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第一章
第3話:卑怯下劣
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「おのれ、孤児上がり兵士であったお前を取立てやった大恩ある私の事を、卑怯で恥知らずと言うか、お前こそ恩知らずではないか」
「私はお前から恩など何一つ受けていない。
私が王家から受けたのは差別と手柄の横取りだけだ。
そんな私を一人の兵士として公平に評価してくださったのは、アウレリウス・ジェノバ公爵家のフェデリコ閣下だけだった。
フェデリコ閣下が王国兵から公爵家の騎士に取立ててくださったのだ。
それからようやく手柄を横取りされることがなくなり、武名を得られたのだ。
お前が女漁りの金欲しさに孤児院の予算を横領した時も、私一人では孤児たちを救い切れなかったのを、フェデリコ閣下が孤児を領地に引き取ってくださった。
それを私に大恩を与えただと、大嘘つきの恥知らずが」
「おのれ、おのれ、おのれ、殺せ、この恩知らずの大嘘つきを殺すのだ」
糞王太子は狂ったように命令を繰り返すが、誰一人動かない。
それもそうだろう、自慢するわけではないが、俺の武名は王国中に轟いている。
豪勇で聞こえた帝国軍十二虎将軍を、同時に四人相手にしてぶち殺している。
十二虎将軍は一人で一個軍団を全滅させると言われるほどの武力持ちだ。
それを同時に四人相手にするという事は、四個軍団を相手にする事ではない。
百個軍団を相手にするも同然の事なのだ。
誰だって死ぬと分かっている戦いなど、それも非道な戦いなどしたくない。
「憶病者共が、たった一人を相手に何を恐れている。
百人同時に襲いかかれば簡単に勝てるだろうが」
糞王太子は声が枯れるくらい繰り返して命令をしたが、無駄な事だ。
これ以上付き合うのも馬鹿らしいから、早々に帰らせてもらう。
どこの国に逃げるかは大体決めてあるが、もう一度本気で考えないといけない。
自分一人の事なら、どの国に逃げてもどうとでもなるが、今回は一人じゃない。
マリアお嬢様を連れて逃げる以上、万が一にも読み間違いがあってはいけない。
屋敷の戻って最新の情報を集め直し、落ち着いた静かな場所で時間をかけて情報を精査し、最善の方法を見つけるのだ。
「人質だ、人質を取れば簡単に勝てるではないか。
マリアを人質に取れば、どれほど強かろうと隙ができるぞ。
四方八方からマリアとエドアルドを同時に襲え。
エドアルドが自分を護ろうとすればマリアを殺せるぞ。
エドアルドがマリアを護ろうとすればエドアルドを殺せるぞ。
勝ちだ、私の勝ちだ、さっさとやれ。
エドアルドを殺した者を将軍にしてやる、やれ、さっさとやれ」
全身全霊の精神力を駆使して、糞王太子をぶち殺すのを我慢した。
話の途中で殺すのを堪えるのが、これまでの人生で一番つらかった。
今この激情のまま糞王太子に剣を向けたら、一撃で楽に殺してしまう。
それくらい俺の怒りは大きかったが、それでは、目の前で婚約者に殺せと言われて傷ついている、マリアお嬢様の辛さ苦しさに対して楽過ぎる。
この世に生まれてきた事を後悔して、血の涙を浮かべて殺してくれと哀願するほどの苦しみを味合わせなければ、マリアお嬢様が受けた哀しみに相応しくない。
「私はお前から恩など何一つ受けていない。
私が王家から受けたのは差別と手柄の横取りだけだ。
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それもそうだろう、自慢するわけではないが、俺の武名は王国中に轟いている。
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それを同時に四人相手にするという事は、四個軍団を相手にする事ではない。
百個軍団を相手にするも同然の事なのだ。
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「憶病者共が、たった一人を相手に何を恐れている。
百人同時に襲いかかれば簡単に勝てるだろうが」
糞王太子は声が枯れるくらい繰り返して命令をしたが、無駄な事だ。
これ以上付き合うのも馬鹿らしいから、早々に帰らせてもらう。
どこの国に逃げるかは大体決めてあるが、もう一度本気で考えないといけない。
自分一人の事なら、どの国に逃げてもどうとでもなるが、今回は一人じゃない。
マリアお嬢様を連れて逃げる以上、万が一にも読み間違いがあってはいけない。
屋敷の戻って最新の情報を集め直し、落ち着いた静かな場所で時間をかけて情報を精査し、最善の方法を見つけるのだ。
「人質だ、人質を取れば簡単に勝てるではないか。
マリアを人質に取れば、どれほど強かろうと隙ができるぞ。
四方八方からマリアとエドアルドを同時に襲え。
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エドアルドがマリアを護ろうとすればエドアルドを殺せるぞ。
勝ちだ、私の勝ちだ、さっさとやれ。
エドアルドを殺した者を将軍にしてやる、やれ、さっさとやれ」
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話の途中で殺すのを堪えるのが、これまでの人生で一番つらかった。
今この激情のまま糞王太子に剣を向けたら、一撃で楽に殺してしまう。
それくらい俺の怒りは大きかったが、それでは、目の前で婚約者に殺せと言われて傷ついている、マリアお嬢様の辛さ苦しさに対して楽過ぎる。
この世に生まれてきた事を後悔して、血の涙を浮かべて殺してくれと哀願するほどの苦しみを味合わせなければ、マリアお嬢様が受けた哀しみに相応しくない。
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