妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全

文字の大きさ
上 下
10 / 26

9話

しおりを挟む
「次はこの魔術書を使ってもらいます。
 オリビアさん、お願いします」

「はい!」

 アスキス家の祖母オリビアさんさんが張り切っています。
 夫のジョージさんが魔術を発現できたので、気合が入っているのでしょう。
 眼がキラキラしています。
 さっきまで餓死しかけていたとは思えません。
 
 さて今度の魔術書ですが、初級下の光魔法で。
 各地で色々な呼び名で使われていました。
 一般的にはライトと呼ばれる魔術です。
 戦いでも意表を突くために使う事もありますが、一般的にはダンジョンで使ったり、夜の明かりに使う魔術です。
 これからも洞窟で暮らすなら、必要な魔法です。

「うわああああ!」

 よほど驚いたのでしょう。
 オリビアさんが女性とは思えない声をあげています。
 意表を突かれたのでしょう。
 
「眩しい!」
「光だ!」
「明かりだ!」

 子供たちが騒いでいます。
 ずっと暗い洞窟で暮らしていたので、光に慣れていないのでしょう。
 ちょっとやり過ぎました。
 急いで風魔法を発現させて、洞窟の奥に移動させ、眩しさを調節しました。

「ごめんなさい。
 ちょっと眩し過ぎましたね。
 眼が慣れるまでは、遠くに発現させてください。
 次はハリーさんにお願いしますね」

「はい、楽しみです!」

 リリーの父親で、一家の大黒柱、ハリーさんの順番です。
 ハリーさんには、生物が生きていく上で絶対必要なモノ、水を創ってもらいます。
 創るとはいっても、初級下の水魔法ですから、量はほんの少しです。
 創り方も、空気中の水分や土中の水分を集めるだけです。
 だがら浄化された水ではありません。
 浄化された水を空気中の組成から創り出すのは、とても難しく大量の魔力が必要になります。
 魔晶石に頼る現状では、魔力がもったいなくて使えません。

「うわ!
 凄い!
 本当に水が呼び出された!」

「よく聞いておいてください。
 この水は近くの水を集めてきただけです。
 飲み水がまだある状態で使うと、水を移動させただけになります。
 飲み水がなくなるか、貯水壺から離れた場所で使ってください。
 それと汚い水の可能性もあります。
 必ず煮沸してから飲んでください」

「「「「「はい」」」」」

 ハリーさんだけでなく、家族全員が勢いよく返事してくれました。
 まるで教師になった気分です。

「カチュア様。
 では今までと同じように、洞窟の奥の雫を集めて飲むのと同じですか?」

 リリーが質問してきます。
 この洞窟に泉はありません。
 でも天井から水滴が落ちてくる場所があります。
 今迄は、外に出て清水を汲めない時に、その水滴、雫を集めて飲料水にしていたようですが、衛生上危険があります。

「そうですね。
 でも水滴を集めたモノを遠くに移動させてからこの魔術書をつかえば、地に落ちて浸み込んだ水を集めることができます。
 今迄のように喉の渇きを我慢しなくても大丈夫になります。
 ですが奇麗な清水ではありません。
 ちゃんと煮沸してから飲んでくださいね」

「「「「「「はい」」」」」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?

久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ? ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

【完結】最後に貴方と。

たろ
恋愛
わたしの余命はあと半年。 貴方のために出来ることをしてわたしは死んでいきたい。 ただそれだけ。 愛する婚約者には好きな人がいる。二人のためにわたしは悪女になりこの世を去ろうと思います。 ◆病名がハッキリと出てしまいます。辛いと思われる方は読まないことをお勧めします ◆悲しい切ない話です。

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです

今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。 が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。 アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。 だが、レイチェルは知らなかった。 ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。 ※短め。

【完結】私の馬鹿な妹~婚約破棄を叫ばれた令嬢ですが、どうも一味違うようですわ~

鏑木 うりこ
恋愛
 エリーゼ・カタリナ公爵令嬢は6歳の頃からこの国の王太子レオールと婚約をしていた。 「エリーゼ・カタリナ!お前との婚約を破棄し、代わりに妹のカレッタ・カタリナと新たに婚約を結ぶ!」  そう宣言されるも、どうもこの婚約破棄劇、裏がありまして……。 ☆ゆるっとゆるいショートになります( *´艸`)ぷくー ☆ご都合主義なので( *´艸`)ぷくーと笑ってもらえたら嬉しいなと思います。 ☆勢いで書きました( *´艸`)ぷくー ☆8000字程度で終わりますので、日曜日の暇でも潰れたら幸いです( *´艸`)

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

処理中です...