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第一章
第65話:結婚式
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俺は精一杯抵抗して、何とか王に就く事だけは回避する事に成功した。
国王陛下、王妃殿下、王太女殿下の三者連合説得を回避するだけでも大変なのに、俺の子飼いの家臣までが三人に味方してしまったので、王位の回避は困難を極めた。
だが、智謀と舌鋒の限りを尽くして抵抗したので、ギリギリ回避する事ができた。
だが、どうしても避けきれなかった事がある。
マリア王太女殿下との結婚だけは避けきれなかった。
しかも王太女の配偶者として、王国の摂政にさせられてしまった。
王族三人だけが相手ならば、何とか言い包める事ができたかもしれない。
だが、俺に次ぐ智謀を誇る三人の女傑の内の二人、ソフィアとグレタが加わり、事もあろうにマッティーア侍従長までが俺の敵に回りやがった。
しかも、俺が遠征で王都を留守にしている間に、勝利して帰還したらマリア王太女殿下と結婚式を挙げると、国内だけでなく国外にまで公表していやがったのだ。
「エドアルド公王殿下、この状況で殿下が結婚式を拒否されるような事があれば、王家と公王家が諍いを起こしていると諸外国に思われてしまいます。
もしかしたら、エドアルド公王殿下がマリア王太女殿下を嫌っていると思われてしまうかもしれません。
それどころか、エドアルド公王殿下の遠征中に、マリア王太女殿下が不祥事を起こしたから結婚を拒まれたという、悪評が広がるかもしれないのです。
エドアルド公王殿下はそれでもよいと申されるのですか」
王族と家臣一同が仕掛けた策謀だと言う事は分かっている。
だが、それでも、マリア王太女殿下に対して、根も葉もない悪評が立つ事だけは絶対に容認できない。
それくらいなら、白の結婚をした方がまだマシだ。
本心では、マリア王太女殿下の経歴に少しでも傷がつく事は嫌なのだが、マリア王太女殿下に相応しい漢がどこにもいないのだ。
★★★★★★
「「本日 私たちは皆様の前で結婚式を挙げます。
これから先、幸せな時も、困難な時も、お互いを愛し助け合いながら、王家と公王家を繁栄させる事を、祖霊と王族の誇りにかけて誓います」」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
俺は全力で白い結婚にしようとしたのだが、許されなかった。
国王陛下や王妃殿下だけでなく、マリア王太女殿下にまで厳しく怒られた。
いや、怒られただけなら、俺もそう簡単に引き下がりはしなかった。
だが、マリア王太女殿下に脅されては引くしかなかった。
「お義兄様、白い結婚を祖霊や王族の誇りにかけて誓われてしまうと、わたくしがどれほど恥をかくと思っておられるのですか。
そのような恥を大陸中に誓うくらいなら、この場で自害してみせます。
お義兄様はそれほどわたくしの事がお嫌いで、自殺させたいと思っておられるのですか」
「いや、決してマリア王太女殿下を嫌っているわけではありません。
俺のような者と結婚しては、マリア王太女殿下が恥をかくと思っただけなのです」
「いったい何度申し上げれば分かってくださるのですか。
お義兄様以上の漢など、この大陸中を探しても誰もいません。
わたくしの結婚相手はお義兄様以外いないのです。
それに、もういい加減、王太女殿下と付けるのは止めてください。
わたくしはお義兄様の婚約者で、もう直ぐ結婚するのですよ。
ちゃんとマリアを呼び捨てにしてくださらないと、この場で自害してみせますよ」
「……分かった、……マリア、もう、白い結婚にするなんて言わない」
目の前で自分の胸に短剣を突き付けられて迫られたら、もう勝ち目はなかった。
目を見れば本気なのが駆け引きの嘘なのくらい直ぐに分かる。
言い逃れを口にするのも怖いくらい本気だった。
マリアお嬢様は、昔から一度決められたら絶対に後には引かれない。
マリアお嬢様に毛ほどの傷もつけたくない俺には逆らいようがないのだ。
一生命懸けで家臣として仕える気ではあったが、これは、一生尻に敷かれる事になるだろうな。
国王陛下、王妃殿下、王太女殿下の三者連合説得を回避するだけでも大変なのに、俺の子飼いの家臣までが三人に味方してしまったので、王位の回避は困難を極めた。
だが、智謀と舌鋒の限りを尽くして抵抗したので、ギリギリ回避する事ができた。
だが、どうしても避けきれなかった事がある。
マリア王太女殿下との結婚だけは避けきれなかった。
しかも王太女の配偶者として、王国の摂政にさせられてしまった。
王族三人だけが相手ならば、何とか言い包める事ができたかもしれない。
だが、俺に次ぐ智謀を誇る三人の女傑の内の二人、ソフィアとグレタが加わり、事もあろうにマッティーア侍従長までが俺の敵に回りやがった。
しかも、俺が遠征で王都を留守にしている間に、勝利して帰還したらマリア王太女殿下と結婚式を挙げると、国内だけでなく国外にまで公表していやがったのだ。
「エドアルド公王殿下、この状況で殿下が結婚式を拒否されるような事があれば、王家と公王家が諍いを起こしていると諸外国に思われてしまいます。
もしかしたら、エドアルド公王殿下がマリア王太女殿下を嫌っていると思われてしまうかもしれません。
それどころか、エドアルド公王殿下の遠征中に、マリア王太女殿下が不祥事を起こしたから結婚を拒まれたという、悪評が広がるかもしれないのです。
エドアルド公王殿下はそれでもよいと申されるのですか」
王族と家臣一同が仕掛けた策謀だと言う事は分かっている。
だが、それでも、マリア王太女殿下に対して、根も葉もない悪評が立つ事だけは絶対に容認できない。
それくらいなら、白の結婚をした方がまだマシだ。
本心では、マリア王太女殿下の経歴に少しでも傷がつく事は嫌なのだが、マリア王太女殿下に相応しい漢がどこにもいないのだ。
★★★★★★
「「本日 私たちは皆様の前で結婚式を挙げます。
これから先、幸せな時も、困難な時も、お互いを愛し助け合いながら、王家と公王家を繁栄させる事を、祖霊と王族の誇りにかけて誓います」」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
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いや、怒られただけなら、俺もそう簡単に引き下がりはしなかった。
だが、マリア王太女殿下に脅されては引くしかなかった。
「お義兄様、白い結婚を祖霊や王族の誇りにかけて誓われてしまうと、わたくしがどれほど恥をかくと思っておられるのですか。
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お義兄様はそれほどわたくしの事がお嫌いで、自殺させたいと思っておられるのですか」
「いや、決してマリア王太女殿下を嫌っているわけではありません。
俺のような者と結婚しては、マリア王太女殿下が恥をかくと思っただけなのです」
「いったい何度申し上げれば分かってくださるのですか。
お義兄様以上の漢など、この大陸中を探しても誰もいません。
わたくしの結婚相手はお義兄様以外いないのです。
それに、もういい加減、王太女殿下と付けるのは止めてください。
わたくしはお義兄様の婚約者で、もう直ぐ結婚するのですよ。
ちゃんとマリアを呼び捨てにしてくださらないと、この場で自害してみせますよ」
「……分かった、……マリア、もう、白い結婚にするなんて言わない」
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マリアお嬢様に毛ほどの傷もつけたくない俺には逆らいようがないのだ。
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