10 / 91
第一章
第10話:蘇生と復讐
しおりを挟む
オードリーの命の灯が消えようとした時、守護石が解放された。
大賢者に匹敵する魔力を十六年間蓄えた守護石が解放されたのだ。
即座に毒が中和された。
オードリーの身体が完全に修復された。
普通なら食べた物を使って身体を修復する。
身体に余力がない者はどれほどの高度な治癒魔術を使われても治らない。
それがこの世界の常識だった。
体力のない者に治癒魔術をかける時は、その前に食事をさせるのだ。
そういう意味では餓死寸前のオードリーに自分の身体を癒す余力はない。
だが大賢者ルーパスの残した守護石はこの世界の常識を外れていた。
周囲のモノを取り込み再構成してオードリーに取り込んだ。
口から取り入れなくても皮膚から必要なモノを取り込んだ。
そのお陰で本来のオードリーが持っているはずだった健康な身体になった。
だが心身ともに激しく消耗していたオードリーはそのまま昏々と眠り続けた。
第一の封印を解放してオードリーを完治させた守護石は、第二の封印を解放した。
『我が愛するオードリーを殺した恩知らず共。
断じてお前達を許さない。
生れてきたことを後悔するほどの地獄に叩き落としてやる』
大賢者ルーパスが仕込んでいた宣戦布告が大陸中の王侯貴族に伝わった。
彼らは勇者達が死んだと思っていたことが間違いだと悟った。
同時に自分達が魔族の再侵攻に備えるあまり、オードリーを忘れていた事をようやく思い出した。
オードリーは病弱でフィアル公爵家で静養していると聞いていた。
イルフランド王家の言葉を鵜呑みにして、確かめなかった事を後悔した。
いや、彼らもデイヴィッド国王とフィアル公爵が下劣で信用できない事は知っていたから、オードリーがどのような扱いを受けているのか半ば分かっていた。
分かっていて放置していたのだ。
彼らはその報いを受けた。
大賢者ルーパスが魔族から人を護るために造った魔法陣が自壊した。
修理など不可能なように粉々に自壊した。
魔族が魔界からこの世界に攻め込むために開いた魔界門が再び開いたのだ。
大陸各国に魔獣や魔蟲が溢れ出した。
魔族ほどではないものの、民が戦って勝てるような存在ではなかった。
大賢者ルーパスの宣戦布告は、当然イルフランド王家とフィアル公爵家にも伝わり、彼らを大混乱させた。
急いで対策をとろうとしても大賢者ルーパスがどこにいるかもわからない。
形振り構わず偽りの土下座をして詫びたくても相手がいない。
守護石は第三の封印を解放した。
オードリーの恨みを果たすために魔力を使った。
当然最初の相手はオードリーが最初に呪った相手、王太子のジェイムズだった。
大賢者に匹敵する魔力を十六年間蓄えた守護石が解放されたのだ。
即座に毒が中和された。
オードリーの身体が完全に修復された。
普通なら食べた物を使って身体を修復する。
身体に余力がない者はどれほどの高度な治癒魔術を使われても治らない。
それがこの世界の常識だった。
体力のない者に治癒魔術をかける時は、その前に食事をさせるのだ。
そういう意味では餓死寸前のオードリーに自分の身体を癒す余力はない。
だが大賢者ルーパスの残した守護石はこの世界の常識を外れていた。
周囲のモノを取り込み再構成してオードリーに取り込んだ。
口から取り入れなくても皮膚から必要なモノを取り込んだ。
そのお陰で本来のオードリーが持っているはずだった健康な身体になった。
だが心身ともに激しく消耗していたオードリーはそのまま昏々と眠り続けた。
第一の封印を解放してオードリーを完治させた守護石は、第二の封印を解放した。
『我が愛するオードリーを殺した恩知らず共。
断じてお前達を許さない。
生れてきたことを後悔するほどの地獄に叩き落としてやる』
大賢者ルーパスが仕込んでいた宣戦布告が大陸中の王侯貴族に伝わった。
彼らは勇者達が死んだと思っていたことが間違いだと悟った。
同時に自分達が魔族の再侵攻に備えるあまり、オードリーを忘れていた事をようやく思い出した。
オードリーは病弱でフィアル公爵家で静養していると聞いていた。
イルフランド王家の言葉を鵜呑みにして、確かめなかった事を後悔した。
いや、彼らもデイヴィッド国王とフィアル公爵が下劣で信用できない事は知っていたから、オードリーがどのような扱いを受けているのか半ば分かっていた。
分かっていて放置していたのだ。
彼らはその報いを受けた。
大賢者ルーパスが魔族から人を護るために造った魔法陣が自壊した。
修理など不可能なように粉々に自壊した。
魔族が魔界からこの世界に攻め込むために開いた魔界門が再び開いたのだ。
大陸各国に魔獣や魔蟲が溢れ出した。
魔族ほどではないものの、民が戦って勝てるような存在ではなかった。
大賢者ルーパスの宣戦布告は、当然イルフランド王家とフィアル公爵家にも伝わり、彼らを大混乱させた。
急いで対策をとろうとしても大賢者ルーパスがどこにいるかもわからない。
形振り構わず偽りの土下座をして詫びたくても相手がいない。
守護石は第三の封印を解放した。
オードリーの恨みを果たすために魔力を使った。
当然最初の相手はオードリーが最初に呪った相手、王太子のジェイムズだった。
516
お気に入りに追加
4,741
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?
リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。
だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。
世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何?
せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。
貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます!
=====
いつもの勢いで書いた小説です。
前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。
妹、頑張ります!
※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる