9 / 78
第一章
第9話:派兵
しおりを挟む
「お前達には危険な任務をさせてしまう事になるが、これも誇り高きアウレリウス・ジェノバ公爵家の家臣たる者の務めだ。
もしこのような任務は騎士や徒士の役目ではないと思うのなら、何時でも公爵家を辞めてくれて構わないから、遠慮なく申し出てくれ」
「情けない事を申されないでください、エドアルド様。
我ら騎士団一同、この任務を与えられた事を心から誇りに思っております」
アウレリウス・ジェノバ公爵家騎士団の騎士隊長達が即答してくれた。
「その通りでございます、エドアルド様。
我ら海軍もこの度の任務を与えられた事を心から誇りに思っております」
アウレリウス・ジェノバ公爵家海軍の艦長や艇長も即答してくれた。
今回彼らに命じた任務は、普通の貴族家には絶対にない任務だ。
王家や他の貴族家から逃げてくる民を助けるために戦うなど、これまでのこの国の考え方からは絶対にあり得ない事だった。
この国一般的な王侯貴族なら、敵対する王侯貴族共の領地に行くときは、略奪や破壊を行う時と相場は決まっていた。
それが今回はまったく逆で、逃げてくる民を助けに行くのだ。
そうなのだ、捕らえるのではなく、助けに行くのだ。
一般的な王侯貴族なら、民を殺さずに捕らえたら奴隷にする
自分達で使役する場合もあれば、売り払って金にする場合もある。
敵対する王侯貴族の生産力を低下させるだけでなく、自らの資金とする。
それがこの国の王侯貴族が持っている常識だ。
アウレリウス・ジェノバ公爵家はその常識を変えるのだ。
閣下も奥様もお嬢様も、この国の一般的な王侯貴族とは違う高潔な方々だ。
民は支配するものではなく、護り教え育てる者だと考えられている。
俺はその公爵家の考えのお陰で、今こうして生きていられるのだ。
公爵閣下に助けていただいていなければ、まだ今ほどの実力を得ていなかった俺は、腐った王侯貴族共に陥れられて殺されていただろう。
もし生き延びていたとしても、今ほどの名声は得られていなかっただろう。
生きるために盗賊や山賊になり、気高い精神を失っていたと思う。
孤児達や不幸な人達を助けるためとはいえ、盗むことで財貨を得ていたはずだ。
まあ、悪徳な領主や商人だけを襲っていたとは思うが、俺が盗んだ分だけ領主や商人は民や奴隷から財貨を奪っていただろう。
今回もそんな事にならないように、敵対する王侯貴族から財貨を奪うのではなく、悪徳な領主や商人が抱えている民や奴隷を助け出し、公爵領に迎えるのだ。
近接している領地や同盟を申し込んできた貴族領を通過していける王侯貴族領は、騎士団や徒士団を直接送って領民や奴隷を救い出す。
だが騎士団や徒士団を派遣すると戦争になってしまう王国領や貴族の領地には、敵の虚を突いて艦艇を送って民や奴隷を救い出す。
戦えば必ず犠牲者が出てしまうから、戦いはできるだけ回避する。
家臣達は誇りと覚悟を持って、死傷する事を覚悟して戦ってくれるが、実際に死傷者が出てしまうとお嬢様が心を痛められるからな。
いや、公爵家の家臣だけでなく、敵対する貴族の家臣領民が戦いに巻き込まれてしまい、死傷してしまう事だろう。
公爵家がどれほど気をつけていても、民や奴隷の犠牲をなくすことはできない。
公爵家との戦いを理由に、貴族や商人が臨時の税をかけたり徴兵したりするのが目に見えているからだ。
そんな事をさせたいためにも細心の注意を払って進軍路を決めなければいけない。
「では各部隊の出陣日と進軍路を伝える。
その日までに準備ができないと思ったら、必ず言申し出るように。
出陣日が遅れたり準備不足があったりしたら助けるはずの民を死傷させてしまう。
そのような事になったら、公爵家は準備ができないと言う事とは比較にならない大恥をかくからな、分かったな」
「「「「「はい」」」」」
もしこのような任務は騎士や徒士の役目ではないと思うのなら、何時でも公爵家を辞めてくれて構わないから、遠慮なく申し出てくれ」
「情けない事を申されないでください、エドアルド様。
我ら騎士団一同、この任務を与えられた事を心から誇りに思っております」
アウレリウス・ジェノバ公爵家騎士団の騎士隊長達が即答してくれた。
「その通りでございます、エドアルド様。
我ら海軍もこの度の任務を与えられた事を心から誇りに思っております」
アウレリウス・ジェノバ公爵家海軍の艦長や艇長も即答してくれた。
今回彼らに命じた任務は、普通の貴族家には絶対にない任務だ。
王家や他の貴族家から逃げてくる民を助けるために戦うなど、これまでのこの国の考え方からは絶対にあり得ない事だった。
この国一般的な王侯貴族なら、敵対する王侯貴族共の領地に行くときは、略奪や破壊を行う時と相場は決まっていた。
それが今回はまったく逆で、逃げてくる民を助けに行くのだ。
そうなのだ、捕らえるのではなく、助けに行くのだ。
一般的な王侯貴族なら、民を殺さずに捕らえたら奴隷にする
自分達で使役する場合もあれば、売り払って金にする場合もある。
敵対する王侯貴族の生産力を低下させるだけでなく、自らの資金とする。
それがこの国の王侯貴族が持っている常識だ。
アウレリウス・ジェノバ公爵家はその常識を変えるのだ。
閣下も奥様もお嬢様も、この国の一般的な王侯貴族とは違う高潔な方々だ。
民は支配するものではなく、護り教え育てる者だと考えられている。
俺はその公爵家の考えのお陰で、今こうして生きていられるのだ。
公爵閣下に助けていただいていなければ、まだ今ほどの実力を得ていなかった俺は、腐った王侯貴族共に陥れられて殺されていただろう。
もし生き延びていたとしても、今ほどの名声は得られていなかっただろう。
生きるために盗賊や山賊になり、気高い精神を失っていたと思う。
孤児達や不幸な人達を助けるためとはいえ、盗むことで財貨を得ていたはずだ。
まあ、悪徳な領主や商人だけを襲っていたとは思うが、俺が盗んだ分だけ領主や商人は民や奴隷から財貨を奪っていただろう。
今回もそんな事にならないように、敵対する王侯貴族から財貨を奪うのではなく、悪徳な領主や商人が抱えている民や奴隷を助け出し、公爵領に迎えるのだ。
近接している領地や同盟を申し込んできた貴族領を通過していける王侯貴族領は、騎士団や徒士団を直接送って領民や奴隷を救い出す。
だが騎士団や徒士団を派遣すると戦争になってしまう王国領や貴族の領地には、敵の虚を突いて艦艇を送って民や奴隷を救い出す。
戦えば必ず犠牲者が出てしまうから、戦いはできるだけ回避する。
家臣達は誇りと覚悟を持って、死傷する事を覚悟して戦ってくれるが、実際に死傷者が出てしまうとお嬢様が心を痛められるからな。
いや、公爵家の家臣だけでなく、敵対する貴族の家臣領民が戦いに巻き込まれてしまい、死傷してしまう事だろう。
公爵家がどれほど気をつけていても、民や奴隷の犠牲をなくすことはできない。
公爵家との戦いを理由に、貴族や商人が臨時の税をかけたり徴兵したりするのが目に見えているからだ。
そんな事をさせたいためにも細心の注意を払って進軍路を決めなければいけない。
「では各部隊の出陣日と進軍路を伝える。
その日までに準備ができないと思ったら、必ず言申し出るように。
出陣日が遅れたり準備不足があったりしたら助けるはずの民を死傷させてしまう。
そのような事になったら、公爵家は準備ができないと言う事とは比較にならない大恥をかくからな、分かったな」
「「「「「はい」」」」」
0
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!
ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。
ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。
そこで私は重要な事に気が付いた。
私は聖女ではなく、錬金術師であった。
悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います
高井うしお
恋愛
※なろう版完結済み(番外編あり〼)
ハーブ栽培と本が好きなOL・真白は図書館で不思議な薬草辞典と出会う。一瞬の瞬きの間に……気が付くとそこは異世界。しかも魔物討伐の軍の真っ只中。そして邪竜の毒にやられて軍は壊滅状態にあった。
真白が本の導きで辞典から取り出したハーブを使うと彼らはあっという間に元気になり、戦況は一変。
だが帰還の方法が分からず困っている所を王子のはからいで王城で暮らす事に。そんな真白の元には色々な患者や悩み事を持った人が訪れるようになる。助けてくれた王子に恩を返す為、彼女は手にした辞典の加護で人々を癒していく……。
キラッキラの王子様やマッチョな騎士、優しく気さくな同僚に囲まれて、真白の異世界ライフが始まる! ハーブとイケメンに癒される、ほのぼの恋愛ファンタジー。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
虐げられ聖女の力を奪われた令嬢はチート能力【錬成】で無自覚元気に逆襲する~婚約破棄されましたがパパや竜王陛下に溺愛されて幸せです~
てんてんどんどん
恋愛
『あなたは可愛いデイジアちゃんの為に生贄になるの。
貴方はいらないのよ。ソフィア』
少女ソフィアは母の手によって【セスナの炎】という呪術で身を焼かれた。
婚約した幼馴染は姉デイジアに奪われ、闇の魔術で聖女の力をも奪われたソフィア。
酷い火傷を負ったソフィアは神殿の小さな小屋に隔離されてしまう。
そんな中、竜人の王ルヴァイスがリザイア家の中から結婚相手を選ぶと訪れて――
誰もが聖女の力をもつ姉デイジアを選ぶと思っていたのに、竜王陛下に選ばれたのは 全身火傷のひどい跡があり、喋れることも出来ないソフィアだった。
竜王陛下に「愛してるよソフィア」と溺愛されて!?
これは聖女の力を奪われた少女のシンデレラストーリー
聖女の力を奪われても元気いっぱい世界のために頑張る少女と、その頑張りのせいで、存在意義をなくしどん底に落とされ無自覚に逆襲される姉と母の物語
※よくある姉妹格差逆転もの
※虐げられてからのみんなに溺愛されて聖女より強い力を手に入れて私tueeeのよくあるテンプレ
※超ご都合主義深く考えたらきっと負け
※全部で11万文字 完結まで書けています

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる