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第一章
第87話:責任と軍学校
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「あなた、彼らの処遇はどうなされるのですか。
貴族として差別しないのは分かっています。
軍役や指揮系統をどうするのかが気になったのです」
リアナが俺の事を「兄上様」から「あなた」と呼ぶようになった。
少々照れ臭いが慣れなければいけない。
「あなた」と呼ばれるたびに兄妹から夫婦に成った事を実感する。
肩にずしりと重荷がのしかかった気がする。
リアナの事を重荷と言ってはいけないが、責任を感じてしまうのだ。
それとリアナは随分落ち着いてきたようだ。
結婚前には不安のために少し情緒不安定な所があった。
だが結婚式を挙げて安心したのか今では情緒不安定な所が全くない。
下世話な表現をすれば膚を重ね愛を交わしたからかもしれない。
ホルモンバランスがとれたともいえる。
「そうだね、それが何より問題だね。
正直彼らの能力は全く期待していない。
俺や使い魔が軍事も政治も全面的に行えば全く問題が起こらない。
彼らを動員する事はないから大丈夫だよ」
「それは分かっています。
あなたが生きておられる間の事は全く心配していません。
問題は大が変わった時の事です。
あなたと私の子供の代が心配なのです」
リアナが生まれてもいない子供の心配をする。
俺の子供を心から望んでいるのだろう。
嬉しいような怖いような、何とも言えない気分になる。
なかなかリアナとの結婚を決断できなかったように親になる覚悟ができていない。
本当に俺は臆病者なのだ。
だが臆病者だからこそ、生まれてくる子供のために準備は完璧を期す。
「そうだね、今からその準備をしておいた方がいいね。
俺のゴードン王国もリアナのロスリン王国も弱小貴族しか残っていない。
有力な貴族は全部潰してしまったからね。
でも弱小とはいえ百や二百の兵力は動員できる。
彼らが動員した兵士が任地で民を害するのが一番心配だ。
彼らの行動を抑えるためには仁義を弁えた指揮官や目付役が必要だ」
「はい、私もそう思います。
あなたが造られた学校の生徒達が気になるのです。
どれだけ立派な騎士になってくれるのか、正直心配なのです。
あなたが鍛えられているから、貧民出身でも大丈夫だとは思うのですが……」
リアナが心配する気持ちもよく分かる。
俺の創設した学校で学んでいる最上級生は、俺とリアナが最初に助けた者だ。
大半が王都の貧民だった者達だ。
基礎教育である読み書き計算など習った事もない者達だ。
彼らが貴族教育を受けた子弟に追いつくまでには相当時間が必要だ。
だが、その分変な思想に染められていないともいえる。
特に子供達の俺に対する純粋な忠誠心は、俺とリアナ子供達にはとても大切な宝物になるだろう。
貴族として差別しないのは分かっています。
軍役や指揮系統をどうするのかが気になったのです」
リアナが俺の事を「兄上様」から「あなた」と呼ぶようになった。
少々照れ臭いが慣れなければいけない。
「あなた」と呼ばれるたびに兄妹から夫婦に成った事を実感する。
肩にずしりと重荷がのしかかった気がする。
リアナの事を重荷と言ってはいけないが、責任を感じてしまうのだ。
それとリアナは随分落ち着いてきたようだ。
結婚前には不安のために少し情緒不安定な所があった。
だが結婚式を挙げて安心したのか今では情緒不安定な所が全くない。
下世話な表現をすれば膚を重ね愛を交わしたからかもしれない。
ホルモンバランスがとれたともいえる。
「そうだね、それが何より問題だね。
正直彼らの能力は全く期待していない。
俺や使い魔が軍事も政治も全面的に行えば全く問題が起こらない。
彼らを動員する事はないから大丈夫だよ」
「それは分かっています。
あなたが生きておられる間の事は全く心配していません。
問題は大が変わった時の事です。
あなたと私の子供の代が心配なのです」
リアナが生まれてもいない子供の心配をする。
俺の子供を心から望んでいるのだろう。
嬉しいような怖いような、何とも言えない気分になる。
なかなかリアナとの結婚を決断できなかったように親になる覚悟ができていない。
本当に俺は臆病者なのだ。
だが臆病者だからこそ、生まれてくる子供のために準備は完璧を期す。
「そうだね、今からその準備をしておいた方がいいね。
俺のゴードン王国もリアナのロスリン王国も弱小貴族しか残っていない。
有力な貴族は全部潰してしまったからね。
でも弱小とはいえ百や二百の兵力は動員できる。
彼らが動員した兵士が任地で民を害するのが一番心配だ。
彼らの行動を抑えるためには仁義を弁えた指揮官や目付役が必要だ」
「はい、私もそう思います。
あなたが造られた学校の生徒達が気になるのです。
どれだけ立派な騎士になってくれるのか、正直心配なのです。
あなたが鍛えられているから、貧民出身でも大丈夫だとは思うのですが……」
リアナが心配する気持ちもよく分かる。
俺の創設した学校で学んでいる最上級生は、俺とリアナが最初に助けた者だ。
大半が王都の貧民だった者達だ。
基礎教育である読み書き計算など習った事もない者達だ。
彼らが貴族教育を受けた子弟に追いつくまでには相当時間が必要だ。
だが、その分変な思想に染められていないともいえる。
特に子供達の俺に対する純粋な忠誠心は、俺とリアナ子供達にはとても大切な宝物になるだろう。
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