33 / 39
第一章
32話
しおりを挟む
オリヴィアは王子達に復讐する決断をした。
心の中に昔の優しいさが蘇りつつあり、それに反駁する怨念があるのだ。
それが自分の怨念なのか、他の誰かの怨念なのかは分からない。
それでも、自分の意識が怨念に奪われてしまう恐怖を覚えた。
自分が自分であるうちに、王子達に復讐したかったのだ。
大臣や重臣、騎士達は後回しでも構わない。
王子達に復讐するついでに殺しても構わない。
王子達だけは、自分が自分であるうちに復讐しなければ、今迄生き延びてきた意味がなくなる。
だから急いで王城に乗り込んだ。
いつも通り、王城を魔獣達で厳重に包囲して、恐怖の坩堝に落とした。
「ウォォォォン。
グギャォォォォ。
ガァォォォォォ。
キィィィン。
キャゴォォォ」
夜の闇に紛れて、空を翔けて王城を包囲した魔獣達の雄叫びは、王城を囲むように存在する、王都の民も恐怖の坩堝に落とした。
王都の民は半減していた。
オリヴィアと魔獣の噂が国中に広がっていたからだ。
少しでも余力のある者は、この国を捨てて他国を目指していた。
だが多くの人は、途中で盗賊に襲われ、全てを奪われた上に殺された。
同じ国に住む、より虐げられていた人に襲われ殺された。
殺されなかった人は、奴隷として他国に売り払われた。
盗賊や貴族の中には、他国の悪人と手を組み、奴隷売買や密貿易を行っている者がいるのだ。
逃げそこなった人と、逃げる為の余力のない人が、王都に残っていた。
そんな人達が、自分の家で震えていた。
魔獣に襲われ喰われることを恐れ、ただ震えていた。
だがそれは民だけでなく、王都に住む王侯貴族は勿論、神官や兵士も同じだった。
兵士の中には勇気のある者もいた。
いや、邪悪な心を持って、多くの人を踏み躙ってきたから、勇気と表現するのはおかしいだろう。
蛮勇を持って魔獣の包囲を突破しようとしたのだ。
愚かな事だった。
人間が魔獣に勝てるはずがないのだ。
それも、怨念が取り込まれた知恵のある魔獣だ。
本能だけで、その場で食欲を満たすだけの為に、襲っている訳ではないのだ。
人間を恐怖させるための襲撃が始まった!
魔獣は逃げようとした兵士を叩きのめした。
殺さないように、血管を傷つけず、手加減して叩いた。
手足や胸の骨を粉砕するだけの攻撃をした。
動く事が出来ず、痛みにもがき苦しむだけだった。
中には食糧として喰われる者もいた。
だが殺してはもらえなかった。
もっとも痛みを感じる手足の先を喰い千切られ、その先に泥を塗り、手足が腐る痛みで苦しめようとした。
魔獣に取り込まれた怨念がかつてされた事だった。
そして手足が腐る痛みに苦しむ人間を、王城内に放り込んで、籠城する人間を恐怖に陥れた。
心の中に昔の優しいさが蘇りつつあり、それに反駁する怨念があるのだ。
それが自分の怨念なのか、他の誰かの怨念なのかは分からない。
それでも、自分の意識が怨念に奪われてしまう恐怖を覚えた。
自分が自分であるうちに、王子達に復讐したかったのだ。
大臣や重臣、騎士達は後回しでも構わない。
王子達に復讐するついでに殺しても構わない。
王子達だけは、自分が自分であるうちに復讐しなければ、今迄生き延びてきた意味がなくなる。
だから急いで王城に乗り込んだ。
いつも通り、王城を魔獣達で厳重に包囲して、恐怖の坩堝に落とした。
「ウォォォォン。
グギャォォォォ。
ガァォォォォォ。
キィィィン。
キャゴォォォ」
夜の闇に紛れて、空を翔けて王城を包囲した魔獣達の雄叫びは、王城を囲むように存在する、王都の民も恐怖の坩堝に落とした。
王都の民は半減していた。
オリヴィアと魔獣の噂が国中に広がっていたからだ。
少しでも余力のある者は、この国を捨てて他国を目指していた。
だが多くの人は、途中で盗賊に襲われ、全てを奪われた上に殺された。
同じ国に住む、より虐げられていた人に襲われ殺された。
殺されなかった人は、奴隷として他国に売り払われた。
盗賊や貴族の中には、他国の悪人と手を組み、奴隷売買や密貿易を行っている者がいるのだ。
逃げそこなった人と、逃げる為の余力のない人が、王都に残っていた。
そんな人達が、自分の家で震えていた。
魔獣に襲われ喰われることを恐れ、ただ震えていた。
だがそれは民だけでなく、王都に住む王侯貴族は勿論、神官や兵士も同じだった。
兵士の中には勇気のある者もいた。
いや、邪悪な心を持って、多くの人を踏み躙ってきたから、勇気と表現するのはおかしいだろう。
蛮勇を持って魔獣の包囲を突破しようとしたのだ。
愚かな事だった。
人間が魔獣に勝てるはずがないのだ。
それも、怨念が取り込まれた知恵のある魔獣だ。
本能だけで、その場で食欲を満たすだけの為に、襲っている訳ではないのだ。
人間を恐怖させるための襲撃が始まった!
魔獣は逃げようとした兵士を叩きのめした。
殺さないように、血管を傷つけず、手加減して叩いた。
手足や胸の骨を粉砕するだけの攻撃をした。
動く事が出来ず、痛みにもがき苦しむだけだった。
中には食糧として喰われる者もいた。
だが殺してはもらえなかった。
もっとも痛みを感じる手足の先を喰い千切られ、その先に泥を塗り、手足が腐る痛みで苦しめようとした。
魔獣に取り込まれた怨念がかつてされた事だった。
そして手足が腐る痛みに苦しむ人間を、王城内に放り込んで、籠城する人間を恐怖に陥れた。
12
お気に入りに追加
2,064
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる