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土いじり

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 オリビアは今日も土にまみれて庭を整えていた。
 後宮の庭を整える事、それがオリビアに与えられた仕事だった。
 部屋子でも最下級のオリビアには、給与など与えられない。
 後宮で出た残飯が与えられるだけだ。
 それでも、家にいるよりは美味しいモノが食べられた。
 満腹になるまで食べることができた。

 なによりオリビアがうれしかったのは、珍しい草花があることだった。
 王都よりも王城、王城よりも王宮、王宮よりも後宮の方が、珍しい草花がある。
 王城の庭師である父も知らないような、とても珍しいい草花のお世話ができるので、オリビアはとても幸せだった。

 オリビアの親身な世話がよかったのか、後宮の草花が珍しい色をまとうようになり、その事がとても評判になった。
 第一王子のジェームスがその話を広めたため、表の貴族士族にもオリビアの名が知られるようになっていた。
 ジェームスはまだ七歳だったので、後宮と表を自由に行き来できていた。

 その評判を耳にした国王ジョージが、オリビアの世話をした花を見ていたく感心し、オリビアを部屋子に抱えていたお目見え以上の女官、グレースの部屋を度々訪れるようになり、ついにお手付きとなった。
 グレースの実家であるメクスバラ伯爵家は狂喜乱舞した。
 男の子が生まれ、疫病や事故の連続などがあれば、自分の娘が生んだ子、孫が王位を継ぐかもしれないのだ。

 メクスバラ伯爵は庭づくりに力を入れることにした。
 だが少々愚かだった。
 珍し色合いの花を育てたオリビアを解雇して、王都で著名な庭師たちの娘を部屋子に送り込んだのだ。

 まあこれには原因もあった。
 今までは実家の伯爵家に相応しい程度の部屋だったのが、お手付きになったことで広く大きな部屋に移ったのだ。
 庭も広く新しい場所になった。
 後宮のしきたりとはいえ、愚かな事だった。
 その時にオリビアが部屋を移ることを拒んだのだ。
 自分が手塩にかけた草花から離れるのを嫌がったのだ。

 ここでようやくジェームス第一王子の生母、王妃イザベラが動いた。
 空いたグレースの部屋を手に入れたのだ。
 自分の部屋から移ると言いだしたのだ。
 だが王妃の部屋を、伯爵家女官程度の部屋にすることなどできない。
 そこで表向きは、そろそろ独り立ちを迎える、ジェームス第一王子の部屋という事にしたのだが、これが王妃イザベラと国王ジョージの仲を修復することになった。
 
 倦怠期のようになっていた二人が、共に珍しい花をめでる事で、再び親密な関係に戻ることができた。
 間を取り持つことになったオリビアは、国王と王妃に強い印象を残すことになったのだ。
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