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第一章
第39話:開戦
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皇紀2219年・王歴223年・早春・野戦陣地
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
「「「「「たたかえぇえええええ」」」」」
「「「「「ひくなぁあああああ」」」」」
「「「「「はなてぇえええええ」」」」」
敵、エクセター侯爵軍が川を渡ろうとしているが、味方が上手く撃退している。
敵も矢を放ち魔術を展開して渡河軍を支援しているが、上手くいっていない。
最前線に配備した元エクセター侯爵兵がよく頑張ってくれている。
エクセター侯爵や領主に見捨てられた事を、強く恨んでいるのだろう。
同時に俺に対しては恩義を感じ忠誠心を持ってくれている。
俺以外の領主なら、彼らはよくて奴隷、悪くすれば処刑されていたのだから。
命を助けてもらえたばかりか、自由人としての地位が保証され、軍に加えてもらえて衣食住が保証されたのだ
こんな血で血を洗うような世界では、仕えるに値する主君に思われている。
それに、俺は彼らが心から求めている褒美を約束している。
手柄を立てたら、エクセター侯爵領にいる家族を買い戻し助けてやると。
彼らの家族の多くが、奴隷にされてしまっているのだ。
戦争に負けたのは彼らのせいではなく、エクセター侯爵が判断を誤ったからだ。
現地に派遣されていたエクセター侯爵家の重臣が無能で力がなかったからだ。
それなのに、命懸けで戦った領民兵の家族を奴隷に売って損害の穴埋めをした。
そんな重臣家の跡継ぎが、今回の侵攻軍の指揮官のひとりに抜擢されている。
見捨てられ、家族を奴隷に落とされた彼らが、激怒したのは当然だった。
「俺が魔術を放つ」
敵軍が川を渡りそうだと判断した俺は、自分で敵を防ぐことにした。
敵が有能な場合は、ここで戦う事はないと思っていたから、少々意外だった。
もし俺が敵軍の指揮官だったら、自分からは攻めない。
一万五千の軍勢がここにいるだけで、わが軍の主力はここを動けない。
その間に峡谷を侵攻している別働軍がエレンバラ城を落とすのを待つ。
あるいは、トリムレストン子爵軍が北から攻め込むのを待つ。
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
味方が大きな歓声をあげている。
川を渡ってきた全ての敵が河原に倒れるのを見たからだ。
俺は攻撃魔術で敵兵を殺すような真似はしなかった。
彼らの多くが無理矢理集められた農民なのは分かっている。
略奪のために進んで軍に加わった者もいるだろうが、基本は被害者だ。
だから殺さずに捕虜にして我が家ために働かせるのだ。
「いけぇえええええ、ひるむなぁあああああ、すすめぇえええええ」
敵の前線指揮官が声を嗄らして兵士に命じている。
「フィンレー、敵の指揮官は馬鹿なのか」
「エクセター侯爵家内の噂では、嫡男は妬み嫉みが激しい馬鹿だと言う事です」
「妬み嫉みが激しいか、もしかして、俺の軍功を妬んでいるのか」
「はい、侯爵閣下のような若輩者があのような手柄を立てる訳がないと。
実際には先々代が指揮をとられていて、戦場に出ていたのは影武者に違いないと、機会あるごとに言い触らしているそうでございます」
「だとすると、この渡河作戦もその馬鹿が命じた可能性が高いな」
「絶対とは申せませんが、その可能性があります。
戦が終わったら、真実を探らせます」
「ふむ、だとすると、この場で馬鹿は殺さない方がいいか」
「馬鹿には弟がおります。
ここで取り返しのつかない汚点、格下相手に無様に負けたとなれば、弟がよほど優秀でなければ、家督争いが勃発する事でしょう」
「クックックック、それは面白いな。
弟が並の優秀さなら、自分ならエクセター侯爵家を立て直せると考えるだろう。
並外れて優秀でなければ、自分の欲を抑えることなどできない。
家督争いが家を滅ぼす最悪の判断だとは思わない。
いや、それでもやらなければいけないと自分を正当化するな」
「はい、だからこそ、多くの家が家督争いで滅んできました」
「俺も今から子供の教育と家督継承をよく考えて動かないといけないな」
「はい、欲を抑えることができるのでしたら、その方が宜しいかと」
「だが、今はまずどうするべきかを決めなければいけないな。
エクセター侯爵本人がこの場にいるなら、嫡男共々殺してやるのだが、いないなら嫡男は生かして逃がした方がいいな」
「はい、私もそう思います」
「では、仕上げと行こうか」
話しながらも渡河してきた敵兵をひとり残らず眠らせ続けていた。
もう敵は俺を恐れて渡河してこなくなっている。
これ以上の戦果を手に入れたければ、今度は自分から渡河しなければいけない。
川向うに敵が布陣している状態で渡河するのは、非常に危険な事だ。
だがそれを行わなければ、望む戦果を手にする事はできない。
迎撃できないように、川向うに布陣している敵兵をすべて眠らせるべきだな。
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
「「「「「たたかえぇえええええ」」」」」
「「「「「ひくなぁあああああ」」」」」
「「「「「はなてぇえええええ」」」」」
敵、エクセター侯爵軍が川を渡ろうとしているが、味方が上手く撃退している。
敵も矢を放ち魔術を展開して渡河軍を支援しているが、上手くいっていない。
最前線に配備した元エクセター侯爵兵がよく頑張ってくれている。
エクセター侯爵や領主に見捨てられた事を、強く恨んでいるのだろう。
同時に俺に対しては恩義を感じ忠誠心を持ってくれている。
俺以外の領主なら、彼らはよくて奴隷、悪くすれば処刑されていたのだから。
命を助けてもらえたばかりか、自由人としての地位が保証され、軍に加えてもらえて衣食住が保証されたのだ
こんな血で血を洗うような世界では、仕えるに値する主君に思われている。
それに、俺は彼らが心から求めている褒美を約束している。
手柄を立てたら、エクセター侯爵領にいる家族を買い戻し助けてやると。
彼らの家族の多くが、奴隷にされてしまっているのだ。
戦争に負けたのは彼らのせいではなく、エクセター侯爵が判断を誤ったからだ。
現地に派遣されていたエクセター侯爵家の重臣が無能で力がなかったからだ。
それなのに、命懸けで戦った領民兵の家族を奴隷に売って損害の穴埋めをした。
そんな重臣家の跡継ぎが、今回の侵攻軍の指揮官のひとりに抜擢されている。
見捨てられ、家族を奴隷に落とされた彼らが、激怒したのは当然だった。
「俺が魔術を放つ」
敵軍が川を渡りそうだと判断した俺は、自分で敵を防ぐことにした。
敵が有能な場合は、ここで戦う事はないと思っていたから、少々意外だった。
もし俺が敵軍の指揮官だったら、自分からは攻めない。
一万五千の軍勢がここにいるだけで、わが軍の主力はここを動けない。
その間に峡谷を侵攻している別働軍がエレンバラ城を落とすのを待つ。
あるいは、トリムレストン子爵軍が北から攻め込むのを待つ。
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
味方が大きな歓声をあげている。
川を渡ってきた全ての敵が河原に倒れるのを見たからだ。
俺は攻撃魔術で敵兵を殺すような真似はしなかった。
彼らの多くが無理矢理集められた農民なのは分かっている。
略奪のために進んで軍に加わった者もいるだろうが、基本は被害者だ。
だから殺さずに捕虜にして我が家ために働かせるのだ。
「いけぇえええええ、ひるむなぁあああああ、すすめぇえええええ」
敵の前線指揮官が声を嗄らして兵士に命じている。
「フィンレー、敵の指揮官は馬鹿なのか」
「エクセター侯爵家内の噂では、嫡男は妬み嫉みが激しい馬鹿だと言う事です」
「妬み嫉みが激しいか、もしかして、俺の軍功を妬んでいるのか」
「はい、侯爵閣下のような若輩者があのような手柄を立てる訳がないと。
実際には先々代が指揮をとられていて、戦場に出ていたのは影武者に違いないと、機会あるごとに言い触らしているそうでございます」
「だとすると、この渡河作戦もその馬鹿が命じた可能性が高いな」
「絶対とは申せませんが、その可能性があります。
戦が終わったら、真実を探らせます」
「ふむ、だとすると、この場で馬鹿は殺さない方がいいか」
「馬鹿には弟がおります。
ここで取り返しのつかない汚点、格下相手に無様に負けたとなれば、弟がよほど優秀でなければ、家督争いが勃発する事でしょう」
「クックックック、それは面白いな。
弟が並の優秀さなら、自分ならエクセター侯爵家を立て直せると考えるだろう。
並外れて優秀でなければ、自分の欲を抑えることなどできない。
家督争いが家を滅ぼす最悪の判断だとは思わない。
いや、それでもやらなければいけないと自分を正当化するな」
「はい、だからこそ、多くの家が家督争いで滅んできました」
「俺も今から子供の教育と家督継承をよく考えて動かないといけないな」
「はい、欲を抑えることができるのでしたら、その方が宜しいかと」
「だが、今はまずどうするべきかを決めなければいけないな。
エクセター侯爵本人がこの場にいるなら、嫡男共々殺してやるのだが、いないなら嫡男は生かして逃がした方がいいな」
「はい、私もそう思います」
「では、仕上げと行こうか」
話しながらも渡河してきた敵兵をひとり残らず眠らせ続けていた。
もう敵は俺を恐れて渡河してこなくなっている。
これ以上の戦果を手に入れたければ、今度は自分から渡河しなければいけない。
川向うに敵が布陣している状態で渡河するのは、非常に危険な事だ。
だがそれを行わなければ、望む戦果を手にする事はできない。
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