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逆恨み

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 だがここにオリビアに憎しみを抱く者が現れた。
 誰あろうオリビアの元の主人、グレースだった。
 彼女は、いや、彼女の実家であるメクスバラ伯爵家も、オリビアを逆恨みした。
 理由は簡単だった。
 庭に珍しい花が咲かなくなったグレースの部屋に、国王が訪れなくなったのだ。

 しかもグレースは国王の子供を身籠ることができなかった。
 お手付きにはなったが、子供が生まれなければ、部屋が少し広くなって給料も少し増えるだけで、ほとんど権力がない。
 しかもお手付きになった以上、もう後宮から出る事もできない。
 お手付きでなければ、こじつけであろうと理由を創り出せれば、後宮から出て貴族家に嫁ぐことも可能なのだ。
 だがその全ての可能性を潰されてしまった。
 オリビアが部屋を移動することを拒んだせいでだ。

 しかも、オリビアが世話している部屋を手に入れた正妃が、国王との仲を回復させ、五年ぶりに子供を身籠ったというのだ。
 グレースとメクスバラ伯爵家がオリビアを逆恨みする気持ちも分からなくはない。
 だが実際に恨むべきは、正妃なのだという事も分かっていた。
 分かってはいても、表向き恨むことなどできない。
 国王の寵愛を取り戻した正妃は、後宮で絶大な力を持っている。
 だからこそ、オリビアへの逆恨みは激烈だった。

「ちょっと、部屋子の分際で私たちに頭を下げないなんて、なんて不敬なの!」

「「「そうよ、そうよ」」」

「それだけではないわ!
 お前が飛ばした土で着物が汚れたじゃないの!
 これは絶対に許せないわ!」

「「「そうよ、そうよ」」」

「不敬罪で殺してしまいなさい!」

「「「はい!」」」

 メクスバラ伯爵家に所縁のある上級女官が、下級女官三人を引き連れて、オリビアに不敬罪の罪を着せて殺そうとした。
 グレースには類が及ばないように、その場にいないようにアリバイを作りながら、しかも正室イザベラやその女官たちに邪魔されないように、グレースの元の部屋にオリビアがいる時間を見計らって因縁をつけた。

「不敬罪か。
 確かに不敬罪だな。
 私の部屋に許可もなく入り、私の庭を世話してくれている母上の部屋子を殺そうとしている。
 しかもその汚い唾を私に飛ばした。
 第一王子への不敬罪として、死罪を言い渡す。
 誰かある。
 この者たちを召し取って処刑台に送れ」

「申し訳ありません、申し訳ありません、申し訳ありません!」

「私たちの本意ではありません!」
「命じられたのでございます!」
「仕方なくやった事なのでございます!」

「ならばやらせた者の名を教えてもらおうか!」

 幼いながら、ジェームスは情け容赦のない処罰を行った。
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