幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全

文字の大きさ
上 下
29 / 106
大納言対外政策

大納言の対外政策二

しおりを挟む
「よく集まってくれた。皆の忌憚のない意見を聞きたい」
「「「「「は」」」」」
「先ずは源内の意見を聞きたい」
「最初に御下問していただき、恐悦至極でございます。大納言の御前に参る前に江戸蘭学社中で意見を戦わせ、一定の成果を得ることが来ましたので、その策を御報告させていただきます」
「うむ、分かった。しかし纏まった策だけではなく、他の策も聞いておきたいし、何故余に報告する策に決まったかも知りたい」
「承りました」
「先ずは主殿頭の申した軍資金だ」
「はい。我々が調べさせていただいたところ、幕府の勝手方が使える金は八十万両でございますが、大奥だけで二十万両を超えてります」
「うむ」
「御老中は民の為に使う予算は手を付けず、上様の勝手向きに使う御納戸金を二万四千六百両から一万五千両にまで切り詰め、幕府の勝手向きを立て直しておられますが、それでも軍資金を捻出するのは難しくなっております」
「・・・・・分かった」
「今金を貯め込んでいるのは商人でございますが、無理矢理奪う事は王道に反します」
「・・・・・分かった」
「そこで考えましたのが、商人が金を出したくなることを行うのでございます」
「金に執着する商人に、進んで金を出させる事など出来るのか」
「大納言様は金を卑しんでおられるようですが、幕府にとって軍資金となる金には、商人以上に執着せねばなりません」
「・・・・・さようか」
「商人に新田開発を認め、印旛沼の開拓を行わせます」
「うむ。領地を増やし年貢収入を増やすのだな」
「それだけではありません」
「ふむ、他にもあるのか」
「印旛沼の中に水路を作り、江戸へ蝦夷や東北の産物を届ける近道を作るのでございます。いえ、それは同時に、蝦夷に幕府軍を送る水路でもあるのです」
「天晴である」
「しかもその予算を、全て商人に出させるのです」
「だが一体商人にどのような利があるのだ」
「開拓した新田の八割を、金を出した商人に与えるのでございます」
「まて、年貢はどうなるのだ」
「年貢は幕府に納めさせます」
「商人にいったいどんな利があるのか」
「小作人に貸して小作料をとることも、売り払うことも可能でございます」
「なるほど」
「残る二割の新田は、地元の請負人のものとなりますから、領民からも反対もございません。しかも新田の年貢は幕府に納められます」
「なるほど、オロシャを討ち払った後に、功臣に与える領地に出来るのだな」
「はい。これが成功すれば、大名や旗本が商人の金で新田開発が出来るようになります」
「うむ」
「そうなれば、商人からの借財に苦しむ大名や旗本が楽になります」
「幕府が手本を示すのだな」
「はい。更に申しますれば、新田開発に商人が使う金は、全て人足や地元の百姓の手に入り、いずれは幕府の年貢に回ってまいります」
「重畳であるな」
「何より工事の間は、江戸の無宿人や地元の百姓に仕事を与え、新田が出来れば小作人として働くことが出来ます」
「主殿頭に検討させ、上様に奏上すべきであるな」
「はい」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おれは忍者の子孫

メバ
ファンタジー
鈴木 重清(しげきよ)は中学に入学し、ひょんなことから社会科研究部の説明会に、親友の聡太(そうた)とともに参加することに。 しかし社会科研究部とは世を忍ぶ仮の姿。そこは、忍者を養成する忍者部だった! 勢いで忍者部に入部した重清は忍者だけが使える力、忍力で黒猫のプレッソを具現化し、晴れて忍者に。 しかし正式な忍者部入部のための試験に挑む重清は、同じく忍者部に入部した同級生達が次々に試験をクリアしていくなか、1人出遅れていた。 思い悩む重清は、祖母の元を訪れ、そこで自身が忍者の子孫であるという事実と、祖母と試験中に他界した祖父も忍者であったことを聞かされる。 忍者の血を引く重清は、無事正式に忍者となることがでにるのか。そして彼は何を目指し、どう成長していくのか!? これは忍者の血を引く普通の少年が、ドタバタ過ごしながらも少しずつ成長していく物語。 初投稿のため、たくさんの突っ込みどころがあるかと思いますが、生暖かい目で見ていただけると幸いです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

天竜川で逢いましょう 起きたら関ヶ原の戦い直前の石田三成になっていた 。そもそも現代人が生首とか無理なので平和な世の中を作ろうと思います。

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!?

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原

糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。 慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。 しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。 目指すは徳川家康の首級ただ一つ。 しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。 その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

処理中です...