悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

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第一章

第82話:幸福と寂寥・リアナ視点

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 毎日がとても楽しく充実しています。
 兄上様と一緒に何かを成し遂げることほど楽しい事はありません。
 普段の政務でも幸福感はあります。
 でも普段の政務には家臣達も加わっています。
 兄上様と二人っきりで何かを創り上げているという充実感には及びません。

 今は毎日一定時間兄上様と二人きりになれるのです。
 しかも日々兄上様と都市を創り上げている充実感があります。
 都市を整えるための狩りをしているのも楽しいです。
 殺すのではなく捕獲する方が私の性格には向いているのでしょう。
 毎日がとても充実しています。

「いいかい、リアナ。
 これは誰にも教えてはいけない魔術だよ。
 大魔境の魔力を集めて自分のモノにする魔術だから、他人に知られて悪用されたらこの世界を滅ぼしかねない魔術なんだ。
 だからリアナには教えるけれど、呪いも一緒に仕込んである。
 もしリアナが話したら、話したリアナは大丈夫だけれど、聞いていた者全員が呪いで即死することになるんだ。
 だから自分の子供にも絶対に教えてはいけないよ」

 本当に兄上様は私には甘いです。
 普通ここは話した私も殺すところでしょう。
 それなのに私は死なない呪いだなんて、どれほど私に甘いのでしょうか。
 でもその甘さ、溺愛が私にはとてもうれしい。
 世界の全てを敵に回しても兄上様は私を護ってくださいます。

「はい、兄上様、決して誰にも申しません。
 それが例え兄上様と私の子供であろうとです」

 言ってしまいました。
 ついに私の口から言ってしまいました。
 本当は兄上様からプロポーズして欲しかったのですが。
 いえ、でも今のはプロポーズではありませんよね。
 プロポーズを誘う可愛いお願い程度ですよね。
 やっぱり女なら殿方からプロポーズして欲しいですもの。

「そう、だな。
 確かに私の子供であろうと、リアナの子供であろうと、言ってはいけないな。
 もし子供達にこの魔術を教える必要があるのなら、私が個別に教える。
 だからリアナは何も心配しなくていい」

 なんて臆病なのですか、兄上様。
 私がここまで露骨にお願いしているというのに。
 まだ逃げようとされるのですか。
 私は兄上様と私の子供と申し上げたのです。
 兄上様の子供と私の子供と申し上げたわけではありません。
 そんな事くらい分かっておられるでしょうに。

 でも、少しは覚悟してくださっているのは分かっています。
 徐々に結婚のための準備をしてくださっています。
 ただ最後までそれを避けようとされているのも分かります。
 その事がとても寂しいです。
 とてもとても腹立たしいです。
 こうなったらもっと大陸中の王家が嘆願するように仕向けます。
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