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14話

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「やあ、久し振りだね。
 転生したのかい?」

「私の事が分かるのですか?
 こんなに姿形が変わっていても、私の事が分かるのですか?」

「ああ、分かるよ。
 大切な養い子の事を忘れるわけないじゃないか。
 姿形が変わろうと、魂の形は理解できるよ。
 まあ、記憶をとどめているとどうかは別だけど、その表情を見れば、私の事を覚えてくれているのは一目瞭然だったからね」

 うれしかったです。
 リリーの事を忘れ、その場で号泣してしまいました。
 アルフレットが私の事を覚えてくれていました。
 いえ、覚えていたのではありませんね。
 私は生まれ変わっているのです。
 でもその生まれ変わった魂を、覚えてくれているのです。

「ちょっと泣き止みそうにないな。
 すまないね、君」

「あの、ええと、気にしないでください」

「君の名前はなんていうんだい。
 どうやら魔族のようだね」

「あ、はい。
 アスキス家のリリーといます」

「リリー・アスキスさんだね。
 覚えたよ。
 家族はいるのかい?」

「はい、祖父と祖母、父と母と叔母、兄弟と従兄弟で暮らしています」

「そうかい。
 他の魔族は何人くらいいるんだい」

「……私達だけです」

「ごめん、ごめんね、リリー。
 取り乱してしまったわ。
 あとは私が話すわ」

 私はようやく冷静になれました。
 いえ、ならなければいけないと思ったのです。
 情けない話ですが、理由は嫉妬です。
 泣きじゃくる私を、優しく抱いて慰めくださるアルフレット様に甘えていたのですが、リリーがアルフレット様と親しく話すのが許せなかったのです。
 私は自分で思っていた以上に心が狭かったようです。

 私は今までの事を正確に話しました。
 私だけではできなかったことも、アルフレット様と一緒ならできるはずです。
 アルフレット様に不可能なことなどありません。
 でもそのためには、正確な情報が必要になります。
 だから全く関係がないと思われる、今生の私的な事も話しました。

 まあ、欲望に任せて話したのも確かです。
 少しでも長くアルフレット様と話したかったのです。
 今の私を知って欲しいと言う欲望があったのです。
 イヴリンと言う名の妹に陥れられたことも、ジェイコブと言う名の婚約者に裏切られた事も、今後の魔族復活には何の関係もないことです。

 それなのに事細かく話してしまいました。
 自分が思っていた以上に傷ついていたのかもしれません。
 アルフレット様に同情して欲しかったのかもしれません。
 アルフレット様は全部聞いて下さいました。
 途中で眠くなったリリーと三人で食事をとりながら、リリーを眠らせてからも、事細かに話し続けました。
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