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第一章
第21話:奇跡
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「ぐっはっ」
グレアムは大量の吐血をした。
オードリー嬢を抱き起していた事で、避ける事も逃げる事もできなかった。
オードリー嬢に衝撃を与えないようにその場で踏ん張った。
鋼鉄製の完全鎧も踏ん張った状態ではミノタウロスの剛力には耐えられない。
鎧の背中部分に大きな亀裂が入り、グレアムの背中が断ち裂かれた。
それでもオードリー嬢に少しの衝撃の与えないように踏ん張った。
グレアムにはもう戦う力が残されていなかった。
気力でどうこうできる状態ではなかった。
毒が完全にまわって筋肉が麻痺している。
ミノタウロスの一撃で背骨が折れ神経が傷ついている。
だがその状態であってもオードリー嬢を助けるという決意は変わらなかった。
自分が戦えなくてもオードリー嬢が助かる方法を考えた。
味方は庭で待つ愛馬達しかいない。
公爵邸の中を戦って庭まで下りるのは不可能だ。
いや、ミノタウロスから逃れる事すら不可能だ。
だったら窓から飛び降りればいい。
最後の力を振り絞って窓から飛び降りて自分が下になれば、オードリー嬢だけは助けられるかもしれないとグレアムは考えた。
一瞬の間にそう考えたが、ミノタウロスも何もしていない訳ではない。
二撃目を加えようと剣を振りかぶっていた。
毒に犯されたグレアムの身体では、ミノタウロスの二撃目を受ける前に窓から飛び降りる事など不可能だった。
グレアムの願いも虚しく二人ここで死ぬのかと思われた時、守護石が発動した。
オードリーの想いで変質した守護石が、守護石を創り出したルーパスが想像もしていなかった事を行った。
オードリーを護ろうとしていたグレアムも一緒に護ったのだ。
ルーパスが創り出した時にはオードリーしか護らない仕様だったのに、オードリーを護ろうとする者も護る仕様になっていた。
一瞬でグレアムの傷が全て癒された。
折られた背骨も、傷ついた脊髄神経も、今まで受けた刀傷や打撲も、ホーネットマンから受けだ毒による筋肉と神経の損傷まで完全に癒された。
グレアムが状況を理解していたら、今までの考えを変えてミノタウロスと戦っていただろうが、グレアムには自分が癒されたという自覚がない。
だから癒される前に考えていた事を反射的にやってしまった。
ミノタウロスの一撃を避けて、もしくは受けてでも、オードリー嬢を庇って窓から飛び降りるという想い。
自分が下になってオードリー嬢が地面に叩きつけられないようにする。
それが何も考えることなくできてしまった。
以前のグレアムなら避けられなかった速さの一撃を、楽々と避けて窓から飛び出すことができた。
グレアムは大量の吐血をした。
オードリー嬢を抱き起していた事で、避ける事も逃げる事もできなかった。
オードリー嬢に衝撃を与えないようにその場で踏ん張った。
鋼鉄製の完全鎧も踏ん張った状態ではミノタウロスの剛力には耐えられない。
鎧の背中部分に大きな亀裂が入り、グレアムの背中が断ち裂かれた。
それでもオードリー嬢に少しの衝撃の与えないように踏ん張った。
グレアムにはもう戦う力が残されていなかった。
気力でどうこうできる状態ではなかった。
毒が完全にまわって筋肉が麻痺している。
ミノタウロスの一撃で背骨が折れ神経が傷ついている。
だがその状態であってもオードリー嬢を助けるという決意は変わらなかった。
自分が戦えなくてもオードリー嬢が助かる方法を考えた。
味方は庭で待つ愛馬達しかいない。
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いや、ミノタウロスから逃れる事すら不可能だ。
だったら窓から飛び降りればいい。
最後の力を振り絞って窓から飛び降りて自分が下になれば、オードリー嬢だけは助けられるかもしれないとグレアムは考えた。
一瞬の間にそう考えたが、ミノタウロスも何もしていない訳ではない。
二撃目を加えようと剣を振りかぶっていた。
毒に犯されたグレアムの身体では、ミノタウロスの二撃目を受ける前に窓から飛び降りる事など不可能だった。
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オードリーの想いで変質した守護石が、守護石を創り出したルーパスが想像もしていなかった事を行った。
オードリーを護ろうとしていたグレアムも一緒に護ったのだ。
ルーパスが創り出した時にはオードリーしか護らない仕様だったのに、オードリーを護ろうとする者も護る仕様になっていた。
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グレアムが状況を理解していたら、今までの考えを変えてミノタウロスと戦っていただろうが、グレアムには自分が癒されたという自覚がない。
だから癒される前に考えていた事を反射的にやってしまった。
ミノタウロスの一撃を避けて、もしくは受けてでも、オードリー嬢を庇って窓から飛び降りるという想い。
自分が下になってオードリー嬢が地面に叩きつけられないようにする。
それが何も考えることなくできてしまった。
以前のグレアムなら避けられなかった速さの一撃を、楽々と避けて窓から飛び出すことができた。
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