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第一章
第87話:促成魔術
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皇紀2223年・王歴227年・初夏・キンロス地方
「今から俺がお前達の主君に相応しい証を見せてやる。
それを見ても、俺もよりも軍神を主に仰ぎたいと言うのなら、好きにするがいい。
俺がお前達の主である限り、二度とお前達も領民も飢えさせはしない。
我が秘術、穀物促成」
俺は、絶え間ない戦乱で荒れ果てた畑に無造作に大麦の種を蒔き、魔法袋化させた複数の魔力器官に蓄えていた膨大な魔力の極一部を使い、大麦を促成させた。
瞬く間に芽を出し、成長し、実りを迎えた大麦をみて、元敵は茫然自失した。
植物を、それも穀物を促成させる魔術など見た事も聞いた事もなかったのだろう。
しばらくたわわに実った大麦畑を見ていた元敵は、はっとして俺を見た。
大半の者は神を見るように、極一部の者は悪魔を見るような目で見ている。
まあ、これはしかたのない事だろう。
「見たか、俺に仕える限り、食糧は不足して苦しむ事はない。
何事もない時に食糧が不足するようなら、俺が本拠地から送ってやる。
戦乱で輸送が危険な時は、俺が直接城内に入って食料を創り出してやる。
だから、生きるために命懸けで他国を攻める事はない。
生き残るために、女房子供を飢えさせないために、人を殺さなくていい。
そして誰に攻められようと、領民と共に堅固な城に籠っていればいい。
俺が必ず助けてやる、安心しろ」
「「「「「おおおおお」」」」」
「本当でございますか、侯爵閣下」
「何時でも、我々を助けに来てくださるのですか」
「妻や子が、虐げられる事も殺される事もないのですか」
「もう、命懸けで戦わなくていいのですか」
「必ず助けには来るが、知らせを受けて直ぐその日というわけにはいかない。
分かっているだろうが、この乱世、四方から攻められる事がある。
だから、一番危険な所から順に助けに行く。
ただし、この乱世を戦いで勝ち抜きたいと言う者もいる。
そう言う者が手柄を立てる機会を奪う気もない。
まずは手柄を立てたい者だけで戦ってもらう。
ただし、さきほども言ったように、戦いたくない者を無理矢理戦わせはしない。
安全な城に籠って、俺が助けに来るのを待てばいい」
「「「「「はい」」」」」
「では、何を置いても食糧の確保だ。
まずは今育っている全ての穀物を、収穫できる所まで魔術で成長させる。
順番に領内を巡るから、実った穀物を収穫するだけでなく種蒔きも終えてもらう。
種蒔きが終わった畑から、また収穫できる所まで成長させる。
俺が本拠地に戻るまでの間に、二度の収穫ができるようにする。
その食糧を城に蓄えておけば、来年の収穫までは誰も飢える事がないだろう。
軍神が攻め込んできても、俺が救援に来るまで籠城できるな」
「「「「「はい」」」」」
俺はキンロス地方の騎士と兵士の心をつかんだ。
心からの忠誠心でなくてもいい、家族や家臣領民を護ってくれる主君で、仕えるに相応しい相手だとは思わせられたら十分だ。
それと、同じ方法でアザエル教徒だった連中の心もつかんだ。
むしろ狂信者だったからこそ、アザエル教団の教祖や上級信徒ができなかった、穀物の促成栽培ができる俺の事を狂信的に信じた。
狂信されるのは虫唾が走るくらい嫌だが、仕方がない。
この生き残るために他人を殺さなければいけない世界を、少しでも俺の倫理観に近い世の中にしようと思えば、自分の好き嫌いなど後回しにしなければいけない。
もう自分やこの世界の家族を護るためだけに働き戦う時期は終わった。
ここまで勢力が広がり、膨大な魔力を蓄えられた以上、俺もこの世界にために働かなければいけないと思う。
そうしなければ、本当に死んだ時に、ばあちゃんに怒られるからな。
「今から俺がお前達の主君に相応しい証を見せてやる。
それを見ても、俺もよりも軍神を主に仰ぎたいと言うのなら、好きにするがいい。
俺がお前達の主である限り、二度とお前達も領民も飢えさせはしない。
我が秘術、穀物促成」
俺は、絶え間ない戦乱で荒れ果てた畑に無造作に大麦の種を蒔き、魔法袋化させた複数の魔力器官に蓄えていた膨大な魔力の極一部を使い、大麦を促成させた。
瞬く間に芽を出し、成長し、実りを迎えた大麦をみて、元敵は茫然自失した。
植物を、それも穀物を促成させる魔術など見た事も聞いた事もなかったのだろう。
しばらくたわわに実った大麦畑を見ていた元敵は、はっとして俺を見た。
大半の者は神を見るように、極一部の者は悪魔を見るような目で見ている。
まあ、これはしかたのない事だろう。
「見たか、俺に仕える限り、食糧は不足して苦しむ事はない。
何事もない時に食糧が不足するようなら、俺が本拠地から送ってやる。
戦乱で輸送が危険な時は、俺が直接城内に入って食料を創り出してやる。
だから、生きるために命懸けで他国を攻める事はない。
生き残るために、女房子供を飢えさせないために、人を殺さなくていい。
そして誰に攻められようと、領民と共に堅固な城に籠っていればいい。
俺が必ず助けてやる、安心しろ」
「「「「「おおおおお」」」」」
「本当でございますか、侯爵閣下」
「何時でも、我々を助けに来てくださるのですか」
「妻や子が、虐げられる事も殺される事もないのですか」
「もう、命懸けで戦わなくていいのですか」
「必ず助けには来るが、知らせを受けて直ぐその日というわけにはいかない。
分かっているだろうが、この乱世、四方から攻められる事がある。
だから、一番危険な所から順に助けに行く。
ただし、この乱世を戦いで勝ち抜きたいと言う者もいる。
そう言う者が手柄を立てる機会を奪う気もない。
まずは手柄を立てたい者だけで戦ってもらう。
ただし、さきほども言ったように、戦いたくない者を無理矢理戦わせはしない。
安全な城に籠って、俺が助けに来るのを待てばいい」
「「「「「はい」」」」」
「では、何を置いても食糧の確保だ。
まずは今育っている全ての穀物を、収穫できる所まで魔術で成長させる。
順番に領内を巡るから、実った穀物を収穫するだけでなく種蒔きも終えてもらう。
種蒔きが終わった畑から、また収穫できる所まで成長させる。
俺が本拠地に戻るまでの間に、二度の収穫ができるようにする。
その食糧を城に蓄えておけば、来年の収穫までは誰も飢える事がないだろう。
軍神が攻め込んできても、俺が救援に来るまで籠城できるな」
「「「「「はい」」」」」
俺はキンロス地方の騎士と兵士の心をつかんだ。
心からの忠誠心でなくてもいい、家族や家臣領民を護ってくれる主君で、仕えるに相応しい相手だとは思わせられたら十分だ。
それと、同じ方法でアザエル教徒だった連中の心もつかんだ。
むしろ狂信者だったからこそ、アザエル教団の教祖や上級信徒ができなかった、穀物の促成栽培ができる俺の事を狂信的に信じた。
狂信されるのは虫唾が走るくらい嫌だが、仕方がない。
この生き残るために他人を殺さなければいけない世界を、少しでも俺の倫理観に近い世の中にしようと思えば、自分の好き嫌いなど後回しにしなければいけない。
もう自分やこの世界の家族を護るためだけに働き戦う時期は終わった。
ここまで勢力が広がり、膨大な魔力を蓄えられた以上、俺もこの世界にために働かなければいけないと思う。
そうしなければ、本当に死んだ時に、ばあちゃんに怒られるからな。
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