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第一章
第26話:献策・マリア視点
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知略でエドアルドお義兄様にかなうなんて最初から全く思ってはいませんでした。
それでも、わずかな希望にかけて、父上様と策略を巡らせました。
わたくし自身と公国のためになると信じて。
ですが、エドアルドお義兄様に一蹴されてしまいました。
あれだけ考えて行った策なのに、簡単に避けられてしまいました。
それも、私や父である公王陛下に全く傷を残さずにです。
多少なりとも傷を残して、お義兄様が公国に残る理由を少しでも増やそうとしたのですが、それすらかないませんでした。
もうどうすればお義兄様を公国に残せるか全く分かりません。
お義兄様から常々「一度で策がならなくても諦めるな、最後まで諦めずに策を放ち続けた方が勝つのだ」と言われていますので、諦める気はないのですが……
「マリア公太女殿下、一つよろしいでしょうか」
エドアルドお義兄様がわたくしのために就けてくれた戦闘侍女、ソフィアが話しかけてきました。
ウァレリウス・ウディネ伯爵家の賢婦人ソニアと同じように、神のごとき叡智を授かるようにと名付けられた女性です。
特にソフィアは、元々孤児院でつけられていた名前を、エドアルドお義兄様が改名させほどの知恵者です。
「何か策があるのですか、ソフィア。
あるのでしたら遠慮せずに言ってください」
「今から申し上げる策は、マリア公太女殿下が心から望まれておられるような、理想的な策ではありません。
相思相愛の男女が、硬く契りを結ぶ策ではありません。
エドアルド公子殿下は公国に残られますが、マリア公太女殿下の心を傷つけるような策なのです。
それでも御聞きになる覚悟はおありですか」
「今の前置きで、ソフィアが何を言いたいのかは大体分かりました。
ですがその策は、とても微妙なバランスの上に成り立つ策なのではありませんか。
そのような策を、エドアルドお義兄様が認めてくださるでしょうか」
「確かに大陸中にとても繊細な関係を作ってしまう事になります。
ですが、まったく不可能だと言う事も、大陸中を敵に回す事もないと思われます。
マリア公太女殿下とエドアルド公子殿下がご成婚されれば、エドアルド公子殿下は摂政となられます。
エドアルド公子殿下がこれから討伐される王侯貴族の領地の半分を、公子殿下の直轄領となされればいいのです。
そして公王家が王位につくと宣言されるのです。
更にエドアルド公子殿下の庶子には、公平に直轄領を分割相続させると宣言されるのです。
そうすれば、大陸中の王侯貴族が、喜んで王女や令嬢をエドアルド公子殿下に嫁がせる事でしょう」
確かに、ソフィアの言う通りにすれば、多くの王侯貴族が納得するでしょう。
わたくしとお義兄様の間に男子が生まれ、順当に王位を継ぐことになれば、お兄様庶子は次期国王の異母兄弟になります。
最低でも王家と最も血の濃い王族となれた上に、わたくしとお義兄様の間に子供が生まれなければ、次期国王も夢ではないのですから。
大陸最強の軍師であり騎士でもあるお義兄様を敵に回して戦うよりは、ずっと楽に権力と領地を手に入れることができるのですから、 どの王侯貴族にとっても、これほど都合がいい事はありません。
「分かりました、公王陛下と話し合います。
直ぐに謁見の許可を取って来てください」
それでも、わずかな希望にかけて、父上様と策略を巡らせました。
わたくし自身と公国のためになると信じて。
ですが、エドアルドお義兄様に一蹴されてしまいました。
あれだけ考えて行った策なのに、簡単に避けられてしまいました。
それも、私や父である公王陛下に全く傷を残さずにです。
多少なりとも傷を残して、お義兄様が公国に残る理由を少しでも増やそうとしたのですが、それすらかないませんでした。
もうどうすればお義兄様を公国に残せるか全く分かりません。
お義兄様から常々「一度で策がならなくても諦めるな、最後まで諦めずに策を放ち続けた方が勝つのだ」と言われていますので、諦める気はないのですが……
「マリア公太女殿下、一つよろしいでしょうか」
エドアルドお義兄様がわたくしのために就けてくれた戦闘侍女、ソフィアが話しかけてきました。
ウァレリウス・ウディネ伯爵家の賢婦人ソニアと同じように、神のごとき叡智を授かるようにと名付けられた女性です。
特にソフィアは、元々孤児院でつけられていた名前を、エドアルドお義兄様が改名させほどの知恵者です。
「何か策があるのですか、ソフィア。
あるのでしたら遠慮せずに言ってください」
「今から申し上げる策は、マリア公太女殿下が心から望まれておられるような、理想的な策ではありません。
相思相愛の男女が、硬く契りを結ぶ策ではありません。
エドアルド公子殿下は公国に残られますが、マリア公太女殿下の心を傷つけるような策なのです。
それでも御聞きになる覚悟はおありですか」
「今の前置きで、ソフィアが何を言いたいのかは大体分かりました。
ですがその策は、とても微妙なバランスの上に成り立つ策なのではありませんか。
そのような策を、エドアルドお義兄様が認めてくださるでしょうか」
「確かに大陸中にとても繊細な関係を作ってしまう事になります。
ですが、まったく不可能だと言う事も、大陸中を敵に回す事もないと思われます。
マリア公太女殿下とエドアルド公子殿下がご成婚されれば、エドアルド公子殿下は摂政となられます。
エドアルド公子殿下がこれから討伐される王侯貴族の領地の半分を、公子殿下の直轄領となされればいいのです。
そして公王家が王位につくと宣言されるのです。
更にエドアルド公子殿下の庶子には、公平に直轄領を分割相続させると宣言されるのです。
そうすれば、大陸中の王侯貴族が、喜んで王女や令嬢をエドアルド公子殿下に嫁がせる事でしょう」
確かに、ソフィアの言う通りにすれば、多くの王侯貴族が納得するでしょう。
わたくしとお義兄様の間に男子が生まれ、順当に王位を継ぐことになれば、お兄様庶子は次期国王の異母兄弟になります。
最低でも王家と最も血の濃い王族となれた上に、わたくしとお義兄様の間に子供が生まれなければ、次期国王も夢ではないのですから。
大陸最強の軍師であり騎士でもあるお義兄様を敵に回して戦うよりは、ずっと楽に権力と領地を手に入れることができるのですから、 どの王侯貴族にとっても、これほど都合がいい事はありません。
「分かりました、公王陛下と話し合います。
直ぐに謁見の許可を取って来てください」
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