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第一章
第39話:旅程11
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「ウッオオオオオオ」
雄叫びと共にグレアムが突っ込んだ。
何としても吸血女を殺すという決意が全身から発せされていた。
冷酷な表情や態度でグレアム達を下に見ているだけだった吸血女が、わずかにたじろぎ後ろに下がろうとするほどの決意だった。
グレアムの怒りが通常以上の力を出させたのかもしれない。
普段は身体の負担を考えて制限されている能力が解放されたのかもしれない。
この戦いで最高の速さの左突きが女の顔を狙って突き出された。
吸血女はギリギリ避けようとしたが、間に合わずにザックリと頬を斬り裂かれた。
だがそれだけではなかった。
グレアムは続けて限界以上の速さと力で身体を捻り、右剣を振り下ろした。
早く鋭く力強い一撃が強固な吸血女の首を一刀両断した。
吸血女の首が血を引きながら宙を舞う。
だがその代償は大きすぎた。
グレアムの身体中の筋肉が所々断裂してしまった。
グッオオオオオオオ
主人である吸血女が殺されたのを見た巨躯男が怒りの咆哮を放つ。
迎え討とうとしたグレアムだったが、もう力が入らない。
断裂してしまった筋肉は元に戻らない。
それでも闘志は失われず、ガクガクの状態で振り向き迎え討とした。
ヒッヒッヒィイイイ
バビエカの助けが間に合ったのだ。
巨躯男の背後から渾身の両前脚蹴りを叩きつけた。
怒りでグレアムしか見えていなかった巨躯男には完全な不意討ちになった。
巨躯男は吹き飛んで宙を舞った。
だがバビエカの怒りはその程度では晴れなかった。
主人であるグレアムが目に見えない傷を負っている事に気がついていた。
盟友で戦友でもあるスタリオンが瀕死の重傷なのにも気がついていた。
激怒しているバビエカは宙を舞う巨躯男を追撃し、更に両前脚の蹴りを入れた。
巨躯男は抵抗する事もできず、大木を薙ぎ倒しながら飛んでいった。
ヒッヒッヒィイイイ
バビエカは全身に力が入らなくなったグレアムに近寄ろうとした。
「俺は大丈夫だ、スタリオンの方を見てやってくれ。
いや、俺も見よう」
グレアムは力の入らない身体でガクガクしながらスタリオンを介抱しようとした。
手持ちの治療薬で治せるとは思えないかったが、一縷の希望を持って近づいた。
脚を折った馬は安楽死させるしかない。
いや、骨折を治せる治癒術師がいれば助ける事はできる。
だが残念ながらここに治癒術師はいないし、グレアムは治癒術が使えない。
グレアムはこの時ほど治癒術が使えない事を情けなく思った事はなかった。
グレアムはひと安心していたが、困った問題があった。
グレアムの雄叫びを聞いたラムレイが、オードリー嬢の乗った荷車を曳きながら戻ってくる途中だったのだ。
スプマドールも一緒に戻ろうとしていたのだ。
雄叫びと共にグレアムが突っ込んだ。
何としても吸血女を殺すという決意が全身から発せされていた。
冷酷な表情や態度でグレアム達を下に見ているだけだった吸血女が、わずかにたじろぎ後ろに下がろうとするほどの決意だった。
グレアムの怒りが通常以上の力を出させたのかもしれない。
普段は身体の負担を考えて制限されている能力が解放されたのかもしれない。
この戦いで最高の速さの左突きが女の顔を狙って突き出された。
吸血女はギリギリ避けようとしたが、間に合わずにザックリと頬を斬り裂かれた。
だがそれだけではなかった。
グレアムは続けて限界以上の速さと力で身体を捻り、右剣を振り下ろした。
早く鋭く力強い一撃が強固な吸血女の首を一刀両断した。
吸血女の首が血を引きながら宙を舞う。
だがその代償は大きすぎた。
グレアムの身体中の筋肉が所々断裂してしまった。
グッオオオオオオオ
主人である吸血女が殺されたのを見た巨躯男が怒りの咆哮を放つ。
迎え討とうとしたグレアムだったが、もう力が入らない。
断裂してしまった筋肉は元に戻らない。
それでも闘志は失われず、ガクガクの状態で振り向き迎え討とした。
ヒッヒッヒィイイイ
バビエカの助けが間に合ったのだ。
巨躯男の背後から渾身の両前脚蹴りを叩きつけた。
怒りでグレアムしか見えていなかった巨躯男には完全な不意討ちになった。
巨躯男は吹き飛んで宙を舞った。
だがバビエカの怒りはその程度では晴れなかった。
主人であるグレアムが目に見えない傷を負っている事に気がついていた。
盟友で戦友でもあるスタリオンが瀕死の重傷なのにも気がついていた。
激怒しているバビエカは宙を舞う巨躯男を追撃し、更に両前脚の蹴りを入れた。
巨躯男は抵抗する事もできず、大木を薙ぎ倒しながら飛んでいった。
ヒッヒッヒィイイイ
バビエカは全身に力が入らなくなったグレアムに近寄ろうとした。
「俺は大丈夫だ、スタリオンの方を見てやってくれ。
いや、俺も見よう」
グレアムは力の入らない身体でガクガクしながらスタリオンを介抱しようとした。
手持ちの治療薬で治せるとは思えないかったが、一縷の希望を持って近づいた。
脚を折った馬は安楽死させるしかない。
いや、骨折を治せる治癒術師がいれば助ける事はできる。
だが残念ながらここに治癒術師はいないし、グレアムは治癒術が使えない。
グレアムはこの時ほど治癒術が使えない事を情けなく思った事はなかった。
グレアムはひと安心していたが、困った問題があった。
グレアムの雄叫びを聞いたラムレイが、オードリー嬢の乗った荷車を曳きながら戻ってくる途中だったのだ。
スプマドールも一緒に戻ろうとしていたのだ。
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