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第一章

第83話:時間切れ

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 マンション都市建築を始めて半年、もう時間切れである。
 これ以上の引き延ばしは不可能だ。
 リアナと家臣達の動きがとても素早い。
 バロンとズメイから筒抜けなのは分かっているのだろう。
 全く隠すことなく堂々と大陸各国に圧力をかけている。

「聖王陛下の聖魔術がなくなってもいいのですか。
 聖王陛下の聖魔術を受け継げるのは血の濃い私との子供だけですよ。
 それとも聖王陛下が私が反対する女性と決婚すると思っているのですか。
 もし私が五人子を生んでも正統な跡継ぎでない場合は、他国の女性を側室に認めますから、聖王陛下に私と決婚するように嘆願しなさい。
 聖王陛下から私にプロポーズするように嘆願しなさい」

 もう、リアナは常軌を逸しているのだろうか。
 形振り構わない圧力と言うべきか嘆願と言うべきか。
 各国の王侯貴族と連絡を取って嘆願書を送らせている。
 各国の王侯貴族も俺がリアナを溺愛している事は分かってる。
 俺が結婚に踏み切らないのは世間体を気にしているだけだと思っている。

 だからだろう、俺が世間体を気にせずリアナにプリポーズできるように、同父同母兄弟姉妹の結婚を認める法改正をした。
 法改正をしただけでなく、実際に同父同母兄弟姉妹の結婚を行った。
 しかも俺とリアナに招待状を送ってくる念の入れようだ。
 よほど俺とリアナに恩を売りたいのだろう。

 まあそれも当然と言えば当然だ。
 同父同母兄弟姉妹の結婚だと、遺伝子障害を持った子供が生まれやすい。
 それを解消するには俺の聖魔術が必要不可欠だ。
 王族ならばともかく、公爵家以下だと俺の治療を受けられない可能性がある。
 結婚式に招待して縁を繋ぎたいのだ。

 以前から道ならぬ近親愛を育んでいたカップルなら当然の事だ。
 既に内密の子供がいる場合、特に障害を持った子供がいる場合は必死だ。
 俺が治療さえすれば、その子が正常に育つ事は幾百の前例が証明している。
 リアナに恩を売って子供を助けたい貴族のカップルが想像以上に多かった。
 道ならぬ愛ほど激しく燃え上がるのだろう。

 まあ、リアナのために全部承諾した。
 ただしそれなりの礼金を支払った場合だけだ。
 それも男爵以上の貴族に限定した。
 準男爵以下の士族や平民まで寝る時間すらなくなってしまう。

 どうしても治療して欲しければゴードン王国かロスリン王国の民になればいい。
 俺かリアナの民なら治療費さえ払えば治してやる。
 治療費がなければ未開地の開拓や大魔境で狩りをすればいい。
 両王国の発展に寄与する人間ならば治してやりる。

 ただし金持ちは別だ。
 金持ちからは正当な報酬をもらう。
 高価なマンション都市を購入して、全財産を持って移民してきてもらう。
 決して高い買い物ではない。
 もし破産しても子孫が永遠に衣食住に困ることが無くなるのだから。
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