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第一章

第43話:決断・リアナ視点

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 キャメロン兄上様はとても私を愛し大切にしてくださいます。
 その事にはとても感謝していますし、両親とも血が繋がっている事を嘆き哀しむほど、キャメロン兄上様を愛しています。
 普段ならキャメロン兄上様が何をなされようと反対などしません。

 ですが流石に今回の事はやり過ぎだと思ってしまいます。
 今のイニス王国の状況は、生き地獄としか表現できないほどのありさまです。
 兄上様を止める方法がないのか、長年ラゼル公爵家に仕えているクレマンに訊ねてみたのですが、答えは私の望むモノではありませんでした。

「リアナ閣下、閣下が本気でキャメロン閣下をお止めしたいのでしたら、閣下自らが動かれないと不可能でございます。
 今回の件は、リアナ閣下にの安全にかかわる事でございます。
 我らごときの言葉で翻意されるキャメロン閣下ではありません。
 キャメロン閣下がリアナ閣下の安全に関する事で、わずかな妥協も些細な見落としもされない事は、リアナ閣下が誰よりも分かっておられるはずです。
 どうしてもキャメロン閣下の御考えを変えたいのならば、リアナ閣下が諫言される以外に方法はありません」

 確かにクレマンの言う通りなのは分かっています。
 ですが、兄上様が私のためにやってくださっている事を、私自身が水を差すような事はしたくなかったのです。
 ですがこれはとても卑怯な考えだという事も分かっています。

 私以外の者が、私の安全を脅かすような事を口にすれば、命の保証はありません。
 そんな危険な真似を家臣にやらせるるなど、卑怯以外の何物でもありません。
 兄上様にノブレス・オブリージュの教えを受けた私がそんな事をすれば、兄上様の名声に傷がついてしまいます。

 念のためにダーシィなどの他の家臣にも聞いてみましたが、答えはクレマンと同じで、私がやらなければ兄上様は翻意されないという事でした。
 ただダーシィの意見だけは他の者達よりも一歩踏み込んでいました。
 私もそこまで決意しなければ兄上様は翻意してくださらないと思っていました。

 それと、常に私の事を考えていてくださる兄上様が、私がそう口にするように誘導しえ下さっているような気もしたのです。
 だからこそ、兄上様の思惑に乗る覚悟を定めました。
 兄上様の望み通りの聖女になると、覚悟を決めたのです。
 だから、兄上様に諫言するのを、各国の大使と王侯貴族が集まる舞踏会の場にしたのです

「ゴードン侯爵、イニス王国をどうするおつもりなのですか。
 まさかとは思いますが、このまま戦乱を放置して民を苦しめる気だはないでしょうね、そのような事は絶対に許されませんよ。
 返答次第では私も本気で怒りますよ、覚悟を決めて返答してください」
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