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第一章
第7話:影衆
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皇紀2212年・王歴216年・春・エレンバラ王国男爵領
「その影衆というのを家臣にしたいのだが、伝手はあるか、爺様」
満三歳、当年とって四歳になったが、まだまだ知らない事が多い。
毎日祖父や母に色々と教わっているが、今日は特に驚いた。
この世界にも忍者のような存在がいるらしい。
表出て戦う騎士や徒士とは違い、情報収集や後方攪乱を行うという。
そんな組織があるのなら、ぜひ家臣に迎えたい。
影衆だったら、以前考えていた武装商人として使う事もできるのではないか。
「ハリー、残念だが影衆に知り合いはいない。
アフリマン衆はエクセター侯爵家の支配下にある。
しかも一族の当主はエクセター侯爵家の重臣として遇されている。
アフリマン衆の隣にいるダエーワ衆もエクセター侯爵家の影響下にある。
一時的に我が家の役に立っても、エクセター侯爵家に秘密が漏れる恐れがあるぞ」
エクセター侯爵と言えば、我が家を家臣のように扱う大貴族だったな。
祖父が王家に忠誠を尽くしてきたのも、エクセター侯爵家に飲み込まれないための苦肉の策だったのかもしれない。
そんな家に我が家の秘密が筒抜けになるのは大問題だ。
いつまでも秘密にはしておけないのは分かっているが、俺のアイデアが表にでるのは遅ければ遅いほどいいのだ。
「だったらどうだろう、領民に聞いてみないか、爺様」
「領民に影衆の情報を聞くというのか、正気かハリー」
俺を信頼してくれているはずの祖父が驚き問い返してきた。
それほど驚く事ではないと思うのだが、何故だろう。
「我が家は山間の細長い渓谷にある。
領民の多くは農耕よりも山仕事で収入を得ている。
領民の中には季節ごとに山を移動している猟師や木地師もいるではないか。
影衆は山深い作物の実らない地方に住んでいるのだろう。
同じ山で生きる者として、つながりがあるかもしれない。
もしかしたら領民の中に影衆がいるかもしれないぞ」
最後はちょっと冗談のように言ってみた。
「ふむ、確かに、領内に住む者の中には、税を払わずに山を渡り歩く者がいる。
正直腹立たしい事ではあるが、彼らがいてくれるから、他の貴族が関所を作って荷物を止めても、最低限の生活必需品が確保できるのも確かだ。
そんな連中に頭を下げて協力してもらうのか」
「何も頭を下げる必要などない、爺様。
領主として堂々と家臣に迎えると言えばいい。
爺様の話しでは、貴族が彼らを雇う待遇は凄く悪いのだろう。
一時的に雇うのではなく、正式に家臣として迎えると言えば、忠誠を尽くしてくれるのではないか、爺様」
「ふむ、男爵家でしかない我が家が影衆を召し抱えるのか、面白い。
信用できる影衆を召し抱えられるのなら誇らしい事だが、本当にそのような者がいるのか、ハリー」
「いるかいないかは、聞いてみなければわからないだろう、爺様。
全ては聞いてみなければ始まらないぞ」
「確かにハリーの言う通りだな。
では次の狩りの日に、主だった山衆に影衆の事を聞いてみよう。
そろそろ眠くなったのではないか、オリビア殿の所に行ってこい」
祖父が揶揄うように言ってくる。
情に訴えて母をこの家に引き留めろと言ったのは祖父ではないか。
今更揶揄う道具にするのは止めて欲しいものだ。
それにしても、子供の身体というのは度し難い、眠くなったらどうしようもない。
まるで電池が切れたオモチャのように、突然動けなくなる。
「母上、眠くなってしまいました、お膝、お膝で眠らせてください」
「まあ、まあ、まあ、ハリーは四つになっても甘えたさんですね」
「その影衆というのを家臣にしたいのだが、伝手はあるか、爺様」
満三歳、当年とって四歳になったが、まだまだ知らない事が多い。
毎日祖父や母に色々と教わっているが、今日は特に驚いた。
この世界にも忍者のような存在がいるらしい。
表出て戦う騎士や徒士とは違い、情報収集や後方攪乱を行うという。
そんな組織があるのなら、ぜひ家臣に迎えたい。
影衆だったら、以前考えていた武装商人として使う事もできるのではないか。
「ハリー、残念だが影衆に知り合いはいない。
アフリマン衆はエクセター侯爵家の支配下にある。
しかも一族の当主はエクセター侯爵家の重臣として遇されている。
アフリマン衆の隣にいるダエーワ衆もエクセター侯爵家の影響下にある。
一時的に我が家の役に立っても、エクセター侯爵家に秘密が漏れる恐れがあるぞ」
エクセター侯爵と言えば、我が家を家臣のように扱う大貴族だったな。
祖父が王家に忠誠を尽くしてきたのも、エクセター侯爵家に飲み込まれないための苦肉の策だったのかもしれない。
そんな家に我が家の秘密が筒抜けになるのは大問題だ。
いつまでも秘密にはしておけないのは分かっているが、俺のアイデアが表にでるのは遅ければ遅いほどいいのだ。
「だったらどうだろう、領民に聞いてみないか、爺様」
「領民に影衆の情報を聞くというのか、正気かハリー」
俺を信頼してくれているはずの祖父が驚き問い返してきた。
それほど驚く事ではないと思うのだが、何故だろう。
「我が家は山間の細長い渓谷にある。
領民の多くは農耕よりも山仕事で収入を得ている。
領民の中には季節ごとに山を移動している猟師や木地師もいるではないか。
影衆は山深い作物の実らない地方に住んでいるのだろう。
同じ山で生きる者として、つながりがあるかもしれない。
もしかしたら領民の中に影衆がいるかもしれないぞ」
最後はちょっと冗談のように言ってみた。
「ふむ、確かに、領内に住む者の中には、税を払わずに山を渡り歩く者がいる。
正直腹立たしい事ではあるが、彼らがいてくれるから、他の貴族が関所を作って荷物を止めても、最低限の生活必需品が確保できるのも確かだ。
そんな連中に頭を下げて協力してもらうのか」
「何も頭を下げる必要などない、爺様。
領主として堂々と家臣に迎えると言えばいい。
爺様の話しでは、貴族が彼らを雇う待遇は凄く悪いのだろう。
一時的に雇うのではなく、正式に家臣として迎えると言えば、忠誠を尽くしてくれるのではないか、爺様」
「ふむ、男爵家でしかない我が家が影衆を召し抱えるのか、面白い。
信用できる影衆を召し抱えられるのなら誇らしい事だが、本当にそのような者がいるのか、ハリー」
「いるかいないかは、聞いてみなければわからないだろう、爺様。
全ては聞いてみなければ始まらないぞ」
「確かにハリーの言う通りだな。
では次の狩りの日に、主だった山衆に影衆の事を聞いてみよう。
そろそろ眠くなったのではないか、オリビア殿の所に行ってこい」
祖父が揶揄うように言ってくる。
情に訴えて母をこの家に引き留めろと言ったのは祖父ではないか。
今更揶揄う道具にするのは止めて欲しいものだ。
それにしても、子供の身体というのは度し難い、眠くなったらどうしようもない。
まるで電池が切れたオモチャのように、突然動けなくなる。
「母上、眠くなってしまいました、お膝、お膝で眠らせてください」
「まあ、まあ、まあ、ハリーは四つになっても甘えたさんですね」
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