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第一章
第37話:弑逆
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「エドアルド、一度は忠誠を誓った主君に対して剣を向けると言うのか。
この不忠者が」
「俺はフェデリコ公王陛下以外に忠誠を誓ったことは一度もない。
幼い頃、ロマリオ王国軍に無理矢理徴兵され、ろくな食事も武器も防具も与えられず、怠惰で卑怯下劣な騎士や兵士の盾にされた事はあるが、真っ当に評価された事もなければ、忠誠を誓った事もない。
俺がお前に抱いたのは、増悪と殺意だけだ。
俺はお前やロマリオ王国にために戦った事など一度もない。
フェデリコ公王陛下に命じられて嫌々手を貸していただけだ。
ロマリオ王国から受けた役職も、俺が受けたのではない。
フェデリコ公王陛下の名代として受けただけだ」
「おのれエドアルド、名代であろうと余に忠誠を誓ったことに間違いはない。
その忠誠に違約するなど、騎士として恥ずかしくないのか」
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぞ、ルーカ王。
公国と王国の契約を破り、レベッカ王妃とフラヴィオ王太子をアヴァール可汗国に逃がしたのだ。
王として国同士の約定を破って恥ずかしくないのか、恥知らずが」
「余は知らぬ、余の知らぬうちに逃げたのだ。
全ては逃がしたエドアルドの手落ちであろう。
自分の手落ちを誤魔化すために余を非難するなど騎士として恥ずかしくないのか」
「その言葉もそっくりそのまま返させてもらう。
お前が二人を見逃した事は、フラヴィオ王太子の元近衛騎士達だけでなく、アヴァール可汗国の民や騎士からの証言と証拠で明らかだ。
これ以上の言い訳は勇猛を称えられた王として見苦し過ぎるぞ」
「ふん、見苦しいのはお前の方だ、エドアルド。
どうせ金を使って偽証をさせたのだろう。
お前の遣り口などこの国に住む者なら誰でも知っておるわ」
「金を使って偽りの証言をさせようとしたのはお前の方だ、ルーカ王。
だが、そこまで言うのなら神に真実を明らかにしてもらおうではないか。
俺が嘘をついているのか、お前が嘘をついているのか、神明裁判を受けてもらう。
それとも、嘘つきのルーカ王は神明裁判を受けることができないのか」
「やかましい、死ね、エドアルド」
「わっはっはっは、勇猛を称えられたルーカ王とは一度戦ってみたかったのだ。
俺を選んでくれてうれしいぞ、エドアルド」
脳筋のカルロが嬉々として横から乱入してくれた。
軍同士の戦いでは必敗状態になっているルーカ王が、舌戦からの一騎打ちに持ち込もうとする事は、予測がついていた。
むしろそうなるように仕向けたのだ。
どれほど言葉を尽くして説明しても、形だけとはいえ、俺がロマリオ王国の将軍であったことは間違いない。
将軍職を与えられた俺が、直接ではなくてもルーカ王を殺してしまうと、俺だけでなく公王陛下の評判まで悪くなってしまう。
できる限りルーカ王の評判を落とす必要があったのだ。
だから、公明正大な神明裁判から逃げて、俺を奇襲するように仕向けた。
それでも俺が殺したら悪評が広まるだろう。
その覚悟をしていたのに、有難い事にカルロがルーカ王を殺してくれるという。
「ちっ、つまらん、この程度の腕で勇猛王と称えられていたのか」
カルロはハルバードを一振りするだけでルーカ王の首を刎ねてしまったが、これはしかたのない事だ。
若い頃は強かったかもしれないが、二十年近く酒色に溺れていたのだ。
しかも年齢が六十に近くなっている。
筋力も魔力も著しく低下していたのだろう。
「エドアルド、決闘をしろとは言わんが、鍛錬くらいはしてくれ」
友情には応えないといけないな。
「分かったが、その前に城に残っている連中に降伏勧告してくれ。
お前と鍛錬した後に城攻めなどしたくないぞ」
この不忠者が」
「俺はフェデリコ公王陛下以外に忠誠を誓ったことは一度もない。
幼い頃、ロマリオ王国軍に無理矢理徴兵され、ろくな食事も武器も防具も与えられず、怠惰で卑怯下劣な騎士や兵士の盾にされた事はあるが、真っ当に評価された事もなければ、忠誠を誓った事もない。
俺がお前に抱いたのは、増悪と殺意だけだ。
俺はお前やロマリオ王国にために戦った事など一度もない。
フェデリコ公王陛下に命じられて嫌々手を貸していただけだ。
ロマリオ王国から受けた役職も、俺が受けたのではない。
フェデリコ公王陛下の名代として受けただけだ」
「おのれエドアルド、名代であろうと余に忠誠を誓ったことに間違いはない。
その忠誠に違約するなど、騎士として恥ずかしくないのか」
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぞ、ルーカ王。
公国と王国の契約を破り、レベッカ王妃とフラヴィオ王太子をアヴァール可汗国に逃がしたのだ。
王として国同士の約定を破って恥ずかしくないのか、恥知らずが」
「余は知らぬ、余の知らぬうちに逃げたのだ。
全ては逃がしたエドアルドの手落ちであろう。
自分の手落ちを誤魔化すために余を非難するなど騎士として恥ずかしくないのか」
「その言葉もそっくりそのまま返させてもらう。
お前が二人を見逃した事は、フラヴィオ王太子の元近衛騎士達だけでなく、アヴァール可汗国の民や騎士からの証言と証拠で明らかだ。
これ以上の言い訳は勇猛を称えられた王として見苦し過ぎるぞ」
「ふん、見苦しいのはお前の方だ、エドアルド。
どうせ金を使って偽証をさせたのだろう。
お前の遣り口などこの国に住む者なら誰でも知っておるわ」
「金を使って偽りの証言をさせようとしたのはお前の方だ、ルーカ王。
だが、そこまで言うのなら神に真実を明らかにしてもらおうではないか。
俺が嘘をついているのか、お前が嘘をついているのか、神明裁判を受けてもらう。
それとも、嘘つきのルーカ王は神明裁判を受けることができないのか」
「やかましい、死ね、エドアルド」
「わっはっはっは、勇猛を称えられたルーカ王とは一度戦ってみたかったのだ。
俺を選んでくれてうれしいぞ、エドアルド」
脳筋のカルロが嬉々として横から乱入してくれた。
軍同士の戦いでは必敗状態になっているルーカ王が、舌戦からの一騎打ちに持ち込もうとする事は、予測がついていた。
むしろそうなるように仕向けたのだ。
どれほど言葉を尽くして説明しても、形だけとはいえ、俺がロマリオ王国の将軍であったことは間違いない。
将軍職を与えられた俺が、直接ではなくてもルーカ王を殺してしまうと、俺だけでなく公王陛下の評判まで悪くなってしまう。
できる限りルーカ王の評判を落とす必要があったのだ。
だから、公明正大な神明裁判から逃げて、俺を奇襲するように仕向けた。
それでも俺が殺したら悪評が広まるだろう。
その覚悟をしていたのに、有難い事にカルロがルーカ王を殺してくれるという。
「ちっ、つまらん、この程度の腕で勇猛王と称えられていたのか」
カルロはハルバードを一振りするだけでルーカ王の首を刎ねてしまったが、これはしかたのない事だ。
若い頃は強かったかもしれないが、二十年近く酒色に溺れていたのだ。
しかも年齢が六十に近くなっている。
筋力も魔力も著しく低下していたのだろう。
「エドアルド、決闘をしろとは言わんが、鍛錬くらいはしてくれ」
友情には応えないといけないな。
「分かったが、その前に城に残っている連中に降伏勧告してくれ。
お前と鍛錬した後に城攻めなどしたくないぞ」
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