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第一章
第76話:奇襲警告
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「ルーパス、神々がおかしい。
魔界より先に人界を攻め滅ぼすかもしれん。
人界を覆う結界を張れ」
全く唐突に大魔王から連絡が来たのは、前回の会談から二年後だった。
人界にとっては二年というのはそれなりの月日である。
オードリーとミネルバが二人揃って出産して次の子を身籠るくらいに。
だが魔界にとっては数日から十数日でしかない。
「ルーパス、これは一体どういうことなのかしら。
大魔王が何か謀略を仕掛けようとしているのかしら」
ミネルバがもっともな心配をした。
「確かにその可能性は皆無ではない。
だが恐らくは魔界の神々が人界を恐れたのだと思う。
魔界の神々にとっても、人界の時の流れの速さ、それによって蓄えられる魔力の量は無視できないだと思う。
その魔力が魔族に与えられ、神々に向けられる事を恐れたのだろう」
「父上、人界の神々は人族に味方してくれるのでしょうか。
それとも同じ神々のよしみで魔界の神々に味方するのでしょうか」
オードリーが素直にルーパスに不安を口にした。
この二年の月日と親になった事で、ルーパスの気持ちや行動も多少は理解できるようになっていた。
「全く分からない。
大魔王の言うことは全く信用でしないが、準備だけはしなければいけない。
最悪の状況、魔界と人界の神々が力を合わせて襲ってくる想定でだ」
「分かりましたは、では私は前もって決めていた手順に従って避難させます」
ミネルバはそう言うと人界中に使い魔を放った。
使い魔という表現では飛行して相手に伝言を伝えるように感じられるが、実際には一瞬で相手のいる場所にまで転移して伝えるのだ。
ルーパス達はずっと魔界の神々が、いや、大魔王も含めた敵が人界に攻め込んできた時の対応策を準備していた。
当然人界を防御魔法陣で護るのだが、その魔力を発見した無数の世界から供給させる魔法陣を構築していた。
とはいっても全ての世界とつなげられたわけではなく、魔力を集められる量と移動で消費霧散する魔力の量が釣り合う世界だけだ。
それ以外の世界は、労働用使い魔を送って魔晶石に蓄えた魔力を運んできている。
「では私は人界の戦士達を招集します」
グレアムが選び抜かれた人族で編制した軍隊を率いて敵を迎え討とうとした。
「待ってください、私も一緒に行きます」
妊娠中のオードリーがついていこうとする。
「駄目だ、絶対に駄目だ。
オードリーが魔界の神ごときに負けるとは思わないが、お腹のこともに悪影響があってはいけないから、今回は城で待っていてくれ」
「嫌です、絶対に嫌です、もう待つのだけは嫌です」
「オードリーが不安になるのは当然だと思う。
だけど大丈夫だよ。
アラステアが絶対に俺を死なせないし、寄り道もさせないから」
「そうですよ、なにがあっても私がグレアムを強制転移させますから。
オードリーはミネルバと城で待っていればいいのですよ」
アラステアがオードリーに安全を保障する。
「そうですよ、オードリー。
今度は私がずっと側にいますから、安心していいのですよ」
ミネルバもアラステアと一緒にオードリーを安心させようとする。
魔界より先に人界を攻め滅ぼすかもしれん。
人界を覆う結界を張れ」
全く唐突に大魔王から連絡が来たのは、前回の会談から二年後だった。
人界にとっては二年というのはそれなりの月日である。
オードリーとミネルバが二人揃って出産して次の子を身籠るくらいに。
だが魔界にとっては数日から十数日でしかない。
「ルーパス、これは一体どういうことなのかしら。
大魔王が何か謀略を仕掛けようとしているのかしら」
ミネルバがもっともな心配をした。
「確かにその可能性は皆無ではない。
だが恐らくは魔界の神々が人界を恐れたのだと思う。
魔界の神々にとっても、人界の時の流れの速さ、それによって蓄えられる魔力の量は無視できないだと思う。
その魔力が魔族に与えられ、神々に向けられる事を恐れたのだろう」
「父上、人界の神々は人族に味方してくれるのでしょうか。
それとも同じ神々のよしみで魔界の神々に味方するのでしょうか」
オードリーが素直にルーパスに不安を口にした。
この二年の月日と親になった事で、ルーパスの気持ちや行動も多少は理解できるようになっていた。
「全く分からない。
大魔王の言うことは全く信用でしないが、準備だけはしなければいけない。
最悪の状況、魔界と人界の神々が力を合わせて襲ってくる想定でだ」
「分かりましたは、では私は前もって決めていた手順に従って避難させます」
ミネルバはそう言うと人界中に使い魔を放った。
使い魔という表現では飛行して相手に伝言を伝えるように感じられるが、実際には一瞬で相手のいる場所にまで転移して伝えるのだ。
ルーパス達はずっと魔界の神々が、いや、大魔王も含めた敵が人界に攻め込んできた時の対応策を準備していた。
当然人界を防御魔法陣で護るのだが、その魔力を発見した無数の世界から供給させる魔法陣を構築していた。
とはいっても全ての世界とつなげられたわけではなく、魔力を集められる量と移動で消費霧散する魔力の量が釣り合う世界だけだ。
それ以外の世界は、労働用使い魔を送って魔晶石に蓄えた魔力を運んできている。
「では私は人界の戦士達を招集します」
グレアムが選び抜かれた人族で編制した軍隊を率いて敵を迎え討とうとした。
「待ってください、私も一緒に行きます」
妊娠中のオードリーがついていこうとする。
「駄目だ、絶対に駄目だ。
オードリーが魔界の神ごときに負けるとは思わないが、お腹のこともに悪影響があってはいけないから、今回は城で待っていてくれ」
「嫌です、絶対に嫌です、もう待つのだけは嫌です」
「オードリーが不安になるのは当然だと思う。
だけど大丈夫だよ。
アラステアが絶対に俺を死なせないし、寄り道もさせないから」
「そうですよ、なにがあっても私がグレアムを強制転移させますから。
オードリーはミネルバと城で待っていればいいのですよ」
アラステアがオードリーに安全を保障する。
「そうですよ、オードリー。
今度は私がずっと側にいますから、安心していいのですよ」
ミネルバもアラステアと一緒にオードリーを安心させようとする。
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