72 / 94
第一章
第71話:懊悩
しおりを挟む
皇紀2223年・王歴227年・早春・ロスリン城
「俺は一旦居城に帰って、自由都市のアザエル教団と背後にいるベリアル教団に備えるから、後の事はお前達に任せる」
「「「「「はい」」」」」
「決して民を害するな」
「「「「「はい」」」」」
「それが例えアザエル教団の狂信者であろうと、農民や職人として普通に働き税を納めると言うのなら、俺は彼らを領民として扱う。
不当に扱う者は、例え一族の者であろうと譜代の重臣であろうと処刑する。
だが同時に、俺に刃向かう者は絶対に許さん、情け容赦なく殺せ、分かったか」
「「「「「はい」」」」」
俺はアザエル教団の支配地方に侵攻した自軍の将兵に厳しい訓示を与えた。
武器を取って攻め込んできた狂信者は絶対に許さないが、村にいた者は謀叛人の家族であろうと連座処分になどしない。
それでなくても戦国乱世で人間が激減しているのだ。
豊かな土地があるのに耕す者がいなくて、放棄されている農地があるのだ。
それに魔境であろうと、それなりに訓練された騎士や猟師がいれば、幾らでも獲物を狩ることができるのだ。
だから、むやみやたらに人殺しをする気はない。
同時に、必要な虐殺を厭う気もない。
そうでなければ二十万もの狂信者を殺したりはしない。
だが今回の件はどこまでやるのかが悩ましい。
一応前世の記憶を基に政教分離を図ることにしている。
全く違う異世界と言うか、東西の文化文明をごった煮したような世界で、どれだけ日本の史実を参考にしていいか分からないが、俺は理想を追うと決めている。
しかし、理想を追った結果、味方に背かれる可能性もある。
徐々に愛着がわいている家族に刃を向けられるのは正直辛い。
いや、それでも絶対にやらなければいけない事だ。
このまま放置してしまったら、ベリアル教団は俺を舐めてさらに増長する。
自分達教団に逆らう王国貴族などいないと更に傍若無人な態度を取る。
支配下の別教団を使って民に法外な利息で金を貸し、返さないと農地はもちろん女房子供まで質にとって奴隷にする。
単に奴隷にするだけではなく、女子供に売春までさせている。
それで皇室と皇国を守護するこの国で一番権威のある教団だと言うのだから、それを知ってからずっと怒りを超えて殺意を持っていたのだ。
今回プランケット湖を往く我が家の輸送船団を拿捕した自由都市の連中は、俺の仕掛けた罠を見抜けなかったアザエル教団の狂信者共だ。
俺が四地方連合の聖堂騎士団二十万に惨敗するとか考えたのか、聖堂騎士団が有利になるように陽動作戦をしたのかは分からないが、愚かな事に敵対行動をとった。
その連中を皆殺しにするのは決まっているのだが、問題はベリアル教団の方だ。
自由都市はとてもややこしい存在で、土地はベリアル教団の物なのだが、領民の大半はアザエル教団の狂信者なのだ。
まず間違いなく、ベリアル教団は、俺がアザエル教団の狂信者を虐殺するのを止めようとする。
それでアザエル教団に恩を売ると同時に、全ての貴族に急成長著しい俺ですらベリアル教団には逆らえないのだと見せつけるだろう。
その時、俺がベリアル教団の殲滅に動いても家臣達はついてくるだろうか。
「ハリー様、自由都市のアザエル教団より使者が参りました」
「俺は一旦居城に帰って、自由都市のアザエル教団と背後にいるベリアル教団に備えるから、後の事はお前達に任せる」
「「「「「はい」」」」」
「決して民を害するな」
「「「「「はい」」」」」
「それが例えアザエル教団の狂信者であろうと、農民や職人として普通に働き税を納めると言うのなら、俺は彼らを領民として扱う。
不当に扱う者は、例え一族の者であろうと譜代の重臣であろうと処刑する。
だが同時に、俺に刃向かう者は絶対に許さん、情け容赦なく殺せ、分かったか」
「「「「「はい」」」」」
俺はアザエル教団の支配地方に侵攻した自軍の将兵に厳しい訓示を与えた。
武器を取って攻め込んできた狂信者は絶対に許さないが、村にいた者は謀叛人の家族であろうと連座処分になどしない。
それでなくても戦国乱世で人間が激減しているのだ。
豊かな土地があるのに耕す者がいなくて、放棄されている農地があるのだ。
それに魔境であろうと、それなりに訓練された騎士や猟師がいれば、幾らでも獲物を狩ることができるのだ。
だから、むやみやたらに人殺しをする気はない。
同時に、必要な虐殺を厭う気もない。
そうでなければ二十万もの狂信者を殺したりはしない。
だが今回の件はどこまでやるのかが悩ましい。
一応前世の記憶を基に政教分離を図ることにしている。
全く違う異世界と言うか、東西の文化文明をごった煮したような世界で、どれだけ日本の史実を参考にしていいか分からないが、俺は理想を追うと決めている。
しかし、理想を追った結果、味方に背かれる可能性もある。
徐々に愛着がわいている家族に刃を向けられるのは正直辛い。
いや、それでも絶対にやらなければいけない事だ。
このまま放置してしまったら、ベリアル教団は俺を舐めてさらに増長する。
自分達教団に逆らう王国貴族などいないと更に傍若無人な態度を取る。
支配下の別教団を使って民に法外な利息で金を貸し、返さないと農地はもちろん女房子供まで質にとって奴隷にする。
単に奴隷にするだけではなく、女子供に売春までさせている。
それで皇室と皇国を守護するこの国で一番権威のある教団だと言うのだから、それを知ってからずっと怒りを超えて殺意を持っていたのだ。
今回プランケット湖を往く我が家の輸送船団を拿捕した自由都市の連中は、俺の仕掛けた罠を見抜けなかったアザエル教団の狂信者共だ。
俺が四地方連合の聖堂騎士団二十万に惨敗するとか考えたのか、聖堂騎士団が有利になるように陽動作戦をしたのかは分からないが、愚かな事に敵対行動をとった。
その連中を皆殺しにするのは決まっているのだが、問題はベリアル教団の方だ。
自由都市はとてもややこしい存在で、土地はベリアル教団の物なのだが、領民の大半はアザエル教団の狂信者なのだ。
まず間違いなく、ベリアル教団は、俺がアザエル教団の狂信者を虐殺するのを止めようとする。
それでアザエル教団に恩を売ると同時に、全ての貴族に急成長著しい俺ですらベリアル教団には逆らえないのだと見せつけるだろう。
その時、俺がベリアル教団の殲滅に動いても家臣達はついてくるだろうか。
「ハリー様、自由都市のアザエル教団より使者が参りました」
19
お気に入りに追加
403
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる