妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全

文字の大きさ
上 下
22 / 26

21話

しおりを挟む
「……まだ子供を作られないのですか?」

「もう少し検証を重ねないといけないからね。
 事は貞操にかかわる名誉の問題だ。
 失敗しましたではすまされないよ」

 私の質問にアルフレット様が真摯に答えてくださいます。
 私としても、度胸の必要な質問でした。
 私が質問することで、アルフレット様の背中を押してしまうかもしれません。
 そんな事になれば、私の心は張り裂けてしまったかもしれません。
 嫉妬に狂って、取り返しのつかない事をしでかしてしまったかもしれません。

 ですが、ありがたいことに、アルフレット様は否定してくださいました。
 この事に関しては、アスキス家とアルフレット様の考えが全く違いました。
 アルフレット様は、古代魔法時代の貞操観念なのです。
 男女の情愛に関しては、とても厳しい倫理観をお持ちです。
 夫婦の魔力の高さによって、子供の魔力が決まるので、そういう感覚になっていたのだと思います。

 特に問題だったのは、女性の方の魔力により影響されるという事です。
 つまりアルフレット様とアスキス家の女性との間に生まれる子供は、魔力のない女性の影響が強いということです。
 これはとても大きな問題でしたが、魔鼠の実験では特に問題はなかったのです。

「魔鼠の魔力はとても少ない。
 だから父親の魔力が減退することなく、子供に伝わった可能性がある。
 魔力の強い魔獣の父親でも、魔鼠程度の魔力しか伝わらない可能性がある。
 もっと魔力が強い魔獣でも、子供に伝わるかどうか、確認する必要があるんだよ」

 アルフレット様と私は、不安を解消するために、実験を繰り返しました。
 魔鼠から魔兎、魔兎から魔鼬、魔鼬から魔狗と実験しました。
 残念ですが、魔鼬あたりから、父親の魔力が全て伝わらなくなりました。
 その時は、どうしようもない不安がありました。
 魔狗であろうと、減退した魔鼬の魔力しか伝わらない恐れがあったからです。

 ですが、ありがたい事に、その心配は直ぐに払拭されました。
 確かに減退魔鼬程度の魔力しか伝わっていない子魔狗も生まれましたが、多くは一定割合に魔力を持つ子魔狗でした。
 これはとても希望を持てる結果でした。

 アルフレット様と私は、更に実験を繰り返しました。
 魔狗から魔豹、魔豹から魔虎、魔虎から魔猪、魔猪から魔鹿と実験を進めました。
 そこで得られた情報は、最悪の場合でも、父親となる魔力持ちの一割の魔力が伝わり、最高でも三割の魔力が伝わるというモノでした。
 古代魔法時代では、母親の魔力の一割から十割だったのを考えれば、魔力器官すらない女性が相手でも、魔族の王族であるアルフレット様の一割から三割の魔力が伝わるのなら上出来です。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?

久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ? ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【完結】最後に貴方と。

たろ
恋愛
わたしの余命はあと半年。 貴方のために出来ることをしてわたしは死んでいきたい。 ただそれだけ。 愛する婚約者には好きな人がいる。二人のためにわたしは悪女になりこの世を去ろうと思います。 ◆病名がハッキリと出てしまいます。辛いと思われる方は読まないことをお勧めします ◆悲しい切ない話です。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ
恋愛
この話は 『内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』 の続編です。 アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。 そして、アイシャを産んだ。 父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。 ただアイシャには昔の記憶がない。 だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。 アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。 親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。 アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに…… 明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。 アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰? ◆ ◆ ◆ 今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。 無理!またなんで! と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。 もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。 多分かなりイライラします。 すみません、よろしくお願いします ★内緒で死ぬことにした の最終話 キリアン君15歳から14歳 アイシャ11歳から10歳 に変更しました。 申し訳ありません。

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

処理中です...