上 下
48 / 89
第一章

第48話:食糧配給

しおりを挟む
 配給する食糧は、魔力をたっぷり含んだ魔境の腐葉土や土を畑に撒いて肥料とし、その魔力と自分の魔力を活用して穀物を促成栽培させて作り出した。
 率直に言って、今の俺の魔力量は非常識極まりない莫大な量だ。
 前世のラノベとアニメのアイデアと知識を活用して、更に仕事にしていた東洋医学の知識と西洋医学の常識を生かして、とんでもない事が可能になっている。
 それを自制心なしで利用しているのだから、神様がいるのなら天罰が下るレベルで魔力を利用している。

 いや、全く自制していない訳ではなく、市場に流す食糧量は制限している。
 俺が領地に集めた難民や開拓民に作らせた穀物を無制限に市場に出したら、穀物相場が暴落してしまうからだ。
 そんなことになったら、穀物を売って金銭に変えている領主階級はもちろん、食べる分以外の食糧を売って現金を得ている農民も困る。
 今まで手に入れていたモノが税分で買えなくなった領主が、農民に対して税額を上げたり臨時税を課したりしかねない。

 だから穀物相場が例年より極端に高くも安くもならないように、注意深く市場に流しているのだが、旧イニス王国の王都は別だ。
 俺の放ったバロンに封鎖されてしまっていたので、その間の物価高騰で多くの民があるだけの財産を食糧に変えてしまっている。
 その食糧も尽きかけていたから、食糧を配るのが何よりの慰撫になる。
 まあ、マッチポンプの極悪非道な行いだと自分でも十分理解している。

「兄上様、まだ王都に行く事はできないのですか。
 兄上様は私の事になると暴走されるので、今の王都の民の現状を直接見なければ、全然安心できません」

 俺が何度大丈夫だと言っても、リアナは全く信用してくれない。
 今まで自分がやって来たことを考えれば「俺の事が信用できないのか」などとは口が裂けても言えない。
 全く何も文句が言えない事は自分自身が誰よりも分かっている。
 分かってはいるが、少々哀しくなってしまうのだ。

「俺の言う事は信じられないだろうが、大丈夫だ、信じてくれ。
 今までだって王都の民が死なないように十分加減していたのだ。
 イニス王国は最初から占領支配する心算だったから、いずれリアナの民になる者達を殺す心算など全くなかったからね。
 少々生活に困る事はあったが、死んでしまった者はほとんどいない。
 その死んだ者も王侯貴族が起こした戦いで殺された者達だ」

「ですがそれは兄上様がやった事が原因ではありませんか。
 兄上様が王都を封鎖しなければ、戦いなど起こらず、死ぬ事もなかったのではありませんか、兄上様」

 リアナにそう責められるとグウの音も出なかった。
 確かに全ての始まりは俺のせいかもしれない。
 いや、全ての元凶はデイビットとイニス王家だ、俺のせいじゃない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

失恋模様

霧雨 紫貴
恋愛
今まで内気だった男の子がとあるキッカケで自分を変える物語。 感想受け付けてます! コメントは1ヶ月以内には返信できると思います。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
私は気がついてしまった……。ここがとある乙女ゲームの世界に似ていて、私がヒロインとライバル的な立場の侯爵令嬢だったことに。その上、ヒロインと取り違えられていたことが判明し、最終的には侯爵家を放逐されて元の家に戻される。但し、ヒロインの家は商業ギルドの元締めで新興であるけど大富豪なので、とりあえず私としては目指せ、放逐エンド! ……貴族より成金うはうはエンドだもんね。 (他サイトにも掲載しております。表示素材は忠藤いずる:三日月アルペジオ様より)  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!

ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。 気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

処理中です...