妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全

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20話

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「焦る必要なないよ。
 もう何千何万年も前の事だ。
 一年や二年遅れるよりも、失敗して灰にしてしまう方が心配だ。
 必ず一度で成功させるんだ。
 少なくともその覚悟で準備するんだ」

「はい、アルフレット様」

 アルフレット様が私を安心させてくれます。
 死んだ魔族を灰にしてしまおうかと考えて半年です。
 アルフレット様が常に私に声をかけてくださいます。
 私の醜い気持ちに気がついているのかもしれません。
 なんといっても私の養い親なのです。

 だからつい甘えてしまます。
 何かについて甘えてしまいます。
 常にアルフレット様の側から離れないようにしています。
 アルフレット様もそれを許してくださいます。
 不意に抱き着いても許してくださいます。

 生まれ変わって、姿形が全く別人なのに、養い子として甘やかしてくれます。
 私は独り立ちする気など毛頭ありません。
 甘やかせてもらえるのなら、徹底的に甘えるだけです。
 抱き着いて頬ずりしてキスをします。

 女としてキスしたいのですが、さすがにその度胸がでません。
 もし女としてキスしようとして、拒否されたら立ち直れません。
 そして、もう、アルフレット様の側にいられられなくなります。
 それだけは絶対に嫌です。
 それだけは耐えられません。

 だから、子供として親愛のキスに止めています。
 もしかしたら、私の気持ちは読まれているかもしれません。
 いえ、読まれていると思った方がいいです。
 英知の塊のようなアルフレット様です。
 私の表情と態度で、全てを察しておられるはずです。

 それで何も言葉にされない。
 抱いてくださらないという事は、女と見て貰えていないのです。
 養い子として愛してくださっているのは確かです。
 間違っても嫌われているような事はありません。
 それだけは自信を持って言えます。
 でも、女性としては見て貰えていません。
 その現実が、辛く哀しいです。

 それに比べて、アスキス家の人達は恵まれています。
 卑しい心だと理解はしていますが、妬ましく羨ましいく思ってしまいます。
 アスキス家の女性が、アルフレット様の子供を生む話が進んでいます。
 アルフレット様の私の実験が、その話を進めてしまいました。
 アルフレット様がされた実験は、復活させた魔力器官のある魔鼠と、魔力器官をもたない現代の魔鼠の交配でした。

 その実験は成功しました。
 間に生まれた魔鼠に魔力器官があったのです。
 魔力器官の無い魔鼠と、魔力器官の有る魔鼠の間には、魔力器官の有る子供が生まれるという結果が出たのです。
 アルフレット様とアスキス家の女性の間に生まれた子は、魔力器官をもつ可能性が高いのです。
 私は、アスキス家の女性に嫉妬しています。
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