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第一章
第15話:祖父暗躍
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皇紀2213年・王歴217年・冬・エレンバラ王国男爵領
領内に多くの雪が積もっている。
首都に近い我が領地だが、山間部にあるので結構雪深い。
雪に埋もれている間は、家の中でもやれる手仕事をするのが普通だが、俺は違う。
手に入れた魔獣皮紙に魔法陣を描き、魔晶石を配置して攻撃用の魔術陣を作る。
もう結構な量を作ったので、ロスリン伯爵が攻め込んできたとしても、家臣達だけでも撃退できるだろう。
「ハリー、舅殿は離宮に入りびたりですか」
母上が非難するような調子で話しかけてきた。
あれだけ俺の前で誓ったにもかかわらず、祖父は国王にべったりだ。
ライバル心を剥き出しにしているエクセター侯爵に勝ちたいのだろう。
我が家の家督は俺に譲っているから、家の兵士も資金も好き勝手にはできない。
いや、俺が繁栄させているとはいえ、たかだか領民一万人強の我が家に、領民百万人のエクセター侯爵家と戦う力などない。
「はい、爺様はよほど国王陛下がお好きなのでしょう」
先代国王の側近だった祖父は、まだ若い国王が可愛いのだろう。
だがあそこまで入れ込むのは、私欲が強くあるからだと思う。
我が家ではエクセター侯爵家と戦えないのなら、国王の力を使ってエクセター侯爵と戦えばいいと思っているのだ。
実際に戦っている相手はカンリフ騎士家だが、国王を補佐して勝利に導けば、当代はもちろん亡くなった先代エクセター侯爵にも勝てると思っているのだろう。
「そのような事で、ハリー殿の補佐ができると思っているのでしょうか」
母上は俺の事を放り出して国王に入れ込む祖父が許せないようだ。
段々と感情が高ぶって来ているように見える。
だが俺自身は、それほど怒りを感じていない。
それどころか、祖父が哀れに想われて仕方がない。
俺を当主にするために頑張ってくれたのは祖父なのだ。
歳を重ね、名誉を挽回できる最後の機会を得て周りが見えなくなっているだけだ。
「大丈夫でございます、母上。
戦の仕方、攻撃魔術の使い方は大叔父が教えてくれています。
それに、母上がいてくださいます。
母上が私に色々と教えてくださるのですから、何の不安もありません」
「まあ、ハリー殿はお口がお上手な事。
そのような事を五歳で口にするなんて、母は心から心配ですよ。
皇国貴族のご令嬢を口説いてまわってはいけませんよ」
いや、そんなつもりで甘えるような言葉を口にしたわけではない。
母上の批判を祖父からそらせたかっただけだ。
父が殺された直後にもあったが、家族で争うほど不毛な事はない。
お家騒動で滅んだ大名がどれほど多いか、前世の記憶のある俺はよく知っている。
この世界を魔力ある戦国時代だと思えば、やらなければいけない事が直ぐわかる。
「そんな事はしませんよ、母上。
それよりも蹴球を教えてください」
母の実家が得意とする皇国貴族の遊び、蹴球だが、侮れないと分かった。
前世の蹴鞠やリフティングのようなモノだが、素晴らしい鍛錬になる。
遊びながら楽しく足腰を鍛えることができるのだ。
両手を力強く器用に使う事は、戦う貴族なら全員学んでいる事だ。
それに足腰の強さと器用さが加われば、圧倒的な個人戦闘力を得られる。
更に両手両足に魔力を加えて自由自在に動かせれば、無敵になれると思う。
「ええ、いいですわよ。
ハリー殿には色々な才能がおありですから、王国貴族から皇国貴族になっていただけばいいかもしれませんね。
エレンバラ男爵のままではできない事ですが、ハリー殿にはヴィンセント子爵家の血が流れているのですから、領地ごとどこかの皇国貴族家に養子に入られたら、何の問題もなく皇国貴族になれますわ」
母上、とんでもない事を考えないでください。
ですが、まったく荒唐無稽と言う事もないのかな、ちょっと調べてみるか。
領内に多くの雪が積もっている。
首都に近い我が領地だが、山間部にあるので結構雪深い。
雪に埋もれている間は、家の中でもやれる手仕事をするのが普通だが、俺は違う。
手に入れた魔獣皮紙に魔法陣を描き、魔晶石を配置して攻撃用の魔術陣を作る。
もう結構な量を作ったので、ロスリン伯爵が攻め込んできたとしても、家臣達だけでも撃退できるだろう。
「ハリー、舅殿は離宮に入りびたりですか」
母上が非難するような調子で話しかけてきた。
あれだけ俺の前で誓ったにもかかわらず、祖父は国王にべったりだ。
ライバル心を剥き出しにしているエクセター侯爵に勝ちたいのだろう。
我が家の家督は俺に譲っているから、家の兵士も資金も好き勝手にはできない。
いや、俺が繁栄させているとはいえ、たかだか領民一万人強の我が家に、領民百万人のエクセター侯爵家と戦う力などない。
「はい、爺様はよほど国王陛下がお好きなのでしょう」
先代国王の側近だった祖父は、まだ若い国王が可愛いのだろう。
だがあそこまで入れ込むのは、私欲が強くあるからだと思う。
我が家ではエクセター侯爵家と戦えないのなら、国王の力を使ってエクセター侯爵と戦えばいいと思っているのだ。
実際に戦っている相手はカンリフ騎士家だが、国王を補佐して勝利に導けば、当代はもちろん亡くなった先代エクセター侯爵にも勝てると思っているのだろう。
「そのような事で、ハリー殿の補佐ができると思っているのでしょうか」
母上は俺の事を放り出して国王に入れ込む祖父が許せないようだ。
段々と感情が高ぶって来ているように見える。
だが俺自身は、それほど怒りを感じていない。
それどころか、祖父が哀れに想われて仕方がない。
俺を当主にするために頑張ってくれたのは祖父なのだ。
歳を重ね、名誉を挽回できる最後の機会を得て周りが見えなくなっているだけだ。
「大丈夫でございます、母上。
戦の仕方、攻撃魔術の使い方は大叔父が教えてくれています。
それに、母上がいてくださいます。
母上が私に色々と教えてくださるのですから、何の不安もありません」
「まあ、ハリー殿はお口がお上手な事。
そのような事を五歳で口にするなんて、母は心から心配ですよ。
皇国貴族のご令嬢を口説いてまわってはいけませんよ」
いや、そんなつもりで甘えるような言葉を口にしたわけではない。
母上の批判を祖父からそらせたかっただけだ。
父が殺された直後にもあったが、家族で争うほど不毛な事はない。
お家騒動で滅んだ大名がどれほど多いか、前世の記憶のある俺はよく知っている。
この世界を魔力ある戦国時代だと思えば、やらなければいけない事が直ぐわかる。
「そんな事はしませんよ、母上。
それよりも蹴球を教えてください」
母の実家が得意とする皇国貴族の遊び、蹴球だが、侮れないと分かった。
前世の蹴鞠やリフティングのようなモノだが、素晴らしい鍛錬になる。
遊びながら楽しく足腰を鍛えることができるのだ。
両手を力強く器用に使う事は、戦う貴族なら全員学んでいる事だ。
それに足腰の強さと器用さが加われば、圧倒的な個人戦闘力を得られる。
更に両手両足に魔力を加えて自由自在に動かせれば、無敵になれると思う。
「ええ、いいですわよ。
ハリー殿には色々な才能がおありですから、王国貴族から皇国貴族になっていただけばいいかもしれませんね。
エレンバラ男爵のままではできない事ですが、ハリー殿にはヴィンセント子爵家の血が流れているのですから、領地ごとどこかの皇国貴族家に養子に入られたら、何の問題もなく皇国貴族になれますわ」
母上、とんでもない事を考えないでください。
ですが、まったく荒唐無稽と言う事もないのかな、ちょっと調べてみるか。
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