誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。

克全

文字の大きさ
上 下
1 / 78
第一章

第1話:婚約破棄追放

しおりを挟む
「マリア、お前の傲慢で残虐な行いをもうこれ以上許すわけにはいかん。
 私の婚約者で公爵令嬢であることをいいことに、心優しいパオラ嬢を事あるごとに虐め傷つけた事、誇りある高位貴族とは思えない恥ずべき行為だ。
 そのような恥知らずと結婚する事など絶対にできない、お前との婚約は破棄する。
 いや、それだけでは済まさぬ、お前のような貴族の面汚しとは二度と会わぬ。
 この国から追放してやる、今直ぐこの国から出て行け」

 盛りのついた野良犬のように、見境なく女の尻に情欲を叩き込む腐れ王太子が、可愛い義妹に謂れのない罪を着せている。
 腐れ王太子の二の腕に二つの脂肪の塊を押し付けて、嫌らしい勝利の笑みを浮かべる雌豚の顔を、ザクロのように割り裂いてやりたい怒りにかられる。
 だが、愛おしい義妹が耐えているのに、俺が暴れる訳にはいかない。

「私は下位貴族の令嬢を虐め傷つけた事など一度もありません。
 貴族令嬢としてあまりにも目に余る無礼を働いた方に、今後公の場で恥をかかれる事のないように指導した事はありますが、恥ずべき行いをした事はありません」

 婚約者の王太子に裏切られて内心激しく傷ついているだろうに、健気なマリアはその傷心を表情に出すことなく、気高い態度で弁明している。
 公爵令嬢としての立場にいなければ、下位貴族に礼儀作法の指導などしない。
 どのように諭しても性根の直らない根性悪がいる事は、俺が教えた事だ。
 誰よりも優しく繊細で傷つきやすいマリア。
 泣き出したいのを必死でこらえて反論しているのは、ジェノバ公爵家の名誉のためであって、断じて個人的な保身のためではない。

「ふん、そのような言い訳が通じると本気で思っているのか、愚か者。
 お前の恥知らずな行いを証言する者は数多くいるのだ。
 そうだな、シモーネ」

 腐れ王太子が生臭坊主のシモーネに嫌らしい笑みを浮かべながら話しかけた。
 王宮に出入りしている教会の神官長シモーネ。
 神に仕える身でありながら、腐れ王太子と一緒になって貴族令嬢や貴族夫人と不義を重ねる、恥知らずで穢れたエセ神官。
 こいつの証言など嘘に決まっているのだが、愚かな連中は騙されるだろう。
 いや、騙された振りをして腐れ王太子の歓心を買おうとする奴も多い。
 全員に決闘を申し込んでぶち殺してやろうか。

「はい、多くの貴族令嬢や貴族夫人が証言してくださっています。
 必要ならば今直ぐにでも証言していただきます。
 何なら私の責任で宗教裁判をかけさせていただいても構いません」

 腐れ王太子、メス豚、エセ神官の三人ともが勝ち誇った表情をしている。
 偽証をする貴族令嬢と貴族夫人を用意していたのだな。
 腐れ王太子とエセ神官が、悪質な薬物で貴族令嬢や貴族夫人を堕落させているという噂があったが、どうやら真実だったようだ。

 心ある貴族達が眉をひそめるこの場で偽証などすれば、腐れ王太子やエセ神官と不義を重ねていると自分から言っているようなモノなのに、自分から証言するのだ。
 家名に泥を塗ると分かっているのに証言するという事は、麻薬によって意のままに操られているという事だ。
 
 顔色を悪くしている貴族家の当主が数多くいる。
 腐れ王太子やエセ神官は許せないが、王家や教会の力を恐れて泣き寝入りしている貴族家も多いのだろう。
 屈辱に苦しんでいる所に、公の場で恥をかかせられるのだ。
 王家や教会を恨み敵意を持つ貴族家が数多くでるだろうな。

 そんな貴族家を集めて、王家や教会を糾弾してやる事も可能だ。
 マリアを傷つける者は誰であろうと許さない。
 さあ、決断するがいい、マリア。
 義兄さんはお前のためなら何だってやってやる。
 お前が望むのなら、腐れ王太子の腹を裂いて生きたまま内臓を喰ってやる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...