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第一章

第69話:尻馬・リアナ視点。

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 よくぞ言ってくれました、クレマン。
 心から褒めてあげます、クレマン。
 貴男の家を世襲宰相にしてあげたいくらいですが、そんな事をしたら兄上様に本気で愛想を尽かされるかもしれませんので、心の中だけで地位を与えます。
 その代わり兄上様に叱られないようにしてあげます。

「よく言ってくれました、クレマン、貴方の言う通りです。
 野心ある国と縁を結んでしまったら、大陸の勢力図が変わってしまいます。
 兄上様にそのような野望がないことは私が誰より知っています。
 マライーニ王国から離脱されたのは私のためでしたよね。
 イニス王家を滅ぼしてロスリン王国を建国したのも私のためでした。
 ゴードン王国を建国されたのも私のためです。
 ここまで私の事を愛してくださっているのに、どうして他の男と結婚させようとされるのですか、兄上様。
 それはクレマンをはじめとした家臣達も疑問に思っている事です。
 ロスリン王国とゴードン王国を建国されたことで、長年一緒に仕えてきたラゼル公爵家の同輩が、形だけとは言えバラバラになってしまっています。
 代が変われば主の命で争う事になるかもしれないのです。
 兄上様と私が結婚すれば、王国が統合されて全て丸く収まるのです。
 どうして私と結婚してくださらないのですか、兄上様」

 ついに口に出して言ってしまいました。
 家臣達がいる前で言ってしまいました。
 兄上様がどんな返事をされるかとても怖いです。
 ですがもう後戻りはできません。
 兄上様の返事次第で心が壊れてしまうかもしれません。
 その時は女王から退位して修道女になります。

 兄上様を助けるために必要だというのなら、どのような男でも我慢して結婚してみせますが、兄上様に私の助けなど不要です。
 兄上様に必要なのは、力の助けではなく心の癒しです。
 高慢な王侯貴族の令嬢などに兄上様の妻は務まりません。
 ずっと兄上様の側で育ち、教え導いて頂いた私しか務まりません。
 それなのに私に無理矢理婿を取らせようなんて、私の事が嫌いになってしまわれたのでしょうか。

 いえ、そんな事はありません、単に近親婚を嫌われただけです。
 何故そんなに近親婚を嫌われるのでしょうか。
 同父同母の兄妹婚は許されませんが、私達のような異父兄妹の結婚は許されます。
 教団嫌いの兄上様が教団の教えに従われているとも思えません。
 私の知らない特別な理由があるのでしょうか。

 もし特別な理由があるのなら、それを無視して無理を通そうとしている私は、兄上様が一番嫌う身勝手な女になってしまいます。
 そんな身勝手な女は兄上様に嫌われてしまします。
 兄上様に嫌われるくらいなら死んだほうがましです。
 死にたくなるくらい、とても哀しくなってしまいました。
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