異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全

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第一章

第25話:六家連合軍

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 皇紀2217年・王歴221年・冬・エレンバラ王国男爵領

「おお、あのように沢山の敵が攻めてきましたぞ、ハリー殿。
 本当にこの城にいて大丈夫なのか、間違いないのか」

「大丈夫ですよ、伯父上。
 伯父上がここにいる事は敵も分かっています。
 今のような微妙な政治情勢で、教団長である伯父上に手出しするほど、ロスリン伯爵もエクセター侯爵も馬鹿ではありませんよ」

 ヴィンセントの爺様は極貧の皇国貴族のくせに、馬鹿みたいに子沢山で、養いきれない子供を生かすために、教会に入れて神官にさせる事が多かった。
 まあ、これは、皇家も王家もやっている事で、実力のない皇国貴族や王国貴族も、同じように余計な子女を教会に預けている。
 教会を構成している各教団も、貴族の力を背景に教団同士の抗争に討ち勝とうと、聖堂騎士団を投入しているのだから、教会と言うよりは武装宗教結社だな。

 そんな風に教団に預けられた九人の伯父達のうち、最も実力のない伯父が領地に来てくれて、皇太子殿下の代わりに事の次第を見聞きしてくれるのだ。
 戦闘力のある教団に所属している伯父だと、分け前を要求されるかもしれない。
 この無力な伯父が来てくれた御陰で、ロスリン伯爵の攻め口にある渓谷の城が、ロスリン伯爵から見るととても攻め難い城になっている。
 まあロスリン伯爵の全戦力は、分家を併せた六家合計でも、たかだか二千弱の軍勢でしかないから怖くもなんともない。

「では伯父上、私は戦場に行ってまいりますから、この城で御待ちください」

 ★★★★★★

 ウォオオオオオ

 敵兵が渓谷に沿って攻め上がってくるが、正面の山に築かれた城は無視している。
 ヴィンセント子爵家の家紋を染めた旗が翩翻と翻っているので、攻め登れないのだろうが、それを確認できれば十分だ。
 本城には母上がおられるから、同じようにヴィンセント子爵家の家紋を染めた旗を立てておけば、何があっても敵は攻め込んで来ないだろう。
 攻め込むにしても、城外退去の使者を送ってくるはずだ。

「爺様、国王の方はどうなっている」

「ローガンが千の兵で離宮を囲んでいるから、討って出る事はないじゃろう」

 手筈通り、大叔父が離宮の警備と言う名目で脅してくれている。
 本城に通じる渓谷や獣道には抑えの城を築いたから大丈夫だ。
 これで領内を荒らされる心配はない、向かってくる敵だけ討てばいい。
 我が家の情報は秘匿していたから、豊かになって昔のままの二百人程度の兵ではないとは思っていても、五千兵もいるとは思っていないだろう。
 今回ロスリン伯爵連合軍を直接迎え討つ兵士は三千だけだ。
 残る二千は離宮と本城と領境の城にいる。

「火炎乱舞」

 普通なら敵に狙われないように隠れて魔術を発動するのだが、今回は父が討ち取られてから初めての戦で、しかも俺の初陣でもある。
 目立つ事で家臣達の戦意を奮い立たせないといけない。
 だから、普通なら無詠唱で放つ魔術を、大声を出して目立つ形で放った。
 本気なら青くなるくらい高熱にできるのだが、敵にも味方にも俺の火炎魔術がよく見えるように、比較的低温の赤く光る火炎魔術にしておいた」

ギャアアアアア

 目に見える範囲にいる指揮官級の敵に火炎魔術を叩きつけてやった。
 ロスリン伯爵は勿論、残る五家の当主、誰の顔も知らないので、身につけている鎧に質がよさそうな順に、二百の火炎で首を焼き切ってやった。
 二千度程度の火炎を五つ集めて五千度くらいにした上に、圧縮して刃物のように変化させ、首に叩きつけてやったのだ。

「お前達の指揮官を皆殺しにした、同じように殺されたくなければ、武器を捨てて降伏しろ、さもなければ焼き殺すぞ」

 俺は再び大きな火の玉を創り出して威圧してやった。
 目に見える範囲の敵は一斉に武器を投げ捨てて降伏した。
 後は、後ろにいてふんぞり返っている卑怯者の始末だ。

「後方にいる敵本陣に攻め込むぞ、ついてこい」

「「「「「おう」」」」」
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