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第一章
第1話:金蔓
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私はマリアンヌと申します。
これでもライエン公爵家の令嬢です。
ですが、ずっと虐げられて生きてきました。
父の公爵が悪女に誑かされて後妻に迎えたからです。
当然先妻の子供である私は虐待されました。
ですが、異世界で一度人生を全うした私には、それほど辛くありませんでした。
「何をしているの、マリアンヌ!
宝石商が代金を取りに来ているは、とっと支払いなさい!
さもないとお前を借金のカタに売り払うわよ!」
後妻のラナディアが金切り声で叫んでいます。
代金を受け取りに来た、王都一と評判の宝石商が表情も変えずに立っています。
ですがその瞳の奥には、ラナディアに対する蔑みと、私に対する畏敬の念が込められています。
まあ、それも当然でしょう、ラナディアが宝石商から買った宝石は、私が宝石商に売ったのですから。
「ジェイコブ、待たせてすまなかったわね、これが代金よ」
「恐れ入ります、マリアンヌお嬢様。
ラナディア奥様、またのご利用を心待ちにしております」
宝石商ジェイコブがラナディアに心にもない礼を口にします。
「私に相応しい宝石が手に入ったら持ってきなさい。
王妃より先に私に見せるのよ、分かっているわね!」
ラナディアが非常識で無理無体な事を口にします。
ジェイコブが返事をせずに一礼して出て行きました。
「なんて無礼な男でしょう、もう二度とあの男からは買わないわ!
マリアンヌ、代金を受け取りに来る者全員に支払っておきなさい。
払わなければ貴女を売って代償するわよ!」
金遣いの荒い見栄っ張りのラナディアが、憎々しげに私を睨んでいます。
大嫌いな私を奴隷に落としたいのに、それができなくて苛立っいるのでしょう。
自分の生んだ娘が王太子の婚約者ではなく、先妻の娘である私が王太子の婚約者であることが、我慢ならないのでしょう。
だったらもう少し上手に工作して欲しいモノです。
私はその時が来るのを待ち望んでいるのですから。
私を奴隷に売り払うと言っていますが、王太子の婚約者である私を売ることなどできないので、口先だけの事です。
そう口にすれば、私が恐れて代金を支払うと思っている愚か者です。
私は自分の評判を王都で高め、ラナディアと父と妹の評判を落としたから、取り立てに来た商人に自ら支払っているだけです。
だから最初は必ず三人の誰かが支払えない状況に陥らせ、私が代わりに支払う姿を商人に見せつけるようにしています。
「マリアンヌお嬢様、次の者がやってまいりますまで、お部屋でお休みください。
商人が催促にやってきましたら、最初は買い物した本人に対応して頂きますから」
戦闘侍女のルガレッタが休息を勧めてくれます。
別に疲れてはいませんが、気遣ってくれたので休む事にします。
幼くしてこの世界の母を亡くして以来、色々ありましたから、休める時には休む事が身についているので、遠慮などしません。
「お茶にしますから、ルガレッタが相手をしてください。
商人の対応を任せられる配下はいるのでしょ」
「承りました、ご相伴させていただきます」
ルガレッタが素直について来てくれます。
やはり全てを任せられる優秀な戦闘侍女が配下にいるのでしょう。
馬鹿の相手は配下に任せて、自分は私の憂さを晴らしに付き合ってくれる。
主想いの優秀な戦闘侍女です。
まだそれほどの歳ではありませんし、私に仕えてそれほど長いわけでもありませんから、私の幼い頃のことは知らないのです。
あの頃にルガレッタがいたら、私を奉じて三馬鹿を殺していたかもしれません。
「背後は任せましたよ」
「御信任恐れ多い事でございます。
身命に変えても背後を御守りさせていただきます」
自分の部屋に戻るまでの間は、ルガレッタに後ろを歩かせます。
背後を任せられる家臣を得たことは、望外の喜びです。
極貧だった幼い頃は、自分の身は自分で守りながら、食糧を確保していました。
頭の悪い浪費癖のある公爵、それが父親でしたから、売れる物は全て売り領地もなくし、借りれる所からは金を借りきっていて、莫大な借金を抱え家屋敷も抵当に入り、最後の借金で見栄を張ってラナディアを口説いて後妻にしていました。
公爵を誑かして後妻に入り、贅沢三昧できると思っていたのに、実際には借金まみれでその日の食事にも困る、ラナディアも驚いたでしょう。
そんな状態なので、私を虐めて憂さ晴らしをしたかったのでしょうが、どこから私を虐待したという話が王室に届くか分からないので、体罰はできません。
身体に痣でも残してしまったら、王太子の婚約者を傷つけた罪で、処刑される可能性もありましたからね。
だから無視と育児放棄をしてきましたが、私には前世の知識と記憶がありましたから、全く平気でした。
東洋医学の経絡経穴、インドアーユルヴェーダに従ったトリ・ドーシャ、西洋医学による呼吸循環消化吸収免疫、その全てに魔力を流し、絶大な魔力を手に入れていたので、身体は幼くても十分戦えました。
幼い私を泣かせて屈服させようとしたのでしょうが、私は負けませんでした。
母が亡くなって直ぐに、母に仕えていた家臣使用人だけでなく、公爵家に仕えていた家臣使用人も、給与未払いで全員いなくなってしまいました。
一人ぼっちになった私を追い詰めて、私が母から受け継いだ領地を売らせたかったのでしょうが、そうはいきませんでした。
父が嘘をついて領地を売ると口約束して、あちらこちらから借金していましたが、私の許可なしに売る事はできません。
私の思惑でちびちびと父の借金を返済していたら、図に乗って買い物をしたツケを私に回し出したのですが、正直思うつぼでした。
あいつらは私を金蔓だと思っているようですが、私から見れば自分から罠に落ちる愚か者です。
そろそろ最後の仕掛けに取り掛かりましょう。
これでもライエン公爵家の令嬢です。
ですが、ずっと虐げられて生きてきました。
父の公爵が悪女に誑かされて後妻に迎えたからです。
当然先妻の子供である私は虐待されました。
ですが、異世界で一度人生を全うした私には、それほど辛くありませんでした。
「何をしているの、マリアンヌ!
宝石商が代金を取りに来ているは、とっと支払いなさい!
さもないとお前を借金のカタに売り払うわよ!」
後妻のラナディアが金切り声で叫んでいます。
代金を受け取りに来た、王都一と評判の宝石商が表情も変えずに立っています。
ですがその瞳の奥には、ラナディアに対する蔑みと、私に対する畏敬の念が込められています。
まあ、それも当然でしょう、ラナディアが宝石商から買った宝石は、私が宝石商に売ったのですから。
「ジェイコブ、待たせてすまなかったわね、これが代金よ」
「恐れ入ります、マリアンヌお嬢様。
ラナディア奥様、またのご利用を心待ちにしております」
宝石商ジェイコブがラナディアに心にもない礼を口にします。
「私に相応しい宝石が手に入ったら持ってきなさい。
王妃より先に私に見せるのよ、分かっているわね!」
ラナディアが非常識で無理無体な事を口にします。
ジェイコブが返事をせずに一礼して出て行きました。
「なんて無礼な男でしょう、もう二度とあの男からは買わないわ!
マリアンヌ、代金を受け取りに来る者全員に支払っておきなさい。
払わなければ貴女を売って代償するわよ!」
金遣いの荒い見栄っ張りのラナディアが、憎々しげに私を睨んでいます。
大嫌いな私を奴隷に落としたいのに、それができなくて苛立っいるのでしょう。
自分の生んだ娘が王太子の婚約者ではなく、先妻の娘である私が王太子の婚約者であることが、我慢ならないのでしょう。
だったらもう少し上手に工作して欲しいモノです。
私はその時が来るのを待ち望んでいるのですから。
私を奴隷に売り払うと言っていますが、王太子の婚約者である私を売ることなどできないので、口先だけの事です。
そう口にすれば、私が恐れて代金を支払うと思っている愚か者です。
私は自分の評判を王都で高め、ラナディアと父と妹の評判を落としたから、取り立てに来た商人に自ら支払っているだけです。
だから最初は必ず三人の誰かが支払えない状況に陥らせ、私が代わりに支払う姿を商人に見せつけるようにしています。
「マリアンヌお嬢様、次の者がやってまいりますまで、お部屋でお休みください。
商人が催促にやってきましたら、最初は買い物した本人に対応して頂きますから」
戦闘侍女のルガレッタが休息を勧めてくれます。
別に疲れてはいませんが、気遣ってくれたので休む事にします。
幼くしてこの世界の母を亡くして以来、色々ありましたから、休める時には休む事が身についているので、遠慮などしません。
「お茶にしますから、ルガレッタが相手をしてください。
商人の対応を任せられる配下はいるのでしょ」
「承りました、ご相伴させていただきます」
ルガレッタが素直について来てくれます。
やはり全てを任せられる優秀な戦闘侍女が配下にいるのでしょう。
馬鹿の相手は配下に任せて、自分は私の憂さを晴らしに付き合ってくれる。
主想いの優秀な戦闘侍女です。
まだそれほどの歳ではありませんし、私に仕えてそれほど長いわけでもありませんから、私の幼い頃のことは知らないのです。
あの頃にルガレッタがいたら、私を奉じて三馬鹿を殺していたかもしれません。
「背後は任せましたよ」
「御信任恐れ多い事でございます。
身命に変えても背後を御守りさせていただきます」
自分の部屋に戻るまでの間は、ルガレッタに後ろを歩かせます。
背後を任せられる家臣を得たことは、望外の喜びです。
極貧だった幼い頃は、自分の身は自分で守りながら、食糧を確保していました。
頭の悪い浪費癖のある公爵、それが父親でしたから、売れる物は全て売り領地もなくし、借りれる所からは金を借りきっていて、莫大な借金を抱え家屋敷も抵当に入り、最後の借金で見栄を張ってラナディアを口説いて後妻にしていました。
公爵を誑かして後妻に入り、贅沢三昧できると思っていたのに、実際には借金まみれでその日の食事にも困る、ラナディアも驚いたでしょう。
そんな状態なので、私を虐めて憂さ晴らしをしたかったのでしょうが、どこから私を虐待したという話が王室に届くか分からないので、体罰はできません。
身体に痣でも残してしまったら、王太子の婚約者を傷つけた罪で、処刑される可能性もありましたからね。
だから無視と育児放棄をしてきましたが、私には前世の知識と記憶がありましたから、全く平気でした。
東洋医学の経絡経穴、インドアーユルヴェーダに従ったトリ・ドーシャ、西洋医学による呼吸循環消化吸収免疫、その全てに魔力を流し、絶大な魔力を手に入れていたので、身体は幼くても十分戦えました。
幼い私を泣かせて屈服させようとしたのでしょうが、私は負けませんでした。
母が亡くなって直ぐに、母に仕えていた家臣使用人だけでなく、公爵家に仕えていた家臣使用人も、給与未払いで全員いなくなってしまいました。
一人ぼっちになった私を追い詰めて、私が母から受け継いだ領地を売らせたかったのでしょうが、そうはいきませんでした。
父が嘘をついて領地を売ると口約束して、あちらこちらから借金していましたが、私の許可なしに売る事はできません。
私の思惑でちびちびと父の借金を返済していたら、図に乗って買い物をしたツケを私に回し出したのですが、正直思うつぼでした。
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そろそろ最後の仕掛けに取り掛かりましょう。
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