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第一章

第22話:報告

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「公王陛下、民が凄く不安に思っている事が分かりました」

「民が凄く不安に思っている事だと、そのような事があるのか」

「はい、わたくしも孤児院の子供に言われるまで全く気がつきませんでした。
 わたくし達、公王家を憚って、大人達は誰も耳に入れなかったのです。
 孤児に言われて、急いで民の気持ちを探らせましたら、多くの人が孤児と同じ不安を抱えておりました。
 誰もがエドアルドお義兄様が他国に婿入りする事をとても恐れておりました。
 エドアルドお義兄様について他国に移民する事を考えている者までいたのです。
 お前達も移民を考えていたのではありませんか」

「……私達孤児出身の女騎士や戦闘侍女は、エドアルド殿下がいなくなった時の差別をとても恐れております。
 公王家の方々はとてもよくしてくださいますが、貴族出身の侍従や侍女の嫌がらせを全て見ぬき、恨みを買わないように処置していただけるとは思えません。
 エドアルド殿下ほど下々の者の気持ちがお分かりになるとも思えません。
 エドアルド殿下に残れと命じられないかぎり、着いて行かせてもらう心算です」

「それは、お前達女騎士や戦闘侍女だけなのか。
 もしかして、孤児出身の騎士や兵士の全てが、エドアルドと一緒に他国に行く心算なのか」

「……公王陛下に対して恐れ多い事ながら、正直に申し上げさせて頂きます。
 孤児出身の騎士や兵士だけでなく、貴族士族の出身ではない、エドアルド殿下に取立てていただいた平民出身の騎士や兵士の大半も、着いていく心算のようです」

「マリア、先ずお前に謝っておく。
 エドアルドの価値を分かっていなかったのは余も同じであった。
 敵対していた者達や、敵対するかもしれない者達への影響力は分かっていたが、味方に対する影響力を軽く考えすぎていた。
 余がよく考えもせずにエドアルドに強制して、各国の王女や令嬢をエドアルドの婚約者候補に集めたことが、民を不安にさせるだけでなく、公国の屋台骨を揺るがすとは思いもしていなかった」

「どうなされますか、公王陛下。
 今更各国の王女や令嬢を帰国させるわけにはいきませんが、民はもちろんですが、騎士や兵士の不安を放置しておくわけにもいかないともいます」

「そうだな、だが余やマリアが考えてもエドアルドの深慮遠謀にはとても及ばん。
 下手に策を弄する事で、更に悪い結果を招いてしまうかもしれない。
 既に一度これほど大きな悪影響を生み出してしまっているのだ。
 ここは率直にエドアルドに詫びで、打開策を考えてもらう」

「そうですね、それしか方法はありませんよね。
 直ぐにエドアルドお義兄様に戻ってきていただきましょう」
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