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第一章
第73話:治療と若返り
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最初に始めたのは普通に治癒魔術だ。
はっきり言おう、手加減なしの全力治療だ。
今まで聖女だけが使えると言われていた聖魔術だ。
だが前世の知識がある俺には全然希少性もありがたさもない。
魔力があって想像力があれば治癒は実現可能なのだ。
俺から見ればルナネ嬢が使える聖治癒魔術はレベルが低すぎる。
俺が全力で使えば身体の半分を失っていても治す事ができる。
「まずは手足の欠損や失明者から治療する。
順番に治療室に入れろ。
裕福な者からは相応の治療費を徴収しろ。
貧しい者は移民の手続きをとれ」
「「「「「は」」」」」
最初に事故や事件、あるいは狩りや戦争で障害が残った者の治療を始めた。
遺伝障害のような難しい事をやる前の肩慣らしだ。
貧しい者には無償で治療するが、金のある者からは頂く。
その代わり貧しい者には移民して来てもらう。
家族揃ってリアナと俺の為に働いてもらう。
病気の者も同じだった。
金持ちにはそれ相応の治療費を支払ってもらった。
お金がなくて医者にかかれない者には家族揃って移民してもらう。
ルナネ嬢にも治せなかった重病の王侯貴族も簡単に直してやった。
だが事故事件の障害者と違って重病人を無理に移動させる訳にはいけない。
ゴードン王国に来れるのは近隣国の人間に限られる。
遺伝障害を持つ者とその家族には城で待ってもらう。
少しの魔力で遺伝障害を治せると自分に思い込ませるためには、それなりの自信が必要になってくるからだ。
俺に自信がついて遺伝治療に踏み切る前に、治療の評判が大陸中に広まった。
もうルナネに聖女としての利用価値などほとんどない。
俺より能力の低い治癒魔術の為に、マライーニ王家に借りを作りたいと考える王侯貴族など一家もいない。
俺の力を恐れて、王侯貴族のプライドを捨て、平身低頭しなければいけないのだ。
だったらせめて少しでも言い訳したいのが人間の心理だ。
軍事力に恐れて平身低頭するのではない。
聖なる奇跡の力、聖魔法の使い手である聖者に敬意を表している。
そう自分を騙したいのが人情と言うものだ。
その先鞭をつけてくれたのは大陸で長く王位に就いている某国王だった。
歳を重ねても思慮に衰えはなかったのだろう。
俺に若返りの魔術を試して欲しいとわざわざやって来て頭を下げた。
臣下の礼を取る事なく俺に頭を下げるための方便だ。
別に覇王に成りたい訳ではない。
大陸中の人間の命と生活を預かるような重圧など御免被る。
ただ俺も若返りの魔術は試してみたかった。
しかし無差別に全人間に若返りの魔術を使ったら、この大陸は一気に人口爆発で食糧難になってしまう。
だから王族だけと線引きして、某国王に試してみた。
遺伝的に障害がなかったので、少しの魔力で簡単に若返らせる事ができた。
単に俺に頭を下げる言い訳になればいいと、若返りを願った某国王は、齢七〇から三〇に若返れて狂喜乱舞していた。
結局ベランジェ国王がルナネの聖魔術を使って手に入れようとしていた、大陸での影響力など足元にも及ばない影響力、いや、権力を手に入れる事になった。
はっきり言おう、手加減なしの全力治療だ。
今まで聖女だけが使えると言われていた聖魔術だ。
だが前世の知識がある俺には全然希少性もありがたさもない。
魔力があって想像力があれば治癒は実現可能なのだ。
俺から見ればルナネ嬢が使える聖治癒魔術はレベルが低すぎる。
俺が全力で使えば身体の半分を失っていても治す事ができる。
「まずは手足の欠損や失明者から治療する。
順番に治療室に入れろ。
裕福な者からは相応の治療費を徴収しろ。
貧しい者は移民の手続きをとれ」
「「「「「は」」」」」
最初に事故や事件、あるいは狩りや戦争で障害が残った者の治療を始めた。
遺伝障害のような難しい事をやる前の肩慣らしだ。
貧しい者には無償で治療するが、金のある者からは頂く。
その代わり貧しい者には移民して来てもらう。
家族揃ってリアナと俺の為に働いてもらう。
病気の者も同じだった。
金持ちにはそれ相応の治療費を支払ってもらった。
お金がなくて医者にかかれない者には家族揃って移民してもらう。
ルナネ嬢にも治せなかった重病の王侯貴族も簡単に直してやった。
だが事故事件の障害者と違って重病人を無理に移動させる訳にはいけない。
ゴードン王国に来れるのは近隣国の人間に限られる。
遺伝障害を持つ者とその家族には城で待ってもらう。
少しの魔力で遺伝障害を治せると自分に思い込ませるためには、それなりの自信が必要になってくるからだ。
俺に自信がついて遺伝治療に踏み切る前に、治療の評判が大陸中に広まった。
もうルナネに聖女としての利用価値などほとんどない。
俺より能力の低い治癒魔術の為に、マライーニ王家に借りを作りたいと考える王侯貴族など一家もいない。
俺の力を恐れて、王侯貴族のプライドを捨て、平身低頭しなければいけないのだ。
だったらせめて少しでも言い訳したいのが人間の心理だ。
軍事力に恐れて平身低頭するのではない。
聖なる奇跡の力、聖魔法の使い手である聖者に敬意を表している。
そう自分を騙したいのが人情と言うものだ。
その先鞭をつけてくれたのは大陸で長く王位に就いている某国王だった。
歳を重ねても思慮に衰えはなかったのだろう。
俺に若返りの魔術を試して欲しいとわざわざやって来て頭を下げた。
臣下の礼を取る事なく俺に頭を下げるための方便だ。
別に覇王に成りたい訳ではない。
大陸中の人間の命と生活を預かるような重圧など御免被る。
ただ俺も若返りの魔術は試してみたかった。
しかし無差別に全人間に若返りの魔術を使ったら、この大陸は一気に人口爆発で食糧難になってしまう。
だから王族だけと線引きして、某国王に試してみた。
遺伝的に障害がなかったので、少しの魔力で簡単に若返らせる事ができた。
単に俺に頭を下げる言い訳になればいいと、若返りを願った某国王は、齢七〇から三〇に若返れて狂喜乱舞していた。
結局ベランジェ国王がルナネの聖魔術を使って手に入れようとしていた、大陸での影響力など足元にも及ばない影響力、いや、権力を手に入れる事になった。
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