悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

文字の大きさ
上 下
47 / 89
第一章

第47話:幻覚

しおりを挟む
 よくよく考えれば、何も本当にリアナを王都に連れてこなくてもいいのだ。
 幻覚魔術で人型の使い魔をリアナだと思い込ませればいいのだ。
 そうと分かれば直ぐに王都で食糧配給を行うべきだった。
 だが単に配って恩を売るだけでは能がないとも思った。
 だから、新たな王国に、いや、リアナに従う事を教え込む事にした。

 リアナの身代わりはズメイ人にやらせた。
 食糧配給の場所に玉座を設け、王都の民はそこで幻覚魔術でリアナに見えるズメイ人に願い出て、食糧配給を受ける仕組みにした。
 その場にいる王都の民全員が、心からリアナに願い出なければ、食糧配給を受けられない仕組みにした。
 心に反感を持つ者は、ドラゴンと寸分違わない使い魔ズメイに名指しで指摘され、改心するまでは誰も食糧配給を受けられないのだ。

 他の民から憎しみの目で見られてしまったら、反感を捨てるか、配給の場から出て行く以外の方法はない。
 だが反感を捨てる事などなかなかできる事ではない。
 だから配給の場から出て行くしかないのだが、それでは自分だけでなく家族までが飢えに苦しむことになる。
 そこで強制的に王都から叩き出した。

 人間とはとても醜い生き物だから、自分が正しいと信じ、いや、正しいと信じたふりをして、その正しさを盾に人の大切なモノや命を平気で奪う。
 自分が反感を持っているリアナに媚を売って得た人間の食糧を、暴力を持って奪う事は正しいと信じたふりを平気でする。
 その為に命を奪う事すら平然と行える人間がいるのだ。

 品性下劣な人間の中には、家族に働かせたり身体を売らせたりして、間接的に食糧を手に入れる人間がいる。
 そこまで行かなくても、自分は反感を捨てないまま、家族に食糧の配給を受けさせ、平気でその食糧を喰う無神経さがある。
 そんな事をさせないために、反感を捨てないまま食糧配給所を出て行く民は、そのまま王都から追放してやった。

 一方反感を捨てて食糧配給を受ける人間には、そのまま直ぐに王都での労働奉仕をやらせて、リアナに従うのが当然だという習慣を身に着けさせるようにした。
 特別難しい事をやらせたわけではなく、単なる掃除だ。
 窓から捨てられる人間の糞尿を回収させて、王都の外に改めて捨てさせる。
 それが嫌なら、道に糞尿を捨てずに王都の外に捨てに行くだろう。
 それは無理でも、決まった場所に捨てるようになるだろう。

 だから王都の各所に糞尿を捨てるための大穴を作った。
 その大穴に糞尿を食べるスライムを放って、臭いが王都に漂わないようにした。
 今までは風向き次第で宮城にまで糞尿の臭いが漂っていただろう。
 それとも何か特別な魔術で防いでいたのだろうか。
 いや、マライーニ王国の宮城でもトイレなどなく庭で排泄していたのだ。
 臭いは気にしていなかったもしれないな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。

キーノ
恋愛
 わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。  ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。  だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。  こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。 ※さくっと読める悪役令嬢モノです。 2月14~15日に全話、投稿完了。 感想、誤字、脱字など受け付けます。  沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です! 恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】己の行動を振り返った悪役令嬢、猛省したのでやり直します!

みなと
恋愛
「思い出した…」 稀代の悪女と呼ばれた公爵家令嬢。 だが、彼女は思い出してしまった。前世の己の行いの数々を。 そして、殺されてしまったことも。 「そうはなりたくないわね。まずは王太子殿下との婚約解消からいたしましょうか」 冷静に前世を思い返して、己の悪行に頭を抱えてしまうナディスであったが、とりあえず出来ることから一つずつ前世と行動を変えようと決意。 その結果はいかに?! ※小説家になろうでも公開中

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

処理中です...