上 下
72 / 89
第一章

第72話:想いと魔力

しおりを挟む
 俺は決断した。
 リアナと結婚するかどうかはまだ決められない。
 避けられるなら避けたいというのが本音だ。
 だがリアナの心を壊すくらいなら自分の倫理観を超える覚悟はした。
 だから遺伝子障害に対する治療ができるか試すことにした。

「これから先天的な障害を持つ者の治療を行う。
 無事に成人している者は少ないだろうが、できるだけ探してくれ。
 これから子供を産む国民には、どのような障害があろうと殺すなと命じろ。
 これは勅命である。
 どのような障害があろうと、余が治療する。
 どうしても治療できない者は、余が保護する、いいな」

「「「「「は」」」」」

「私も同じ勅命を下します。
 私には治療する事はできません。
 ですが保護する事はできます。
 兄上様が治療できない場合は、私が保護すると約束します」

 リアナも凄くやる気になってくれている。
 障害者を保護して育てること自体は難しくない。
 魔力を使って穀物の促成栽培ができるから、食糧は幾らでもある。
 弱肉強食が基本のこの世界でも、俺とリアナには弱者保護が可能だ。

 問題は遺伝子にまで問題がある障害者の治療だ。
 ケガや病気を治す治癒魔術だが、遺伝子通りに再生する魔術だと思うのだ。
 そうれなければ治癒した場所が元の自分の身体と違う再生をすることになる。
 だから普通の治癒魔術を使っても先天障害は治す事ができない。

 だが全く勝算がないわけではない。
 この世界は想いの強さと魔力で何でもできるのだ。
 俺の魔力をもってすれば遺伝子の書き換えや修復も可能だと思うのだ。
 問題があるとすれば俺に遺伝子の知識がない事だ。
 遺伝子のゲノムを詳しく理解していれば、ピンポイントで遺伝子を書き換えて、元の身体にあった障害解消が可能だろう。

 だがそんな知識ない以上、大量の魔力を使って遠隔書き換えするしかない。
 障害を修正して機能的に動く遺伝子に変換しろと想い念じるしかない。
 それには大量な魔力が必要だと思ってしまうと、本当に魔力が必要になってしまい、とても効率が悪くなってしまう。

 少しの魔力で遺伝子書き換えができると思い込まなければいけない。
 普通の治癒魔術と同じ程度の魔力で治せると思い込まなければいけない。
 一度魔術として成立してしまったら、ずっと莫大な魔力が必要になってしまう。
 いや、これも思い込みが原因かもしれない。

 駆け出しの魔術士だと魔術の発動に魔力が沢山必要で、熟練の魔術士なら少ない魔力で魔術が発動できるように、魔力の使い方に上手下手があると思えばそうなる。
 そう思い込めばいいのかもしれない。
 とにかく最初に遺伝子治療の魔術を発動するまでに、どう思い込むのか慎重に考えなければいけない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

【完結】冷酷な悪役令嬢の婚約破棄は終わらない

アイアイ
恋愛
華やかな舞踏会の喧騒が響く宮殿の大広間。その一角で、美しいドレスに身を包んだ少女が、冷ややかな笑みを浮かべていた。名はアリシア・ルミエール。彼女はこの国の公爵家の令嬢であり、社交界でも一際目立つ存在だった。 「また貴方ですか、アリシア様」 彼女の前に現れたのは、今宵の主役である王子、レオンハルト・アルベール。彼の瞳には、警戒の色が浮かんでいた。 「何かご用でしょうか?」 アリシアは優雅に頭を下げながらも、心の中で嘲笑っていた。自分が悪役令嬢としてこの場にいる理由は、まさにここから始まるのだ。 「レオンハルト王子、今夜は私とのダンスをお断りになるつもりですか?」

転生した悪役令嬢はシナリオ通りに王子に婚約破棄されることを望む

双葉葵
恋愛
悪役令嬢メリッサ・ローランドは、卒業式のパーティで断罪され追放されることを望んでいる。 幼い頃から見てきた王子が此方を見てくれないということは“運命”であり決して変えられない“シナリオ”通りである。 定刻を過ぎても予定通り迎えに来ない王子に一人でパーティに参加して、訪れる断罪の時を待っていたけれど。険しい顔をして現れた婚約者の様子が何やら変で困惑する。【こんなの“シナリオ”になかったわ】 【隣にいるはずの“ローズ”(ヒロイン)はどこなの?】 *以前、『小説家になろう』であげていたものの再掲になります。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは小説の世界だ。 乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私は所謂モブ。 この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。 そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

処理中です...