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第一章
第61話:魑魅魍魎・マリア視点
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わたくしの前に、お義兄様の後宮にいる全ての側室と側近が集まっています。
公王であるお義様の後宮は、本来なら公都にあるべきです。
ですが王国が二重権力になるのを嫌われたお義兄様は、自分の後宮を王都に作られ、王家に対する人質とされました。
わたくしが、父上様や母上様がおられる王都を去らなくてもいいように、気を使ってくださったと言うのもあります。
お義兄様の父上やわたくしに対する忠誠心には頭が下がります。
本当ならそんなお義兄様に対して、頂いた忠誠心に相応しい行動をしなければいけないのですが、全くできていなかったと痛感させられます。
古くから父上様に仕えていた愚かな譜代の中には、王太女であるわたくしが王都を去る必要などなく、お義兄様が王都に通ってくるのが当然と言う愚か者もいます。
全く現実が見えていない馬鹿な譜代など即刻追放したいです。
余計な事を考えず、お義兄様の後宮に専念しなければいけませんね。
今のお兄様の後宮では、実家の家格や勢力ではない、後宮独自の階級ができあがっているようです。
わたくしがお義兄様から聞いていた序列ではない順に並んでいます。
お義兄様が王国のために遠征軍を率いて王都を離れらおられるのですから、わたくしがちゃんと管理しなければいかなかったのです。
ソフィアが何も言っていなかったから、気にするような事ではないのかもしれませんが、自分がやるべき事をしていなかったと反省してしまいます。
「さて、いったい何を争っていたのか、わたくしに教えてくださいますか」
「恐れながら、バイエルン王国から側室に入ったブリュンヒルトが、マリア王太子殿下に申しあげます。
三つのアンハルト王家から側室に入った三人の王女が結託して、後宮で権力を握ろうと、他の側室を毒殺しようとしたのでございます。
同じドイル連合王国から側室に入った者として、決して見過ごす事のできない大罪でございます。
他のドイル連合王国から側室に入った方々と相談して、内々に処罰しようとしたのですが、王太女殿下の戦闘侍女頭殿から禁止されてしまいました」
事前にソフィアから教えられていた事と同じです。
「アンハルト・デッサウ公国の公女カロリーネ。
アンハルト・ベルンブルク公国の公女ツェツィーリエ。
アンハルト・ケーテン公国の公女ベネディクタ。
ブリュンヒルトの言った事に間違いはありませんか」
元が同族で、時に兄弟叔父甥間で争い、時に同盟を組んでいる都市国家。
人口が一万人弱の都市とその周辺の農村を支配しているだけの、ローマ帝国やフランク王国の有力貴族よりも弱く貧しい国の公女達。
彼女達の地位は低く力も弱いのです。
ドイル連合王国に属す他の王女や公女が、生き延びるために生贄にしようとしてもおかしくない立場なのです
「間違いです」
「罠です」
「私達を陥れ、自分達が信頼を得るために仕組んだ罠なのです」
「「「「「嘘です」」」」」
「咎人達の言葉に惑わされたはなりません、マリア王太女殿下」
「彼女達を放置していては、何時マリア王太女殿下に危害が及ぶか分かりません」
「その通りでございます、耳を傾けるとエドアルド公王陛下にまで危険が及ぶかもしれません、マリア王太女殿下」
「どうか厳しい処罰をお願いします」
ブリュンヒルトという者は、わたくしの弱点を的確についてきますね。
お義兄様の危険を訴えれば、わたくしが理性を失って、ろくに調べもせずに三人を重罪に処すと思っているようです。
ですがそれは、余りにもわたくしを馬鹿にしていますね。
後々お義兄様に叱責を受けるような、愚かな判断をわたくしがすると思っているのでしたら、その報いを受けていただくしかありませんね。
公王であるお義様の後宮は、本来なら公都にあるべきです。
ですが王国が二重権力になるのを嫌われたお義兄様は、自分の後宮を王都に作られ、王家に対する人質とされました。
わたくしが、父上様や母上様がおられる王都を去らなくてもいいように、気を使ってくださったと言うのもあります。
お義兄様の父上やわたくしに対する忠誠心には頭が下がります。
本当ならそんなお義兄様に対して、頂いた忠誠心に相応しい行動をしなければいけないのですが、全くできていなかったと痛感させられます。
古くから父上様に仕えていた愚かな譜代の中には、王太女であるわたくしが王都を去る必要などなく、お義兄様が王都に通ってくるのが当然と言う愚か者もいます。
全く現実が見えていない馬鹿な譜代など即刻追放したいです。
余計な事を考えず、お義兄様の後宮に専念しなければいけませんね。
今のお兄様の後宮では、実家の家格や勢力ではない、後宮独自の階級ができあがっているようです。
わたくしがお義兄様から聞いていた序列ではない順に並んでいます。
お義兄様が王国のために遠征軍を率いて王都を離れらおられるのですから、わたくしがちゃんと管理しなければいかなかったのです。
ソフィアが何も言っていなかったから、気にするような事ではないのかもしれませんが、自分がやるべき事をしていなかったと反省してしまいます。
「さて、いったい何を争っていたのか、わたくしに教えてくださいますか」
「恐れながら、バイエルン王国から側室に入ったブリュンヒルトが、マリア王太子殿下に申しあげます。
三つのアンハルト王家から側室に入った三人の王女が結託して、後宮で権力を握ろうと、他の側室を毒殺しようとしたのでございます。
同じドイル連合王国から側室に入った者として、決して見過ごす事のできない大罪でございます。
他のドイル連合王国から側室に入った方々と相談して、内々に処罰しようとしたのですが、王太女殿下の戦闘侍女頭殿から禁止されてしまいました」
事前にソフィアから教えられていた事と同じです。
「アンハルト・デッサウ公国の公女カロリーネ。
アンハルト・ベルンブルク公国の公女ツェツィーリエ。
アンハルト・ケーテン公国の公女ベネディクタ。
ブリュンヒルトの言った事に間違いはありませんか」
元が同族で、時に兄弟叔父甥間で争い、時に同盟を組んでいる都市国家。
人口が一万人弱の都市とその周辺の農村を支配しているだけの、ローマ帝国やフランク王国の有力貴族よりも弱く貧しい国の公女達。
彼女達の地位は低く力も弱いのです。
ドイル連合王国に属す他の王女や公女が、生き延びるために生贄にしようとしてもおかしくない立場なのです
「間違いです」
「罠です」
「私達を陥れ、自分達が信頼を得るために仕組んだ罠なのです」
「「「「「嘘です」」」」」
「咎人達の言葉に惑わされたはなりません、マリア王太女殿下」
「彼女達を放置していては、何時マリア王太女殿下に危害が及ぶか分かりません」
「その通りでございます、耳を傾けるとエドアルド公王陛下にまで危険が及ぶかもしれません、マリア王太女殿下」
「どうか厳しい処罰をお願いします」
ブリュンヒルトという者は、わたくしの弱点を的確についてきますね。
お義兄様の危険を訴えれば、わたくしが理性を失って、ろくに調べもせずに三人を重罪に処すと思っているようです。
ですがそれは、余りにもわたくしを馬鹿にしていますね。
後々お義兄様に叱責を受けるような、愚かな判断をわたくしがすると思っているのでしたら、その報いを受けていただくしかありませんね。
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