誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。

克全

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第一章

第60話:醜聞と対策・マリア視点

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「マリア王太女殿下、エドアルド公王陛下の後宮で争いがありました」

「何があったというのですか、わたくしに話さなければいけない事なのですね」

「はい、エドアルド公王陛下の後宮で争いがあれば、正室であるマリア王太女殿下が裁かなければいけません。
 側室の誰か一人が、後宮内で突出した権力を持つようになってはいけないのです」

「建前は分かりましたが、お義兄様は後宮を人質の牢獄にする心算だと思っていたのですが、違うのですか」

「マリア王太女殿下、先日申された事をお忘れになられたのですか。
 私や侍女達にエドアルド公王陛下の愛妾になれと仰ってくださいました。
 私達のような孤児出身の者が後宮に入ると、立場が弱くなってしまいます。
 他国から来た人質とはいえ、王女や有力貴族の令嬢には逆らえない面があります。
 断れない勧めを受ける事で、毒に倒れる事も考えられるのです。
 邪悪な心の持ち主は、少々強権を発動してでも排除していただきたいのです」

「ごめんなさいね、ソフィア達なら自分達で何とか出来ると思っていました。
 分かりました、後宮の争いに介入して、できるなら両方を祖国に帰します。
 それが無理ならば、性根の汚い方を帰国させます。
 それで、何が原因で、誰が悪いか分かっているのですか」

「今集まっている情報では、王国の攻め込んで来たドイル連合王国の、生き残りをかけた権力闘争だそうです。
 アヴァール可汗国を討伐したエドアルド公王陛下が、ドイル連合王国に報復の軍を進める前に、どの王国の領地をエドアルド公王陛下に差し出すかで母国の命運も自分の一生も変わってくるのです。
 少しでもエドアルド公王陛下の印象を良くするために、誰がエドアルド公王陛下の寵愛を受けるかを争っているようです」

「あくまでも、お金に転んだ側室の側近から集めた情報なのですよね」

「はい、マリア王太女殿下。
 私達を騙すために嘘をついている可能性もあれば間違っている可能性もあります。
 いえ、策謀家に騙されて踊らされている可能性すらあるのです」

「わたくしはソフィアを信じてはいますが、疑わなければいけない立場なのです。
 事前にあらゆる可能性を考えて、その全てに対処できる策を用意するようにとお義兄様から教えられました」

「私達も同じでございます、マリア王太女殿下。
 今回の件も、お教えくださったエドアルド公王陛下に恥ずかしくない行動をしなければなりません」

「そうですね、では、ソフィアが集めた噂を全て教えてください。
 そして噂に対してソフィアがどう考え、どう対策を立てたのかも教えてください。
 ソフィア以上の策を考えつけるとは思えませんが、何もしない訳にはいきません」

「承りました、改めてマリア王太女殿下と侍女全員を加えた軍議を行います」
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