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第一章
第64話:譲り合い
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「よく戻った、我が愛しの息子エドアルド。
お前の働きで王国の栄光は大陸中に光り輝いた。
お飾りのような余は退位して、エドアルドに王位を譲りたいと思っている」
俺はアヴァール可汗国から王都に帰還した。
俺個人としては派手な凱旋などしたくないのだが、王家の養子にして公王である俺の大勝利は、国威発揚に利用しなければいけないのだ。
理性と知性の間で葛藤はあったが、地位には責任が伴うものだ。
個人的にやりたくない事でも、公的立場を優先してやらなければいけない。
だが、公的立場を考えたとしても、忠孝まで捨て去るわけにはいかない。
王位の禅譲など絶対に受けられない。
「国王陛下、それだけは絶対にお受けできません。
私が大恩ある国王陛下から王位を譲られるような前例を作ってしまったら、将来の簒奪を助長させてしまいます。
それに、忠孝の面から考えても、絶対にお受けする事などできません」
「だが元々のアウレリウス氏族は公爵でしかない。
公王になれたのも王になれたのも、全てエドアルドが最前線で戦い、敵を滅ぼし領地を切り取ってくれたからだ。
そのような大功のある息子から与えられた地位や権力は、とても重いのだよ。
できればその重さを余に代わって背負ってくれないだろうか」
「国王陛下、その重さを、お一人で背負われる必要はありません。
王妃殿下や王太女殿下はもちろん、不肖ながら私もおります。
忠誠心と才に溢れた家臣達もおります。
些細な事は他の者に任せられて、陛下は慈愛と仁道を示して頂ければいいのです。
それこそがわたしに備わっていない、とても大切なモノなのです」
「慈愛や仁道が大切な事は否定しないが、それこそ余よりもエドアルドの方が上回っているではないか。
これまでエドアルドが成していた事を見れば明らかだ。
余よりもエドアルドの方が王に相応しい事は、家臣国民の全てが知っている。
もうこれ以上謙遜などせずに、素直に王位に就くのだ、エドアルド」
「残念ながら私の慈愛や仁道は、やらなければいけないと意識して初めてできる、義務的なモノなのです。
陛下やマリア王太女殿下のように、無意識に自然に慈愛や仁道を行える、天与の優しさではないのです」
「それは違うぞ、エドアルド。
この世の中で無意識に自然と優しさを他者に与えられる者などおらん。
余もマリアも、幼い頃か公爵家の帝王学を学んでいたから、無意識に自然と優しさを他者に与えられているように見えているだけだ。
それに、ほとんどの場合はそれも意識してやっているのだ。
無意識に自然とやっているように演じているだけなのだぞ、エドアルド」
「そのような言葉は信じられません」
「いいえ、お義兄様、父王陛下の申される通りです。
陛下もわたくしも、演じているだけなのです。
しかも全てお義兄様に恥ずかしくないようにと努力しているだけなのです。
お義兄様がいてくださって、初めてできている事なのです」
「マリアの言う通りだぞ、エドアルド。
余も愛する息子であるエドアルドに恥かしくないように努力しておるのだ。
だから、な、エドアルド、余に少し楽をさせてくれ。
エドアルドが王位を継いでくれたら、余は演じなくてもよくなるのだ。
余を息子として労わってくれるのなら、王位を継いでくれ、エドアルド」
「できません、それだけは、絶対にできません」
お前の働きで王国の栄光は大陸中に光り輝いた。
お飾りのような余は退位して、エドアルドに王位を譲りたいと思っている」
俺はアヴァール可汗国から王都に帰還した。
俺個人としては派手な凱旋などしたくないのだが、王家の養子にして公王である俺の大勝利は、国威発揚に利用しなければいけないのだ。
理性と知性の間で葛藤はあったが、地位には責任が伴うものだ。
個人的にやりたくない事でも、公的立場を優先してやらなければいけない。
だが、公的立場を考えたとしても、忠孝まで捨て去るわけにはいかない。
王位の禅譲など絶対に受けられない。
「国王陛下、それだけは絶対にお受けできません。
私が大恩ある国王陛下から王位を譲られるような前例を作ってしまったら、将来の簒奪を助長させてしまいます。
それに、忠孝の面から考えても、絶対にお受けする事などできません」
「だが元々のアウレリウス氏族は公爵でしかない。
公王になれたのも王になれたのも、全てエドアルドが最前線で戦い、敵を滅ぼし領地を切り取ってくれたからだ。
そのような大功のある息子から与えられた地位や権力は、とても重いのだよ。
できればその重さを余に代わって背負ってくれないだろうか」
「国王陛下、その重さを、お一人で背負われる必要はありません。
王妃殿下や王太女殿下はもちろん、不肖ながら私もおります。
忠誠心と才に溢れた家臣達もおります。
些細な事は他の者に任せられて、陛下は慈愛と仁道を示して頂ければいいのです。
それこそがわたしに備わっていない、とても大切なモノなのです」
「慈愛や仁道が大切な事は否定しないが、それこそ余よりもエドアルドの方が上回っているではないか。
これまでエドアルドが成していた事を見れば明らかだ。
余よりもエドアルドの方が王に相応しい事は、家臣国民の全てが知っている。
もうこれ以上謙遜などせずに、素直に王位に就くのだ、エドアルド」
「残念ながら私の慈愛や仁道は、やらなければいけないと意識して初めてできる、義務的なモノなのです。
陛下やマリア王太女殿下のように、無意識に自然に慈愛や仁道を行える、天与の優しさではないのです」
「それは違うぞ、エドアルド。
この世の中で無意識に自然と優しさを他者に与えられる者などおらん。
余もマリアも、幼い頃か公爵家の帝王学を学んでいたから、無意識に自然と優しさを他者に与えられているように見えているだけだ。
それに、ほとんどの場合はそれも意識してやっているのだ。
無意識に自然とやっているように演じているだけなのだぞ、エドアルド」
「そのような言葉は信じられません」
「いいえ、お義兄様、父王陛下の申される通りです。
陛下もわたくしも、演じているだけなのです。
しかも全てお義兄様に恥ずかしくないようにと努力しているだけなのです。
お義兄様がいてくださって、初めてできている事なのです」
「マリアの言う通りだぞ、エドアルド。
余も愛する息子であるエドアルドに恥かしくないように努力しておるのだ。
だから、な、エドアルド、余に少し楽をさせてくれ。
エドアルドが王位を継いでくれたら、余は演じなくてもよくなるのだ。
余を息子として労わってくれるのなら、王位を継いでくれ、エドアルド」
「できません、それだけは、絶対にできません」
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