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第1章

第17話:ミルクと卵

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「次はイモを試します、
 ジャガイモとサツマイモ、サトイモとヤマイモを命と思うか試しましょう」

 イワナガヒメのお陰で、何も食べられなくて、死んだりしない。
 魚も肉も野菜も食べられなくなるかと思ったけれど、野菜は食べられた。
 魚があんな姿で命を持っていたなんて、知らなかったんだ。

 肉は、元の命は見ないようにした。
 イワナガヒメが止めるくらいだから、僕には耐えられない姿なんだと思う。
 もう絶対に食べないと誓ったから、見なくても良い。

 野菜は育てている所を見ても命とは思わなかった。
 食べると考えても胸が、いえ、心が痛くならなかった。
 魚と肉は、食べると考えると吐き気がしたけれど、吐き気がしなかった。

 小麦や米を作る所と収穫する所を見て、その後で食べても平気だった。
 パンもうどんも食べられたし、白御飯も塩お結びも食べられた。
 
 その後に食べた柿や桃はとても美味しかった。
 お城で食べた柿や桃は、甘みが少なくてシブくて酸っぱかった。
 でもお供と一緒に取って食べた柿と桃は、甘くて美味しかった。

 お供と一緒に取った栗とクルミは、猿のお供が焼いてくれた。
 食べられない所を器用に外して焼いてくれた。
 もの凄く甘くて美味しくて、ほっぺが落ちそうになった。

 野菜が食べられるかを試すのは、1日で終わらなかった。
 育てて収穫するのを見て、手伝うのに時間がかかった。
 料理して食べるのにも時間がかかった。

 でも、全然いやじゃなかった、むしろ楽しかった。
 刈り取るのもおもしろかったし、脱穀というのもおもしろかった。
 先に干して食べられるようにしてくれていたのを、料理するのもおもしろかった。

 冒険するのがおもしろいと思っていたけれど、違った。
 スライムをたおすよりも、野菜を作って収穫する方がおもしろかった。
 特に果物やナッツを収穫するのがとてもおもしろかった。

 今日は朝からイモ掘りをする事になっていた。
 お供たちが用意してくれたイモ畑を掘り返すのが、もの凄くおもしろかった。
 柿や桃を収穫するよりもずっとおもしろかった。

 そして、収穫していても、命を奪うとは思わなかった。
 食べると考えても胸が痛まなかったし、吐き気もしなかった。
 落ち葉を集めてイモを焼いている時も、食べたい気持ちだけだった。

 実際に食べて、サツマイモの甘さにビックリした。
 昨日食べたクリも甘くて美味しかったけれど、サツマイモの方が甘かった。
 ねっとりとして、舌にからむような甘さが凄く美味しかった。

「克也様、サツマイモは品種によって味がもの凄く違います。
 1つだけ食べるのではなく、少しずつたくさん食べてください。
 食べ残しは私たちが食べさせていただきますので、安心してください」

 イワナガヒメが教えてくれたので、少しずつたくさん食べた。
 同じサツマイモなのに、食べるイモによって全然違った。

 ねっとりしたとても甘いサツマイモもあれば、ほくほくホロホロした少し甘いサツマイモもあった。
 
「次は乳を試してもらいましょう。
 牛、山羊、羊、馬など、乳を使う動物を集めました。
 殺して体を切って食べるのではありません。
 子供を育てる乳を分けてもらって食べるのです。
 それを悪いと思いますか? 胸が痛みますか? 吐き気がしますか?」

 イワナガヒメが僕に聞いてくれる。
 イワナガヒメが聞いてくれている間に、他のお供が乳をしぼってくれる。
 牛、山羊、羊、馬などの乳を少しずつ飲ませてもらった。

 子供分を分けてもらっているので、ほんの少しだけ悪い気がした。
 でも、胸が痛みませんでしたし、吐き気もしませんでした。
 乳は美味しかったし、乳から作ったバターもチーズも美味しかったです。

「ジャガイモを焼いてバターを乗せて食べましょう。
 料理を作るのが楽しそうでしたね、これも一緒に作られますか?」

「作る、イワナガヒメと一緒に作るよ」

「私は手が上手く使えないので、猿のワクムスビとホオリノミコトが作ります。
 2人のやり方を見てマネしてください」

「うん、分かった、マネして作るよ」

 お供たちと一緒に作ったじゃがバターはとても美味しかった。
 そのまま焼いたジャガイモも美味しかったけれど、バターを乗せて焼くと、とんでもなく美味しくなった。
 
「次はチーズを乗せて焼いてみましょう。
 それとも、小麦粉から生地を作ってピザを焼きますか?
 トマトも使った美味しいピザを作れますよ」

「作る、チーズジャガイモも作るし、ピザも作って食べる。
 さっき飲んだ牛乳と一緒に食べたいよ。
 つい牛乳と言ってしまうけれど、どの乳もとても美味しかったよ」

「良いですよ、一緒にチーズジャガイモとピザを作って食べましょう。
 動物の乳しぼりも一緒にやりましょう」

「うん、やる、一緒にやるよ」

「その後で卵もだいじょうぶか試しましょう。
 卵は無精卵で、ひよこになる事はありません。
 爪や髪の毛を切って食べるのと同じです。
 私たちは気にしなくて良いと思っていますが、気にされる人もおられます。
 克也様が卵を食べようと思っても胸が痛くならないのか、吐き気がしないのか、試してください」
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