誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。

克全

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第一章

第63話:側室か人質か

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「エドアルド公王陛下、公国と我が国が同盟した証に、我が娘を側室に迎えていただきたいのですが、いかがでしょうか」

 アヴァール可汗国の国王、バヤン・カガンが下手にでてくる。
 どこの国の権力者も考える事は同じだ。
 勢いのある強者に逆らって負けたら、次は女で籠絡しようとする。
 自分の娘が美人ならいいのだが、そうでなければ一族の美人を養女にして、政略結婚させようとする。
 だが、バヤン・カガンは情報収集能力が低いようだ。
 まあ、伝書鳩や早馬による駅伝制度を取り入れている俺と比べるのは可哀想だ。

「残念だがその提案は受け入れられない。
 余の留守に各国から送られてきたいた側室が権力争いをしたようだ。
 バヤン・カガンと同盟を組んで我が国を侵略しようとした、ドイル連合王国の諸王公家から送られてきた側室が、生き残りをかけて余の寵愛を得ようとしたようだ。
 そのような醜い争いに辟易された、余の主君の姫君にして正室でも在られるマリア王太女殿下が、全ての側室を母国に追放された。
 余が貴国への遠征から戻ったら、直ぐにドイル連合王国に攻め込めるように考えてくださったようだ。
 何なら母国に戻らず、このままドイル連合王国に攻め込んでも構わないのだ。
 余との同盟を大陸中に知らしめるために、一緒に来てもいいのだぞバヤン」

「側室の件は、身の程も弁えず、失礼な事を口にした事を御詫びさせて頂きます。
 同盟に基づく遠征の件も、恐れ多い事ながら御辞退させていただきます。
 我が不明による連年の戦により、とても遠征できるような状況ではありません。
 それに、この状況で遠征などしようものなら、ローマ帝国と西突厥可汗国が攻め込んで来る事が明らかでございます。
 どうか、同盟条約の履行を求めるのは御許しください」

「自国の状況と身の程を弁えているようで安心した。
 ならば余がドイル連合王国に攻め込んでいる隙をついて、ローマ帝国と同盟して王国に攻め込んで来るような、愚かな行為はしないであろう。
 もしそのような事をしたら、先年貴国を滅亡寸前にまで追い詰めた、カルロ将軍が貴公の首だけでなく、アヴァール可汗国の男の首を全て斬り飛ばす事だろう」

「エドアルド公王陛下を裏切るような真似は絶対にいたしません。
 祖先の霊と遊牧の神に誓わせていただきます。
 祖先の霊と遊牧の神に誓うだけでなく、人質を出して約束させていただきます。
 わたくしの血を受けつぐ子供を、男女関係なく全員人質に送らせていただきます。
 ですので、どうか、同盟の履行を免除してください、お願い致します」

 困ったな、側室は断れるが、人質は断れそうにない。
 俺としても、アヴァール可汗国には、ローマ帝国と西突厥可汗国の緩衝国として、そこそこの国力を残しておいて欲しい。
 だが今の状況では、俺が母国に戻れば、ローマ帝国と西突厥可汗国が弱ったアヴァール可汗国を滅ぼして領地を得ようとするだろう。

 だが俺が人質を連れて戻れば、俺がアヴァール可汗国を属国としたと考える。
 どんな馬鹿でも、属国に攻め込まれたら俺が戻ってくるくらいの事は判断できる。
 西突厥可汗国は分からないが、少なくともローマ帝国は俺との戦いを回避しようとするだろう。
 できることなら西突厥可汗国より先にドイル連合王国を占領したい。
 しかたがない、人質だけは受け入れよう。
 どうせ受け入れるのなら、中途半端に受け入れるのではなく、全員受け入れる。
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