26 / 48
第一章
第26話:王都
しおりを挟む
「ひどい、酷過ぎる。なんでこんなことになってしまったの」
ソフィアはあまりの現実に打ちのめされていた。
二人と一龍が辿り着いた王都は破壊の限りを尽くされていた。
王城はもちろん城下の家々も完膚なきまで破壊されていた。
目に入る範囲に生きている人は誰もいなかった。
残っているのは魔獣や魔蟲も舐めとりきれなかった血痕だけだった。
「ソフィア、ここで挫けてどうするんだ。
境界であれほど民を助けると言っていたのは君だよ。
自分の知る王都の民が皆殺しになったからといって、他に民がいない訳じゃない。
王都の向こうにも多くの街や村があるんだよ。
そこに住む民を助ける事こそ聖女の役目だよ」
自分の言葉に矛盾がある事などグレアムにも分かっていた。
助ける事に拘り過ぎるなと言ったり助けろと言ったり、その場その場で言っている事が違い過ぎている。
だが今はこう言わなければソフィアの心が持たないと思ったのだ。
嘘つきと言われても、今はこう言うべきだと思ったのだ。
「よう、どうすんだ、ソフィア。
ソフィアが王都に助けに行けと言ったから王都に来たけど、これでいいのか。
それともまだ魔獣に襲われていない街や村に行った方がいいのか。
俺様としては魔境に方に行ってもっと美味しい竜を探したいんだが」
「あるの、チビちゃん。
急げばまだ助けられる街や村があるの」
打ちのめされていたソフィアだったが、まだ助けられる人がいると聞いて、心を奮い立たせた。
自分の聖女としての存在意義を見出したと言えば大袈裟だが、まだ自分にもやれることがある、助けられる人がいると思い絶望感から抜け出すことができた。
グレアムはそれを見て心底安堵していた。
同時にできるだけソフィアに負担をかけたくないとも思った。
本当にその場その場で考えを変える身勝手な男だった。
グレアムの心にあるのはソフィアだけ、その為なら何時でも考えを変えられた。
「チビちゃん、ソフィアに負担をかけたくないんだ。
一番安全で効率的に民を守る方法はないかな」
グレアムは直接チビちゃんに聞いてみた。
グレアムの従魔でもないチビちゃんが言う事を聞いてくれるはずはない。
普通ならそうなのだが、今までの会話から考えれば期待ができた。
伝説の龍だけあって普通の従魔では期待できない知性と感情があった。
ソフィアのためになると言えば考えてくれたりやってくれたりするかもしれない。
グレアムはそんな期待をしていたのだ。
「そうだな、最速で三連星活動期の影響が及ぶ一番遠くまで行って、その辺で縄張りを主張してから徐々に戻るのがいいかな。
そうすれば魔獣が進む範囲が狭くなるかな」
グレアムの期待は応えられた。
ソフィアはあまりの現実に打ちのめされていた。
二人と一龍が辿り着いた王都は破壊の限りを尽くされていた。
王城はもちろん城下の家々も完膚なきまで破壊されていた。
目に入る範囲に生きている人は誰もいなかった。
残っているのは魔獣や魔蟲も舐めとりきれなかった血痕だけだった。
「ソフィア、ここで挫けてどうするんだ。
境界であれほど民を助けると言っていたのは君だよ。
自分の知る王都の民が皆殺しになったからといって、他に民がいない訳じゃない。
王都の向こうにも多くの街や村があるんだよ。
そこに住む民を助ける事こそ聖女の役目だよ」
自分の言葉に矛盾がある事などグレアムにも分かっていた。
助ける事に拘り過ぎるなと言ったり助けろと言ったり、その場その場で言っている事が違い過ぎている。
だが今はこう言わなければソフィアの心が持たないと思ったのだ。
嘘つきと言われても、今はこう言うべきだと思ったのだ。
「よう、どうすんだ、ソフィア。
ソフィアが王都に助けに行けと言ったから王都に来たけど、これでいいのか。
それともまだ魔獣に襲われていない街や村に行った方がいいのか。
俺様としては魔境に方に行ってもっと美味しい竜を探したいんだが」
「あるの、チビちゃん。
急げばまだ助けられる街や村があるの」
打ちのめされていたソフィアだったが、まだ助けられる人がいると聞いて、心を奮い立たせた。
自分の聖女としての存在意義を見出したと言えば大袈裟だが、まだ自分にもやれることがある、助けられる人がいると思い絶望感から抜け出すことができた。
グレアムはそれを見て心底安堵していた。
同時にできるだけソフィアに負担をかけたくないとも思った。
本当にその場その場で考えを変える身勝手な男だった。
グレアムの心にあるのはソフィアだけ、その為なら何時でも考えを変えられた。
「チビちゃん、ソフィアに負担をかけたくないんだ。
一番安全で効率的に民を守る方法はないかな」
グレアムは直接チビちゃんに聞いてみた。
グレアムの従魔でもないチビちゃんが言う事を聞いてくれるはずはない。
普通ならそうなのだが、今までの会話から考えれば期待ができた。
伝説の龍だけあって普通の従魔では期待できない知性と感情があった。
ソフィアのためになると言えば考えてくれたりやってくれたりするかもしれない。
グレアムはそんな期待をしていたのだ。
「そうだな、最速で三連星活動期の影響が及ぶ一番遠くまで行って、その辺で縄張りを主張してから徐々に戻るのがいいかな。
そうすれば魔獣が進む範囲が狭くなるかな」
グレアムの期待は応えられた。
0
お気に入りに追加
1,538
あなたにおすすめの小説
馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます
白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。
そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。
最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。
『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる