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第一章

第84話:プロポーズ・リアナ視点

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「リアナ、この世界で俺が愛しているのはお前だけだ。
 リアナ以外の妻を迎える気はない。
 終生大切にして添い遂げる。
 だから私と結婚してくれ」

 ついにです、ついに兄上様からプロポーズしてくださいました。
 もっと長く、もっと甘い言葉を駆使して欲しいです。
 でも恥ずかしがり屋の兄上様にそのような事を願うのは欲張り過ぎですね。
 あまり引き延ばして心変わりされては大変です。
 私を愛してくださる心が変わるとは思いませんが、近親婚の決意が鈍る可能性はあるのですから、直ぐに返事すべきです。

「はい、私も心から兄上様を愛してます。
 兄上様以外との結婚など考えられません。
 終生兄上様の側を離れません。
 喜んで結婚させていただきます」

 兄上様が私にプロポーズしてくださったという話は、私達が事前に準備していた事もあり、直ぐに大陸中を駆け巡りました。
 兄上様に取り消す暇を与えないように、稲妻のように早く広めました。
 それは婚約期間も同じ事です。

 王侯貴族の婚約ほど当てにならないものはありません。
 何事もない平穏無事な時なら約束がとても大切にされます。
 ですが軍事や政治で大きな変化があった時。
 権力構造が大きく変わった時は別です。
 家のために紙のように簡単に破られる事があるのです。

 だから私は挙式を急がせました。
 どうしても結婚式に参列したいという王侯貴族の頼みなど無視です。
 少しでも早く結婚式を挙げてしまわないと不安でたまりません。
 家臣達を急かせて結婚式の準備をさせました。
 いえ、既に結婚式の準備は整っているのです。

 問題は兄上様に早急な結婚式を認めていただく事です。
 緊急時以外は行事を大切にされる兄上様です。
 私との結婚を決断した以上、私の為にも体面を大切にしてくださるでしょう。
 少なくとも大陸中の王家からの参列を望まれるはずです。

 ですが私の願いは違います。
 誰も参列しなくてもいいのです。
 兄上様と二人だけで誓う結婚式でいいのです。
 兄上様が私との結婚を誓ってくだされば安心できるのです。
 兄上様が私との約束を破る事などないのですから。

 だから本当ならプロポーズしてもらえた時点で大丈夫なのです。
 でも、これは私の弱い所ですね。
 結婚式を挙げないと不安で仕方がないのです。
 悪夢にうなされてしまうのです。

 だからこそ事前に準備をしてきました。
 大陸中の王家を説得して、いえ、脅して納得させました。
 結婚式の参列は駐在大使を国王代理とする事を。
 結婚式とは別に、大陸の全王家が参列できる余裕を持った日程で披露宴を行うと。
 問題があるとしたら、兄上様が嫌っている神や教団以外の誰に結婚を誓うかです。
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