6 / 94
第一章
第5話:亡命
しおりを挟む
皇紀2211年・王歴215年・秋・エレンバラ王国男爵領
俺は生き残るために色々と考えた。
祖父や母からこの国の状況や魔力と魔術の事を教わりながら考えた。
俺には前世の知識があって、アニメやラノベの事を参考に魔力を高められる。
だが、魔力を高めて強くなる前に殺されては何の意味もない。
だから前世の知識を生かして、火縄銃や三間槍を導入しようかとも考えた。
しかしながら魔力で優位な俺が、一時の不利を補うために魔力を圧倒しかねない銃器を開発して、自分の優位を自分から捨てていいのかとも深く悩んだのだ。
「世話になるぞ、宮中伯」
だがそんな俺の悩みなど無用なモノとなった。
俺には理解できない有力貴族間の駆け引きで、国王が我が家に亡命してきたのだ。
今まではベリアル教団の宗教都市に亡命していた国王を、我がエレンバラ男爵家が受け入れるという、信じられない状況になった。
祖父や母の話しでは、この地方を支配している大貴族が、ベリアル教団の力が強くなる事を恐れて、費用を負担するから我が家で預かって欲しいと言ってきたそうだ。
「お任せください、国王陛下。
陛下に御不自由をおかけする事などありません」
やれ、やれ、亡命してきた国王と側近の面倒みるとなると、金がかかる。
この地方の大貴族が全ての費用を負担すると言っているが、その約束がいつまで守られるか分からないし、細々とした費用までは請求し難い。
弱小とはいえ、我が家にだって男爵家としての面子があるのだ。
それに周囲に国王と敵対する敵がいないから、国王一行を領内に匿う事で我が家が受ける利益も大きい。
少なくともこれでロスリン伯爵家が攻め込んで来る事はない。
「うむ、頼んだぞ」
俺は表向き傀儡でしかなく、全ての会話は祖父がしてくれる。
祖父とは昨日のうちにどうするべきかを全て話し合っている。
まだ三歳児でしかない俺は、国王が住む離宮まではついていかない。
俺にはまだまだやらなければいけない事があるのだ。
我が家を富まして経済力と戦力を高めなければいけない。
そのためには、仮想戦記を読み漁って蓄えた知識を試さなければいけない。
「母上、城に戻って書を教えてください」
椎茸の人工栽培や練炭豆炭を作る事は、養蚕や機織りと同じように、急がずに徐々に領内に広めていく心算なのだ。
秘密がもれたら困るから、信頼できる家臣を先に選ばなければいけない。
今信頼できると分かっているのは、祖父と母、それに大叔父の一族だけだ。
彼らを使って徐々に経済力を高めていく。
それと同時に、母からは皇国貴族の嗜みを教えてもらう。
母の実家は多芸なようで、地方に逃げて行っても優遇されるそうだ。
字が上手く、詩や唄はもちろん、古代から続く蹴球の名家でもあるそうだ。
蹴球はともかく、習字はぜひとも習いたい。
前世の俺は字があまりにも汚くて恥をかいてきたから、今生こそは達筆になる。
母に字を教われば、達筆は無理でも字が汚くて恥をかく事だけはなくなるだろう。
国王が亡命してくれたお陰で時間ができたのだ、学べることは全て学んでおく。
問題は魔力と魔術だ、これが意外と分からない事が多い。
前世の仕事が東洋医学関係だったから、経絡経穴の事はよく知っている。
アーユルヴェーダや西洋医学の事も理解している。
それらの知識を魔力器官や魔力路に反映させて、魔力器官の魔法袋化を行えば、俺は無尽蔵の魔力を手に入れられるのではないだろうか。
明日にでも祖父と母に確かめてみよう、今日はもう眠くなってしまった。
「母上、眠くなってしまいました、お膝、お膝で眠らせてください」
「まあ、まあ、まあ、ハリーは当主になっても甘えたさんですね」
俺は生き残るために色々と考えた。
祖父や母からこの国の状況や魔力と魔術の事を教わりながら考えた。
俺には前世の知識があって、アニメやラノベの事を参考に魔力を高められる。
だが、魔力を高めて強くなる前に殺されては何の意味もない。
だから前世の知識を生かして、火縄銃や三間槍を導入しようかとも考えた。
しかしながら魔力で優位な俺が、一時の不利を補うために魔力を圧倒しかねない銃器を開発して、自分の優位を自分から捨てていいのかとも深く悩んだのだ。
「世話になるぞ、宮中伯」
だがそんな俺の悩みなど無用なモノとなった。
俺には理解できない有力貴族間の駆け引きで、国王が我が家に亡命してきたのだ。
今まではベリアル教団の宗教都市に亡命していた国王を、我がエレンバラ男爵家が受け入れるという、信じられない状況になった。
祖父や母の話しでは、この地方を支配している大貴族が、ベリアル教団の力が強くなる事を恐れて、費用を負担するから我が家で預かって欲しいと言ってきたそうだ。
「お任せください、国王陛下。
陛下に御不自由をおかけする事などありません」
やれ、やれ、亡命してきた国王と側近の面倒みるとなると、金がかかる。
この地方の大貴族が全ての費用を負担すると言っているが、その約束がいつまで守られるか分からないし、細々とした費用までは請求し難い。
弱小とはいえ、我が家にだって男爵家としての面子があるのだ。
それに周囲に国王と敵対する敵がいないから、国王一行を領内に匿う事で我が家が受ける利益も大きい。
少なくともこれでロスリン伯爵家が攻め込んで来る事はない。
「うむ、頼んだぞ」
俺は表向き傀儡でしかなく、全ての会話は祖父がしてくれる。
祖父とは昨日のうちにどうするべきかを全て話し合っている。
まだ三歳児でしかない俺は、国王が住む離宮まではついていかない。
俺にはまだまだやらなければいけない事があるのだ。
我が家を富まして経済力と戦力を高めなければいけない。
そのためには、仮想戦記を読み漁って蓄えた知識を試さなければいけない。
「母上、城に戻って書を教えてください」
椎茸の人工栽培や練炭豆炭を作る事は、養蚕や機織りと同じように、急がずに徐々に領内に広めていく心算なのだ。
秘密がもれたら困るから、信頼できる家臣を先に選ばなければいけない。
今信頼できると分かっているのは、祖父と母、それに大叔父の一族だけだ。
彼らを使って徐々に経済力を高めていく。
それと同時に、母からは皇国貴族の嗜みを教えてもらう。
母の実家は多芸なようで、地方に逃げて行っても優遇されるそうだ。
字が上手く、詩や唄はもちろん、古代から続く蹴球の名家でもあるそうだ。
蹴球はともかく、習字はぜひとも習いたい。
前世の俺は字があまりにも汚くて恥をかいてきたから、今生こそは達筆になる。
母に字を教われば、達筆は無理でも字が汚くて恥をかく事だけはなくなるだろう。
国王が亡命してくれたお陰で時間ができたのだ、学べることは全て学んでおく。
問題は魔力と魔術だ、これが意外と分からない事が多い。
前世の仕事が東洋医学関係だったから、経絡経穴の事はよく知っている。
アーユルヴェーダや西洋医学の事も理解している。
それらの知識を魔力器官や魔力路に反映させて、魔力器官の魔法袋化を行えば、俺は無尽蔵の魔力を手に入れられるのではないだろうか。
明日にでも祖父と母に確かめてみよう、今日はもう眠くなってしまった。
「母上、眠くなってしまいました、お膝、お膝で眠らせてください」
「まあ、まあ、まあ、ハリーは当主になっても甘えたさんですね」
201
お気に入りに追加
555
あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします


転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる