米を運びながら北上した。
数の減った各組は、小普請組から急遽人数が集められ、欠員を補うことになった。
白川藩には、幕府から救済米の貸し付けが行われていたが、それは藩主・松平定信が徳川吉宗の孫であり、家治将軍の従弟でもあったからだ。
だがその性格には狭量な所が有り、御助け米の転送を行っていなかった。
陸路を急いだ火付け盗賊改め方は、中間組が運ぶ御助け米を後方に残し、米沢藩に入った。
米沢藩では、騎馬で急行した幕府の使番の命に従い、幕府が貸し与えた御助け米以上の米を仙台藩に送っていた。
だが他の東国諸藩は、幕府から借り受けた御助け米を、仙台藩に転送するのが精一杯だった。
だが直ぐに江戸から御助け米が送られて来ただけではなく、長崎から蝦夷に送られるはずだった輸入米が、東国諸藩に届けられた。
幕府の御助け米と共に、完全武装の幕臣が次々と仙台領に入り、仙台藩では幕府による藩政指導が行われた。
特に幕命反して不正を働いた役人と商人の逮捕と拷問が、火付け盗賊改め方によって厳重に行われた。
その結果、江戸や大阪の大商人が裏で暗躍していることが分かった。
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