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第一章

第61話:政務の時間

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 リアナ女王の思惑など直ぐに分かった。
 俺が才ある平民を指導できないように時間を使わす心算だ。
 確かにリアナ女王に時間を使ったら、指導時間は減るだろう。
 だが可愛い妹が側にいたいと言っているのだ、拒否する事など絶対にない。
 俺は最初からずっと、リアナ女王を素晴らしい女性に育てることが一番なのだ。

 だからおねだりされてからはずっと一緒にいた。
 当然だが、お風呂やトイレ、寝る時は別々だ。
 それ以外の政務の時間と食事の時間が一緒だという事だ。
 政務の時間と言っても、基本今までと変わりない。
 大魔境に接している開拓地に行って、莫大な魔力を使って食糧を促成栽培する事。
 同じく莫大な魔力を使って宝石を創り出す事。

 俺は自分に万が一の事があった時の事を考えて、リアナ女王にも同じことができるように直接指導した。
 リアナ女王が戴冠する時に与えた魔法宝具には、それを可能にする魔法陣を刻み込んであるし、発動に必要な魔力を蓄える魔宝石を埋め込んである。
 普通ならリアナ女王が日々霧散させてしまう魔力を、特別な魔法陣を使って魔法宝具に蓄えられるようにしてある。

「国王陛下、女王陛下、軍学校に志願した者の試験が終わりました」

「分かった、謁見するから全員を連れてこい」
「私も構いませんよ、直ぐに連れて来てください」

 魔力を使って食糧と財宝を創り出して備蓄したあとは政務だ。
 ラゼル公爵家時代から仕えてくれている家臣と、イニス王国をリアナ女王が継承した時に臣従した者から報告を受ける。
 その報告に嘘偽りがないかは、魔術で心を読むことと、密かに放っている使い魔からの報告で分かる。

 ラゼル公爵家時代から仕えている家臣の中にも、わずかだが不正に走る者がいた。
 イニス王家に仕えていた者達からは、嫌になるくらい多くの不正者が見つかった。
 見せしめという意味では全員殺してしまうのが一番なのだが、それでは労働力が無駄になるので、犯罪奴隷にして重労働刑とした。
 今まで虐げていた民に石を投げらながら、死ぬまで重労働を続けるという、身体と心を苦しめる刑罰だ。

 だから報告に来るそれなりの地位にいる家臣は常に緊張している。
 自分達が不正を行っていなくても、一族や部下が不正をしていて、それを見抜けずに改竄された報告してしまったら、厳罰は受けなくても降格されるからだ。
 信賞必罰を基本方針にしているから、能力があって心掛けのいい者はどんどん地位が上がり、今ではイニス王家時代とは全く違う官僚団になっている。
 市井に埋もれていた賢者や仁徳の士が表に出てきた。

 リアナ女王にやってもらう事は、使い魔が集めてきた情報と違う事を指摘する事。
 俺がやるのは、彼らの心を読んで嘘を指摘する事。
 これで大概の不正は摘発することができる。
 いずれはリアナ女王にも心を読んでもらわなければいけないのだが、どす黒く汚い人間の心をリアナ女王を読ませることが正しいのかどうか、判断に悩む。
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