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第一章
第63話:還俗と降嫁
しおりを挟む皇紀2222年・王歴226年・晩秋・ロスリン城
懐妊された叔母上に対する支援の話しは終わった。
だがそれで全ての皇家皇国対策が終わったわけではない。
首都に対して喉元と言える場所、プランケット地方の山中とフェアファクス地方の山中に、攻守のバランスが取れた巨城を築きたい。
だがプランケット地方の絶好の場所にはベリアル教団の本拠地がある。
あそこに本拠地を築いたベリアル教団の創始者は戦略眼があったのだな。
今回の罠にかかってくれたら、ベリアル教団を叩き潰して占拠する予定だ。
だが問題は、ベリアル教団が建前上の教団長に皇族を据えている事だ。
皇家よりも落魄している皇国公爵家の庶子が、ベリアル教団の名誉教団長だ。
実家にいるよりも豊かで安全な生活ができているので、今の立場を守るために、教団を叩き潰す際には邪魔をしてくるだろう。
「母上、公爵家から教会に入った方に還俗していただいて、新たな皇国貴族家を建てるとしたら、どれくらいの領地と爵位を御用意すべきでしょうか」
皇国の仕来りは、下手に俺が考えるよりも母上に聞いた方が早い。
「そうですね、皇国の仕来りでは、公爵家は選帝侯家よりも家格が下なので、千人ほどの領地を用意して差し上げるか、同程度の支援をして差し上げれば、十分だと思いますよ、ハリー殿。
ああ、そうですね、一番喜んでもらえるのは、選帝侯家の養嗣子にして差し上げる事でしょうか、でももうリンスター選帝侯家の養嗣子は決めたのでしたね。
だとすると、断絶したテンペスト選帝侯家を再興する事ですが、そうなるとハリー殿の負担が大きくなり過ぎてしまいますね」
「いえ、御領地ならばともかく、金銭で支援するなら大した負担ではありません。
ですが母上、こんな事は口にするのも憚られますが、皇族の方が選帝侯家に養嗣子に入ると、万が一の時に皇家を継ぐ方がいなくなってしまうのではありませんか」
「ハリー殿とも思えない事を申されますね。
もう既に子供を作る事も許されない教会に入られた公爵家の庶子の方ですよ。
別に公爵家の直系の方がおられますから、何の問題もありません。
なにより第一皇子がおられるのですから、気にする事はありませんよ」
「だったら母上、チェスター公爵家のサミュエル閣下に還俗していただいて、ミア第四皇女殿下と結婚していただくと言うのはどうでしょうか。
二八歳差とかなり年齢に差がありますが、おかしいでしょうか」
俺は従姉妹皇女と公爵家の庶子で教会に入ったサミュエルの結婚を提案してみた。
これが許されたら、ベリアル教団を攻め滅ぼした時の非難が少なくなる。
「いえ、おかしくはありませんよ。
ただ皇帝陛下は、サミュエル様よりも、同じように教会に入るしかなかった、弟皇子のテオドール殿下とミア皇女を結婚させたいと思われるでしょうね」
「それは、母上、叔父と姪の結婚になるのではありませんか。
皇家ではそのような結婚が許されるのですか」
「ええ、全然問題ありませんよ。
初代皇帝陛下は叔父と姪の間に生まれた方だと聞いていますから」
そんな結婚を繰り返しているから、魔力を失ってしまうのだよ。
と、言いたいが、口にできないのだよな。
「では母上、テオドール殿下とサミュエル閣下の還俗、ミア皇女殿下の降嫁、新たな公爵家の創設とテンペスト選帝侯家を再興、私が支援してもいいモノかどうか、叔母上を通じて皇帝陛下の御望みを確かめてもらえますか。
私にできる事ならば、全てかなえさせていただきます」
懐妊された叔母上に対する支援の話しは終わった。
だがそれで全ての皇家皇国対策が終わったわけではない。
首都に対して喉元と言える場所、プランケット地方の山中とフェアファクス地方の山中に、攻守のバランスが取れた巨城を築きたい。
だがプランケット地方の絶好の場所にはベリアル教団の本拠地がある。
あそこに本拠地を築いたベリアル教団の創始者は戦略眼があったのだな。
今回の罠にかかってくれたら、ベリアル教団を叩き潰して占拠する予定だ。
だが問題は、ベリアル教団が建前上の教団長に皇族を据えている事だ。
皇家よりも落魄している皇国公爵家の庶子が、ベリアル教団の名誉教団長だ。
実家にいるよりも豊かで安全な生活ができているので、今の立場を守るために、教団を叩き潰す際には邪魔をしてくるだろう。
「母上、公爵家から教会に入った方に還俗していただいて、新たな皇国貴族家を建てるとしたら、どれくらいの領地と爵位を御用意すべきでしょうか」
皇国の仕来りは、下手に俺が考えるよりも母上に聞いた方が早い。
「そうですね、皇国の仕来りでは、公爵家は選帝侯家よりも家格が下なので、千人ほどの領地を用意して差し上げるか、同程度の支援をして差し上げれば、十分だと思いますよ、ハリー殿。
ああ、そうですね、一番喜んでもらえるのは、選帝侯家の養嗣子にして差し上げる事でしょうか、でももうリンスター選帝侯家の養嗣子は決めたのでしたね。
だとすると、断絶したテンペスト選帝侯家を再興する事ですが、そうなるとハリー殿の負担が大きくなり過ぎてしまいますね」
「いえ、御領地ならばともかく、金銭で支援するなら大した負担ではありません。
ですが母上、こんな事は口にするのも憚られますが、皇族の方が選帝侯家に養嗣子に入ると、万が一の時に皇家を継ぐ方がいなくなってしまうのではありませんか」
「ハリー殿とも思えない事を申されますね。
もう既に子供を作る事も許されない教会に入られた公爵家の庶子の方ですよ。
別に公爵家の直系の方がおられますから、何の問題もありません。
なにより第一皇子がおられるのですから、気にする事はありませんよ」
「だったら母上、チェスター公爵家のサミュエル閣下に還俗していただいて、ミア第四皇女殿下と結婚していただくと言うのはどうでしょうか。
二八歳差とかなり年齢に差がありますが、おかしいでしょうか」
俺は従姉妹皇女と公爵家の庶子で教会に入ったサミュエルの結婚を提案してみた。
これが許されたら、ベリアル教団を攻め滅ぼした時の非難が少なくなる。
「いえ、おかしくはありませんよ。
ただ皇帝陛下は、サミュエル様よりも、同じように教会に入るしかなかった、弟皇子のテオドール殿下とミア皇女を結婚させたいと思われるでしょうね」
「それは、母上、叔父と姪の結婚になるのではありませんか。
皇家ではそのような結婚が許されるのですか」
「ええ、全然問題ありませんよ。
初代皇帝陛下は叔父と姪の間に生まれた方だと聞いていますから」
そんな結婚を繰り返しているから、魔力を失ってしまうのだよ。
と、言いたいが、口にできないのだよな。
「では母上、テオドール殿下とサミュエル閣下の還俗、ミア皇女殿下の降嫁、新たな公爵家の創設とテンペスト選帝侯家を再興、私が支援してもいいモノかどうか、叔母上を通じて皇帝陛下の御望みを確かめてもらえますか。
私にできる事ならば、全てかなえさせていただきます」
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