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第一章

第41話:夕食の食べ過ぎ

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 別に料理が趣味という訳ではないが、美味しく食べてもらえるとうれしい。
 無邪気な可愛い女の子におねだりされると、つい、かなえてあげたくなる。

 時間は夕刻、主食の麦飯は熱々だ。
 冷めた麦飯だと、熱々の汁物がいいのだが、熱々の麦飯となると……

 残念だが俺に大したレパートリーはない。
 ごくありふれた家庭料理、それも男が作るような炒め物や焼物ばかり。
 俺の知っている果物や野菜を使った美味しいレシピは……

丹波篠山山の芋3kg(約6~9個)=7056円×10=70560円
訳あり長芋10kg=3580円×10=35800円

 電気があるから、電動の奴を買ってもいいのだが、班ごとに自分達でやれるようになった方が良いだろう。

 千切り&おろし両方1089円×200個=21780円

「いいか、この丸い野菜と長い野菜の皮をはぐんだぞ。
 はいだ後で、この道具で、このようにすりおろすんだ」

 最初だけ手本を見せた。
 班ごとに手分けしてやれるようにした。
 直ぐに次の買い物をして、手の空いている者に他の事をさせないといけない。

 う~ん、前回買った10リットルサイズの業務用は使い難かった。
 一人一人に調味料入れを買い与えて、順番に汲み取るようにさせてもいいが、それだと700人の行列ができてしまう。

 とは言っても、1・8リットルサイズにペットボトル入りを6本買っても、行列が100人少しに代わるだけだし、どうする?

 班ごとに1本与えるのが一番楽か?
 そうしておかないと、これから何度も同じ事が来り返される。

 割烹関西白だしつゆ1800ml×3本=3540円×50=177000円
 割烹関西白だしつゆ10L×2本=11708円×=10=117080円

「これは班ごとに1個だからな、使い切ったら、この大きい奴から汲め。
 放り出して置いたら痛むから、食事ごとに回収するぞ。
 使う量で喧嘩した班は、十日間は肉だけの食事にする!」

「「「「「はい!」」」」

 女子供、犯罪者奴隷達に関わらず真剣に返事をする。
 飯のレベルを下げられるほど嫌な事はないのだろう。

 醤油は前回買った物がまだ大量に残っている。
 ポン酢や塩、シーズニングなど、個人で味を調節する調味料もそろっている。
 あと買わなければいけないのは……

無添加味付け海苔8切160枚2袋=1300円×10=13000円
SSサイズ白卵230個と割れ保証=5500円×10=55000円

 海苔は湿気させたら最悪だから、必ず毎食回収しないといけない。
 白だしつうと一緒に回収すればいいだろう。

 あとは山葵か、自分用は本山葵を買うにして、女子供は兎も角、男達にまで高価な本山葵を買ってやる気にはなれない。
 それに、ほとんどの女子供はさび抜きの方が好きだと思う。

 本山葵1本100g前後=5900円×10=59000円
 鮫皮おろし5620円×10=56200円 
 おろし生わさび175g=387円×100=38700円

 大金持ちになって、何でも金に糸目をつけずに買えるのに、何故か送料が気になって、送料免除になるように買ってしまう。

 熱々の麦飯が炊けた。
 山芋も長芋もすりおろせている。
 卵も白身と黄身に分け終わっている。

「いいか、俺の作り方をよく見ておけ。
 護衛の連中は一緒に作ってみろ。
 まずは熱々の麦飯に少しだけ醤油をかける。
 少しだぞ、また後でかけるから、少しだけだぞ。
 すりおろした芋に、このつゆを入れて溶いてから麦飯にかける。
 このように、手でほぐした黒い奴、海苔を振りかける。
 一口喰ってみて……美味い!
 味が物足らなかったら、醤油をかけて……うん、美味い!
 更に、この緑の奴をかけて……う~、利くなぁ~
 これは物凄く辛いから、女子供は使わない方が良いと思うぞ。
 最後に、この卵の黄身を加えて……う~ん、俺は加えない方が好きだな。
 よし、いいぞ、めいめい作ってみろ!」

「「「「「ウォオオオオ」」」」」

「とろろご飯・材料」
麦飯  :150g
長芋  :100g
白つゆ :15ml
わさび :5ml
醤油  :適量
海苔  :適量
卵黄  :1個

 俺が熱々の麦飯に合うと思って作らせたのはとろろご飯だ。
 自分が大好きだから、自信を持って人に勧められる。
 
 ただ、人の好みは千差万別だ。
 気分や体調によって味覚も違ってくる。
 肉も与えているから、無理にとろろご飯にしなくてもいい。

 食べ方も、俺は出汁も醤油も加えず、山芋や長芋の甘さと旨味だけの食べ方が一番好きだが、たっぷりと出汁と醤油を加えて食べたくなる時もある。

 だが、基本は、先に麦飯や白飯に醤油をかけて下味を付け、すりおろしただけの山芋や長芋をかけて食べるのが好きだ。

 生卵はもちろん、刻んだ海苔も葱もない方が好きだ。
 時には醤油ではなく塩をかけた白飯に長芋だけをかけて食べる事もある。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ、優しい甘さと旨さがあるわ!」
「おいしい、これ大好き!」
「なんか、そのままでも美味しい麦飯が、さらに美味しくなっているわ!」
「あまい、なんかこのしろいのおいしい!」

 女子供達が美味しそうに食べている。
 あんなに美味しそうに食べてくれるととろろご飯を選んで良かったと思える。

「うめぇえ、うめぇえ、うめぇえ!」
「うっわぁ、するすると幾らで喰えるぞ!」
「飲みもんだ、これは飯じゃなくて飲みもんだ!」
「まずいぞ、昼の分どころか、朝の分まで喰っちまうぞ!」

 女子供に比べて、男達の食べ方はガサツだ。
 美味いし、つるつるさらさら食べられるから仕方がないが、飲むように食べる。

 食べる速さと量が尋常じゃない。
 このままだと本当に三食分の麦飯を一食で食べ切ってしまうぞ。

「くぅ~!
 鼻の奥に痛みが、痛みが走る!」

「伯爵、あれほど言ったのに、山葵を掛け過ぎましたね?」

「すまん、あまりに美味し過ぎて、徐々に多くなってしまった。
 それにしても、この美味しさは異常だぞ!
 食べ過ぎないようにと思っていたのに、これで四杯目だ!

「少しは肉も食べたらどうです?
 俺が保管するから腐らないとは言っても、超希少品のローストベアーですよ」

「いや、分かっている、分かっているのだが、手が止まらないのだ。
 緑の、そう、山葵という奴の量を変えるだけで、劇的に味が変わる。
 ショウ殿の申される通り、最初は何もかけずに芋と麦飯の味を愉しみ、次につゆを加えた味を楽しむ。
 醤油か塩を加えて強くなった味を愉しみ、最後に山葵で劇的に変わった味を愉しんだら、また最初から食べたくなって止められないのだ!」

 毒見役が射貫くような目で山葵を見ている。
 こいつは、最初の一口しか食べられていない。
 つゆや醤油、山葵を加えた時の美味しさを知らないからなぁ~

 だが、もっと可哀想なのは護衛の連中だ。
 さっきから何度も生唾を飲み込んでいる。
 唯一の救いは、伯爵がとんでもなく早食いしている事だ。

 見るな、絶対に視線を向けるな。
 考えるな、絶対に想像もするな。

 食べる物が不味くなるだけじゃすまない。
 後味まで悪くなってしまう!
 ポルトスの糞野郎が!

 肉だ、俺は肉の方が大好きなのだ!
 まだ使っていないサーロインがある。
 あれを肉厚に切ってステーキにする。

 先に麦飯を食べてしまったが、まだまだ腹が空いている。
 1キロや2キロくらいの肉ならペロリと食べられる。
 肉なら、後味がマヨネーズになっても気分が悪くなったりしない。

「ショウ殿、私がこのような事を口にするのは差し出がましいのだが、彼らにもう一日分の麦を渡してやってもらえないだろうか?
 先ほど振るまってくれた、とろろご飯。
 あのような物を食べてしまったら、途中で止まらない気持ちはよく分かる」

「仕方がありませんね。
 俺もあれは禁断の組み合わせだと思いますので、特別に支給します。
 その代わりにいつも以上に働かせますが、それでいいでいな?!」

 最初は情を見せた伯爵に話していたのだが、最後は聞き耳を立てていた女子供や犯罪者奴隷達に言って聞かせた。

「やったぁアアアアア」
「ありがとうございます」
「これで明日も麦飯が食べられるわよ!」
「たべられるの、あしたもむぎめしがたべられるの?」

「「「「「ウォオオオオ!」」」」」
「ショウ様ありがとうございます!」
「働きます、倒れるまで働らかせていただきます!」
「いそげ、いそいで枯れ枝を集めるんだ!」

「しずまれ、今日は何時もと違う仕事をさせるぞ。
 まずはもう一度麦飯を炊いてもらう。
 明日は早立ちだから、朝から麦飯を炊く時間はないぞ!
 今から炊いて明日直ぐに食べられるようにしておけ!」

「「「「「はい!」」」」

「それと、卵、白身が残っているだろう。
 これに砂糖を加えてお菓子を作っておいてもらう。
 いや、お菓子ではなく食事だな。
 今日のように麦飯を食べ過ぎた時のために、代用食を作っておけ」

「「「「「はい!」」」」
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